2CELLOS、「チェロって最高の楽器だよ(笑)」

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チェロでマイケル・ジャクソンやガンズ・アンド・ローゼズをカヴァー、その意外性とエネルギッシュな演奏により瞬く間に世界中で話題となった2CELLOS。7月にリリースされた輸入盤はすでに3万枚以上の大ヒット。そしていよいよ今週、その日本盤が発売される。

◆2CELLOSメッセージ映像

現在、エルトン・ジョンと全米ツアー中、その後、来日を控えているルカ・スーリックにアルバムを解説してもらった。

──1月にビデオ(マイケル・ジャクソン「Smooth Criminal」のカヴァー)をYouTubeにアップして以来、人生が大きく変わったと思いますが。

ルカ・スーリック:すごく変わったよ。クラシックのミュージシャンだったのが、いまじゃロック・スターだ(笑)。大きな会場でプレイするようになったし、年中、旅してる。エルトン・ジョンやジョージ・マイケルのようなアーティストとコラボして…、ロックンロール・ビジネスだよね(笑)。

──そういう生活をずっと夢見ていたのでしょうか?

ルカ:そうだね。クラシックの世界にいるとある特定のオーディエンスの前でしかプレイできないけど、僕らはいつも、チェロでもっと若いオーディエンスを惹きつけたいって思っていた。僕らの中にはロックのソウルがあって、それを表に出すことができたよ。クラシックではチェロには1つの側面しかないけど、アレンジしたり、新しいテクニックを発見することで、チェロのパフォーマンスの可能性を広げられた。もちろん、クラシックはこれからも演奏し続ける。いい音楽をミックスして、みんなと分かち合いたいんだ。

──あなた達のプレイの仕方は、クラシック界ではタブーだったりするんじゃないでしょうか?

ルカ:そう、クラシック界にはルールがあって、そのルールに従わないプレイをすると批判される。自由がないんだ。でも僕らはいま、それにとらわれずにいろんなことがやれて気分がいいよ。批判する人もいる。でも、本物のミュージシャンだったら僕らがやっていることのレベルが高いのはわかるはずだ。なにやったって、批判する人はいるんだよ。なにを言われようが気にしてない。

──ステファンとはどうやって出会ったのですか?

ルカ:10年前、クロアチアのサマー・スクールで出会った。その前から名前は知っていたけど、初めて会ったのはそこのマスター・コースだった。すぐに気が合ったよ。2人ともチェロと音楽が大好きだったから。でもその後、ステファンはロンドン、僕はウィーンで勉強するようになったから、しばらく会ってなかった。それが去年(2010年)の9月にロンドンで再会して、なにか一緒にやろうってことになったんだ。好き勝手なことしようって(笑)。

──2人の間にライバル意識みたいなものはなかったんですか?

ルカ:クロアチアではよくそう見られていたよ。もちろん、そういうのがなかったわけじゃない。これからだってあると思う。でも、それが僕ら2人を成長させるんだ。僕らの間のライバル意識はすごく健全なものだよ。

──「Smooth Criminal」をカヴァーすることにした理由は?

ルカ:僕ら2人ともあの曲が大好きで、いいスタートになると思ったんだ。エネルギーがあって、アレンジを加えてチェロでプレイするのはもってこいだと思った。そして、本当にいいスタートになったよ(笑)。

──アルバムにはもう1曲、マイケル・ジャクソンの曲がありますね。

ルカ:そう、「Human Nature」。これはピチカートっていうチェロの奏法で弾いている。ステファンが大好きなテクニックの1つだ。すごくきれいな曲で、僕らはピチカートでエモーションを表現しようとしたんだ。

──そしてスティングのトラックも2曲(「Fragile」「Fields Of Gold」)。

ルカ:スティングの曲のなかで最も美しくロマンチックで、チェロでプレイするには最適だと思った。スティングの声には暖かく、特別な色がある。チェロっていうのは、最も人間の声に近い音を出す楽器だからね。パーフェクトだった。

──「Welcome To The Jungle」は?

ルカ:ロックのアンセムだから、アレンジするのに苦労した。2つのチェロでバンドのサウンドを作るのはチャレンジだったよ。でも、うまく行ったと思う。2ndシングルになったくらいだから(笑)。

──アレンジはどうやって決めるのですか?

