カミナリグモ、匂い立つような音の刺激満載の意欲作『SMASH THIS WORLD!』大特集

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カミナリグモ

最新アルバム『SMASH THIS WORLD!』2011.11.02リリース

INTERVIEW

──お二人は大学の先輩後輩なんですよね。

上野啓示(以下、上野):はい。もともと僕はバンド活動をしていたんですけど、就職活動とかでメンバーがいなくなり、ソロでやったり、イベントにはバンドで出たりという感じで、その間、ghoma(成瀬篤志)ちゃんはサポートしてくれて。

成瀬篤志(以下、成瀬):僕は(上野)啓示くんがバンドでやるときにサポートしたりしていたんですけど、少しずつレコーディングを一緒にするようになったりして。

──成瀬くんは今は鍵盤ですけど、高校時代にブラスバンドの経験もあるんですよね。いろんな音楽に触れてここにいるんですね。

成瀬:ブラスバンドのときはパーカッションだったんですよ。鍵盤は、ピアノをずっと習っていたので。昔からいろんな楽器を触ったり、アレンジするのが好きだったんですよね。そういう部分は現状のカミナリグモにもあるので、繋がっているのかなぁと思いますね。

──上野くんがギターと歌に至った経緯は?

上野:もともと姉がピアノをやっていたので、そのついでみたいな感じで教えてもらってたんですよ。でもあまり真面目にやってなくて。既存のクラシックの楽曲を弾くということにモチベーションが上がらなかったので、音がわかったら、自分で好きな音を組み合わせて、曲を作るっていうことを子供の頃からやってたんですよね。記録とかはしてなかったんですけど。

──遊び感覚で?

上野:遊びというか、本当に自然に。小学校の頃ってピアノは女の子がやるものだっていう空気があったから、次はギターだ、と。ギターは男が弾いててもカッコいい。そういう単純な動機ですね。

──歌は?

上野:歌はもともと好きでしたね。カラオケとかに行くと「上野くん歌うまいね!」っていう、そういう少年時代でしたね。昔のほうがうまかったんじゃないかと思うんですけど(笑)。

──2人になって、カミナリグモとして音を作るにあたってはどういう風に構築していったんですか? 

上野:今のこういうジャンルで、キーボードがghomaちゃんの位置にいるようなバンドってあまりないと思うんですよね。そういうところでの工夫は、けっこう意図的に取り組んでいると思います。

成瀬:ギターとキーボードっていうと、両方コードの楽器という印象があると思うんですけど、気分的には、僕はキーボードなんですけど、リードギターのような、そういう気分なんです。

──リフが多いですもんね。

成瀬:そうですね。あまりコードを弾かない。そういうところで差を付けているというか。啓示くんが歌を唄ってギターを弾いている横で、片手一本でも成立する音楽と言うか。だから、僕の中では伴奏という概念がほとんどないですね。

──なるほど。歌のメロディの横ですごく印象的なリフが鳴っているというのがカミナリグモの味という感じがしますよね。

成瀬:歌の世界観だったり、言葉のイメージがあって、それを音に落とし込んで、音の耳触りもうまく歌詞とリンクすると良いなぁと思って。そういうことを常に考えて音は作っていますね。

──『SMASH THIS WORLD!』を作るに当たっては、何を考えて作りはじめましたか?

上野:今作はいたって自然な流れで。前作の『BRAIN MAGIC SHOW』のほうが意図的に音楽性やジャンル感を確立させたいって思いがあって。カミナリグモはリズム隊がメンバーとしていないけど、僕らがやりたいものはリズム隊がしっかりとあって、バンドサウンドでっていうところなので。これまではリズム隊がずっと固定していなくて、ドラムもメンバーになってすぐに辞めたりとか、そういうことがあったり。ベースで言うと音源には入ってましたけど、ライヴではghomaちゃんが左手でシンセベースを弾いてたりもしたので、音源とライヴはもちろん違うし、バンドサウンドっていう意味ではものすごく曖昧で中途半端な位置にいたバンドなんですよ。そこに、山中さわおさん(the pillows。今作では「SCRAP SHORT SUMMER」「ブラインド フォトグラファー」のプロデューサーでもある)の紹介で、ベースの鈴木淳さん(fragments)が入ってくれて。その時はドラムがメンバーとしていたんですけど、その後、抜けてしまって、森信行さん(ex.くるり)にお願いしたのが今のリズム隊の始まりなんですけど。

