城南海インタビュー、「兆し」がみんなの心にしみ込んでくれたらいいなぁ

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2010年放映されていたNHKドラマ『八日目の蝉』の主題歌「童神~私の宝物~」や、ACジャパン「国境なき医師団」支援キャンペーンCMソング「ずっとずっと」等で、城南海の歌声を知らずに聴いていた人も多いだろう。そんな彼女が9月7日に、一年半ぶりにシングル「兆し」をリリースした。一青窈作詞、武部聡志作曲・編曲・プロデュースというゴールデンコンビによって書き下ろされたこの新曲と彼女の音楽歴を聞くロングインタビューを紹介しよう。

──城さんは奄美大島出身で、「シマ唄」をやってらっしゃったんですね。

城南海:実は奄美にいたときは興味なかったんです。始めたのは奄美を出てからで、16歳のときからですね。奄美って大学がないので、みんな、中学か高校で鹿児島に出る人が多いんです。11歳年上の兄が大学進学のために鹿児島に出てから、島が恋しくなってシマ唄を始めて。私は中学で島を出たんですけど、高校生のときに、兄がシマ唄を唄っているのを見て、“私もやってみたい”と思って、兄が唄っているのを聴きながら覚えていったという感じです。音楽をやっていたという部分では、ピアノをずっとやっていました。そのおかげか、シマ唄を唄おうと思ったときにも、音をとるのが早かったんですけど。

──島を出て、奄美を恋しく思ってシマ唄を始められたんですね。

城南海:島にいるときは、自分から聴きたいと思ったこともなかったのに不思議ですよね。私の実家にはシマ唄を唄う人もいなかったので、お祭りや学校の行事でたまに聴くくらいで、しょっちゅうシマ唄を聴くような環境でもなかったんですね。きっと、奄美の人はみんなシマ唄が唄えるというイメージもあると思うんですけど、3~40人クラスでシマ唄をやっているのは一人か二人くらいなんですよ。だから、そんなに身近にあるものでもなく……離れたからこそ触れるようになりましたね。奄美は鹿児島県なんですけど、同じ鹿児島なのに、奄美のシマ唄を知っている人は本当に少ないんです。だったらもっと広めたいという気持ちが兄の中で膨らんだみたいで。兄の友人が鹿児島に奄美料理屋さんを開いているので、そこにシマ唄を唄える人が集まるんですね。ご飯食べたりお酒を飲んだりしながら、唄で遊ぶような場になってるんです。そういうところに連れていってもらったり、そこに食事をしに来る鹿児島のお客さんにシマ唄を聴いてもらったり。先生についてシマ唄を習ったわけではなく、唄で遊んでいるような場で覚えていったんです。

──音楽でプロを目指すようになったのは?

城南海:兄と一緒で、シマ唄を広めたいという思いと、シマ唄を唄うと懐かしい気持ちになるので、自分で奄美の空気に触れていたいという気持ちで、趣味で好きなように唄っていければいいなぁと思っていたんですよ。鹿児島を出るつもりがなかったので。それがスカウトをされて。高校はピアノの学科だったんです。音楽をやるならピアニストかピアノの先生かなぁと思っていました。

──歌ではなかったんですね。

城南海:はい。音楽をやりたいという気持ちは前提としてありましたけど、自分に出来るのはピアノだろうなと思っていたのに、なぜか歌のほうに……(笑)。でも兄と一緒にシマ唄を広めたいという気持ちも強かったし、ちょうどその頃、三味線を買って、いろんなお祭りやラジオ番組にひとりで出演したりもしていたんです。だから嬉しかったですね。

──デビューしてから二年半を過ごしてみてどうですか?

城南海:九州から出たとことがなかった私が、デビューしてから色んなところへ行くようになって、それがどんどんつながって、いろんなところで歌えるようになって、そういうつながりって凄いなぁと感じています。一期一会という言葉は本当だなと思います。

──そして、一年半ぶりにシングル「兆し」がリリースされたばかりですが。言葉もメロディもシンプルなんですけど、心に残ります。一青窈さんが作詞で武部聡志さんが作曲をしているんですね。

城南海:独特な世界観がありますよね。一青さんとは上海万博でイベントに出演したときに面識はあったんですけど、こうやって提供をしていただくのは初めてで。武部さんもそうですけど、共同作業も多くて、仮歌もその場で一青さんが歌ってくれたのを聴いて表情も見て、言葉には乗らない思いみたいなものも感じることができたんですね。そういう段階を踏まえて私もレコーディングができたので良かったなぁと思いました。レコーディングのときも、武部さんと武部さんのバンドと一緒に“せーの”で録ったんですよ。クリックじゃなくて、ゆらぎも入った生演奏を聴きながら歌うことができて。その後、歌は別にレコーディングしてますけど、生演奏と一緒に歌ったときの呼吸がわかっていたから歌いやすかったですね。歌詞には奄美大島の言葉も入れてもらったりして。

──奄美の言葉を入れるというのは、一青さんと何かお話したの?