ルカ:全部、僕ら2人で決める。弾いてみて、アイディアを出していくんだ。なにか書き留めておくわけじゃない。アレンジのプロセスは即興みたいなもんだよ。それからどっちがどう弾くか決めていく。それだけだ。

──そのほか、ミューズ、キングス・オブ・レオン、コールドプレイの曲もありますね。

ルカ:80’Sの曲ばかりにしたくなかったんだ。ミューズやキングス・オブ・レオンはすごくいいバンドだし、コールドプレイの「Viva La Vida」はオリジナルでストリングのパートがたくさんあったから自然だった。メロディーもチェロのために作られたようなものだった。だからパーフェクトだったよ。

──そしてニルヴァーナの「Smells Like Teen Sprit」。

ルカ:これもロック・アンセムの1つだね。多分、3rdシングルになると思う。これプレイするの、大好きなんだ。なんていうか…、ロック界のベートーベンみたいだ。

──この曲はあなた達のギグのハイライトだと思います。2本のチェロだけで、あのエネルギッシュで混沌とした世界感が表現できていて驚きました。

ルカ:この曲は興味深いんだよ。2つのパートでできてて、1つはすごくエネルギッシュでクレイジーで暴力的で、もう1つはもの悲しい雰囲気をかもしてる。チェロでプレイするにはピッタリなんだ。チェロって最高の楽器だよ(笑)。

──アルバムも素晴らしいですが、ライヴはもっといいですよね。<iTunes Festival>ではドラムもジョインしていましたが。

ルカ:いつもってわけじゃないんだけど…、AC/DCはドラムなしでプレイできないでしょ(笑)。ドラムが入ることで、もっとエネルギッシュになれる。

──AC/DCは大好きなバンドだって聞いていますが、このアルバムではカヴァーしていませんね。

ルカ:だって2ndのためになんかとっておかないと(笑)。1stはチェロだけでプレイしたかったんだ。チェロの可能性をみんなに知ってもらいたかった。この先、幅を広げていきたいって思っている。チェロだけでなく、ほかの楽器も加えたい。

──次はどんな曲をカヴァーしたいと考えていますか?

ルカ:次の作品はもっとロック・アルバムにしたい。AC/DC、クィーン、エアロスミスなんかをカヴァーしたいと思っている。

──では、次はバンド形式になる?

ルカ:そうはしたくないんだ。ある曲ではピアノが入り、ある曲ではドラムが入るというような、シンプルなものになると思う。あくまでも主役はチェロ。たくさんの楽器や、オーケストラ、吹奏バンドなんかが入ってしまったら、なにかを失うことになる。それにロックンロールじゃなくなっちゃうし(笑)。

──いま、エルトン・ジョンとコンサート中ですよね?

ルカ:そう、オープニングだけでなく、エルトンのパフォーマンスにもジョインしている。すごくいいんだ。(オープニングで)僕らが登場すると、演奏する前から総立ちの拍手喝采なんだよ。エルトンのバンドの人に言われたよ。エルトンの40年の歴史でこんなオープニング・アクトは初めてだって。

──アルバムにエルトンの曲は収録されていませんが、彼からなにか言われませんでしたか?

ルカ:とくに(笑)。彼はわかってくれてるよ(笑)。エルトンの曲はピアノが多くて、難しいんだ。でも2ndで、ピアノと一緒にやりたいと思っている。

──10月下旬に来日が決定しましたね。日本でしたいことは?

ルカ:ショウケースを開いて、たくさんの人に僕らの音楽を聴いてもらいたい。アルバムとライヴで聴くのは違うから。できるだけ多くの人にライヴで聴いてもらいたいな。それに、魚市場(築地)に行きたい。それが僕の夢なんだ(笑)。

──来日を楽しみにしている日本のファンにメッセージをいただけますか?

ルカ:待っててね(笑)。僕ら、すごく楽しみにしてるんだ。そして、サポートしてくれて本当にありがとう。輸入盤の売れ行きが好調だって聞いた。それだけでも嬉しいのに、日本盤も出るなんてすごくエキサイティングだ。みんな、本当にありがとう!

──今後、日本の曲をカヴァーするなんてチャンスはありますか?

ルカ:あるよ。来日したとき、いろいろ教えて欲しい。是非、日本の曲もプレイしたいと思っているんだ。

デビュー・アルバム『2CELLOS』は9月21日リリース。スティングの「フィールズ・オブ・ゴールド」がボーナストラックとして収録されるほか、初回限定で付属するDVDでは、スペシャル・パフォーマンスや2CELLOS結成秘話初公開インタビュー含む貴重な映像が見られる。

Ako Suzuki, London



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