――なんとシングルは10年ぶりなんですね！

INORAN：そうなんですよね。自分は曲単体で作る人ではないので、一曲作るとその前後左右まで膨らんでしまうんですよね。だからアルバム10曲とか、数曲で世界観が始まって終わるというほうが表現しやすいから、気付いたらシングルという形ではリリースのないまま10年経っていたという感じです。今回もアルバムを作る予定だったんだけど、できたものを早くみんなに届けるにはこういう形態のほうが早いから。きっと、アルバムを作っているなら、まだ作ってるだろうから（笑）。早く、みんなに聴いてほしかった。

――「Hide and Seek」はFEEDERのTAKA HIROSEさんとの共作ですが、どういう流れで今作を作ることになったんですか？

INORAN：5～6年前からの知り合いなんですけど、ライヴを観に行ったり、会って呑んだりしていたんですよ。で、今回＜FUJI ROCK＞に出るから、“INORANも出ない？”って誘われたんですね。その後、時間もあるしセッションしてみようか、曲作ってみようかって感じでやったらできちゃった……という。

――ものすごい自然な流れだったんですね。

INORAN：ホントそうですね。TAKAのことはミュージシャンとしても凄くリスペクトしているし、FEEDERも好きだし、人としても好きだし、そう思ったら一緒に音を出したいというのは自然な流れですよね。

――＜FUJI ROCK＞の頃ということは、できたのは本当に最近の話ですよね。

INORAN：このシングルに収録されている曲は全部ですけど、二ヶ月以内の話ですね。

――どんな風にセッションを進めたんですか？

INORAN：音を出して、こんな音どう？　こんなリフどう？　って、そんな感じで、その場で決めて行くような。パーツは2人でもともと持っていたものがあったと思うけど、そういうのを出していって、ハメ込んだり変えていきながら。エロい感じにしようかと言いながら（笑）。本当にジャムセッションでしたね。

――音にもそういうその場で直感的に出て来る雰囲気だったり、衝動だとか、パッションが現れていますね。前作の「Teardrop」も衝動的なサウンドが中心になっていましたが、今は、そういうスタイルがINORANさんにはフィットしているんですね。

INORAN：そうですね。「Teardrop」を作ったときに、ジャンルとかじゃなくて、勢いで作ったような感覚があったんですね。そうやって作ったものっていうのは理屈じゃないから、体がノれるんですよ。それって凄くいいなぁと思って。できたあともそうだから、ツアーもそんな感じでできたし。そういう音楽が、今は自分の体が動いたり、みんなも体でノれるものに近いのかなぁと思っていた時に、TAKAとこういう曲を作れたっていうのは、繋がっているというか、必然かなぁという風に思います。

――しかも、TAKAさんが加わることで、INORANさんのサウンドの中に新たな色も加わってますしね。歌詞が英語ですよね。英語のネイティヴの人はまた違う感覚なのかもしれませんが、私のように英語が完璧に理解できない人にとっては、そこも感情の部分のみクローズアップされるので、本当に直感で感じられる曲だなぁと思いました。

INORAN：うん。言葉が邪魔しないというのはありますよね。感情だけがのっかる感じ。

――今回は3タイプのリリースで、それぞれカップリングに収録される曲が違うんですね。「One Big Blue」「Santa Ana Afternoons」は〈Hide and Seek」の流れを感じる衝動的なナンバーですね。

INORAN：うん。作った時期が一緒ですから感情の流れも同じなんですよね。「One Big Blue」は「Teardrop」を作ってツアーを回って、その後、勢いで。ライヴでやりたい曲……ってできた曲だし、「Santa Ana Afternoons」は「Teardrop」のツアーでやったカバー曲。ライヴでやった感触も良かったし、今、音にしたらイケるかなぁということで。

――Limited Edition Bに収録されている「Joshua」は打って変わってゆったりと美しい曲ですね。

INORAN：これは2010年、LUNA SEAのツアーでロスに行ったときに、ライヴの翌日に「Teardrop」のビジュアルの撮影でJoshua Treeに行ったんです。撮影が終わって帰るときの星がすごく綺麗で、そのイメージがずっと残っていて。そんなことも含めて、Joshua Treeに行った記憶を曲にできたらいいなぁと。

――Limited Edition Bにはライヴテイクも収録されていますね。

INORAN：そうなんです。3曲。Limited Edition AにはDVDがついてて、「Hide and Seek」のミュージックビデオが通常とデイレクターズカットで2パターン入ってるんですけど、全然違うんですよ。これも楽しんでもらえると思います。