城南海:やりとりをしながら作っていったんですよ。この“あぶらかだぶら”のところに、「当てはまりそうな奄美の言葉はある?」って聞かれて。私は“ネリヤカナヤ”という言葉と“アヤハブラ”という言葉を提案して。“ネリヤカナヤ”という言葉は、沖縄でいう“ニライカナイ”と同じ意味で、“理想郷”というような意味です。“アヤハブラ”は“きれいな蝶々”っていう意味なんですよ。仮歌の段階で、一青さんが“ネリヤカナヤ”と“アヤハブラ”を入れて歌ってくれたりして、他のところも作りながら、武部さんとも話し合いながら、結局、“ネリヤカナヤ”はなくなって、“アヤハブラ”を使っていただいたんです。

──希望の兆しを歌った曲だから、世界観と合っていますね。曲自体にもメッセージが流れていますけど、城さん自身はどんな思いを込めましたか?

城南海:この歌詞は、震災直後に一青さんが書かれたんですよ。復興の兆しが見たい、明るい兆しが見たいという願いが込められているんですね。私の場合は、去年、奄美で豪雨があって、そのときに全国の人から、もちろん東北の人からも支援してもらって、この間、一年ぶりくらいに帰ったら、まだ崩れているところはいっぱいあるんだけど、4月から工事が始まったんです。やっと復興している姿を見て、その恩返しの気持ちを込めて歌いたいなと思いました。“ありがとう”という気持ちと、被災された方もそうですが、そうでない人たちも落ち込んで、先が見えないって気持ちになっている人もいると思うんですね。そういう方に対しても、明るい兆しを曲を通して見出してもらえたらいいなぁという思いで。この曲自体もガツンとメッセージするという感じではなく、スーっと心にしみ込んでくるような曲だから、そういう風にみなさんの心にしみ込んでくれたらいいなぁと思います。

──ライヴでたくさん歌って、多くの人に届いてくれたらいいですね。

城南海:ワンマンライヴでも歌ったんですけど、拍手の音色でどう受け取られたかというのがいつもわかるんですよ。この曲のときは、曲が終わったあと、一瞬間があって、ワァ~っとジワジワきたので、みなさんの心にしみ込んでいった感じが拍手で伝わってきて、すごく嬉しかったです。

──カップリング曲についても、それぞれ聞かせてもらえますか?

城南海:「ずっとずっと」は去年の7月から一年間ドネーションミュージックというもので限定配信していた、ACの“国境なき医師団”のキャンペーンCMソングですね。ドネーションミュージックというのはダウンロードして頂いた収益が寄付されるというものなんです。歌も、海外の恵まれない子供たちのことを思いながら歌いました。でも、今はレコーディング時とは違う思いも加わって歌っていますね。奄美の豪雨があったり、震災もあったので。自分の身近なところに、困っている人たちがいたり、現実があるので。私の曲には、もう一曲のカップリング曲「十六夜」のような詩的な曲が多いんですけど、「ずっとずっと」はストレートだから、若い人にも聴きやすいと思います。このタイミングでCDに収録することができたのは意味があると思うし。

──時代に寄り添った曲になりましたよね。

城南海:そうですね。いろいろな事があって心細く感じたり、孤独に思う事があるかもしれないけど、みんな、一人じゃなく、誰かと支えあって生きているから。そういうメッセージを伝えたくて、歌っています。

──「十六夜」は、さっきも言っていたけど、城さんの曲に多い世界観なの?

城南海:はい。私の曲にはなぜか月っていうワードが多く出てくるんです。この曲も月のもとで愛しい人を思うという歌なんです。これまでは奄美を連想させる言葉は少なかったんですけど、この曲には“ガジュマル”とか、歌っていて島にいるような気分にさせてくれる言葉が歌詞の中にも入っていて。キラキラしているし、奄美の月の下で波に揺られているような。歌っていて気持ちのいい曲ですね。ライヴでもずっと歌っていたので、CD化のリクエストを多く頂いている曲なんですよ。だいぶお待たせしてしまったのですけど。

──3曲それぞれに魅力があるし、ライヴに行けばシマ唄も聴かせてくれる。城さんは世界観の大きいアーティストですね。今後、どうなっていきたいですか?

城南海:私はJ-POPのような歌を歌っても、グイン(シマ唄独特のこぶしのような歌唱法)が入ってしまうんですよね。もともと私はシマ唄を広めたいという思いで歌ってきたので、グインを入れるだけでも、みなさんのもとに“奄美の風”が届くと思うので、そんな風に、“奄美の風”を感じさせるような音楽を歌っていけたらいいなぁと思います。

取材・文●大橋美貴子

「兆し」
PCCA-03462 \1,200(tax in)
発売中
1.兆し
2.ずっとずっと
3.十六夜
4.兆し(カラオケ)
5.ずっとずっと(カラオケ)

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