――今作ではギターは何を使ってるんですか？

INORAN：「Joshua」はマーチンですけど、それ以外はJazz Masterですね。

――やっぱり。こういう暴れん坊な曲には似合いますものね。

INORAN：そうね。「Teardrop」作ったときもそうだったけど、経験した想い出とか、ライヴでもらったものが種になって曲はできるんですが、Jazz Masterを手に入れたことも、こういう衝動的な曲が生まれることに、すごく関係していると思いますね。ギターに呼ばれて曲ができるというのがあります。新しい気に入ったギターを手に入れると曲ができることってよくあるんですよ。

――まるで人との出会いみたいですね。

INORAN：うん、そうですね。

――で、今年も9月29日にはバースデーライヴがあって、その後には全国ツアーが控えていますね。

INORAN：バースデーライヴは、せっかくそういう日にみんなと会えるのが幸せなことなので、また色々考えたいですね。二部構成か三部構成でぜんぜん違うことをやりたいなって考えています。きっとみんな驚くと思うし。俺にとってもみんなにとっても斬新なものになると思います。

――自分の誕生日にサプライズを仕掛けるんですね（笑）。もてなされている感じがします。

INORAN：（笑）。サプライズを仕掛けるっていうか、みんなに楽しんでもらいたいから。みんなにもらうから、俺もあげたいしね。

――全国ツアーは久々に結構長いツアーですが。

INORAN：うん。「Teardrop」のときに行けなかった場所にも行けますし、みんなに「Hide and Seek」を届けようっていうツアーです。まだちょっと先のことだから、また新曲もできたらいいなぁと思います。

――他にもこの秋は盛りだくさんですね。

INORAN：そうそう。10月22日にはLUNA SEAのライヴもあるしね（さいたまスーパーアリーナで行われる東日本大震災復興支援チャリティー・ライヴ）。

――9月28日から10月23日まで、渋谷パルコでの期間限定のセレクトショップ“Hide and Seek”もオープンしますね。ミュージシャンとしてのINORANさんの姿もあるけれど、ファッションの分野に携わるINORANさんのマインドはどんなところにあるんですか？

INORAN：洋服を作りたいとか、ブランドをやりたいというよりも、友達に洋服のブランドをやっている人が多いんですけど、すごく素敵な人が多いんです。そういう人たちと話していると、モノ作りというのは音楽を作っているのと一緒で話が合うというか、勉強にもなるんです。そうすると、その人の作っている服も好きになって。ファッションと音楽っていうのは切っても切れないじゃないですか。そういうところでやっぱり似ているし、刺激し合うんだなって思うんです。デザイナーにもよるけど、テーマがあったり、背景があったり、設定して、それを妥協せず作ったりしてるからね。もちろん、社会にメッセージを持ってる人もいるだろうし。それを洋服に落とすって、音楽を鳴らすよりも難しいよなぁって思ったり、逆に尊敬するんだよね。服に書くんじゃなく、デザインに書くって凄いことじゃない？

――そうですよね。音楽には歌詞を乗せられますけど、洋服はそうじゃないですから。

INORAN：そうそう。言葉だったり強弱だったりね。ここに関わってくれた人、みんな服が好きなんですよね。そういうところも含め、逆に俺も“音楽がものすごい好きなんです！”ってところで負けないようにしなきゃならないって思ったりもするんです。そういう人たちとここ何年もお付き合いさせてもらって、だったらみんなで面白いことをやろうよっていうことで、みんなで作ったセレクトショップなんです。全部ドメスティックブランドなんだけど、こんなにコラボしてる人は多分いないと思うんですよ。だから画期的といえば画期的。それも、“楽しいね！”っていうノリでやれている。やるまでには準備もすごく大変なんだけどね（笑）。でも、これも、「Hide and Seek」とかライヴと一緒で、みんなで楽しめればいいなって。作っている人はもちろん、購入してくれる人もね。

――素敵なコラボですね。音楽からファッションから、色んな方向から楽しんで表現していて、充実ぶりが伝わってきます。

INORAN：それはもう、周りの人に本当に感謝ですね。自分ができること、音楽でできることを精一杯やって、幸せな気持ちになりたいっていうか、幸せな気持ちにしたいと思いますね。それはジャンルとかじゃなくね！

⇒INRN SELECT SHOP “Hide and Seek”