──今作は、その体制で作った二作目ということですよね。

上野:はい。前作はまだ探り合いながらというところがありましたけど、それがあったから、もうちょっとお互いの共通認識が確立されていて。スタートラインがある程度、自分たちが目的とするところと近い場所から始まったんです。最終的な音像に関しても共通認識を持っていて、「こういう風になればいいんだよね?」っていうところで進めていったので。そういう意味では、今作は今自分達が確信しているカミナリグモの音楽というか、ジャンル感だったり、こういうバンドスタイルっていうものを自然に、色濃く詰め込んだっていう感じなんですけどね。

成瀬:森さんと淳さんはレコーディングだけではなくて、ツアーでも全国の会場を一緒に回っているし、制作で音的な部分で一緒にやってきたこと以上に、普段、ライヴとかで同じ時間を過ごす中でも、音楽だけではなく、人としての部分でもだいぶ深い関係のなかで、今回の制作をしていったので、役割分担が見えたなかで制作ができたんですよ。

上野:人と人なので、時間が経つほどお互い分かり合えるし、コミュニケーションがとりやすくなってきますよね。

──アレンジはどうやってるんですか?

成瀬:啓示くんが曲を持ってきた時点で、歌詞は8割がた出来ていて、ラフな部分を2人で作って、その後、森さんと淳さんと4人で細かい部分を詰めて行くという形が基本形ですね。

上野:特に、淳さんは今作も前作も全曲参加していただいてるんですけど、ものすごくカミナリグモに愛情があって、ギターの音づくりだったり、ミックスもそうですけど、細かいところまで関わっていただいているので、すごく必要な存在ですし、ありがたいです。

──音数は少ないですけど、それぞれがキャッチーですよね。

成瀬:音っていっぱいあればいいわけではなくて、認識すべき音だけがあれば、割とその音楽というのは成立するものだと思うんですよ。曲を作る上での最短ルートではないですけど、そう考えると、逆にそこそこ少ないほうが色んな意味で、楽器同士がリンクするんだろうなと思います。

──歌詞の部分では、以前の作品からもそうですけど、全曲通して五感で感じられるんですよね。色、匂い……そういうものを全力で伝えてくるような。

上野:きっと僕はそういうタイプのソングライターで、情景の描写があったりとか、それをghomaちゃんが解釈して、音色的にもそういう色づけをしてくれている部分からもくるんだと思うんですけど。

成瀬:それができるのは、ヒントとなる言葉が歌詞の中に多いので。そういうヒントがないと絞り込めないからどうしたらいいのかわからないんですけど、カミナリグモの曲はすぐに見つかるので。もちろん苦労はしますけど、最終的にはいいところに落ち着くのかもしれないですね。

──「カスタードクリーム」は味もしてきますからね。

一同:はははは(笑)。

──共感覚(色や味を音として捉えることができる感覚)を持っているのかと思いました。

上野:それは嬉しい感想です。自分の中に色んな感覚があって、こういう曲を作ろうと思って作ることもあるんですけど、もうちょっと自然派生的というか。まぁ、自分の感覚の中にないものは出て来ないんですけど……その中でも言葉というのはもうちょっと具体的で、受け手によっても捉え方は違ってくるし。ただ、自分が言葉に託しているイメージみたいなものは、漠然としているけど、自分のなかに確かにあって。受け取った人が、自分が感じたものと似たようなものを受け取ってくれているんじゃないかなと思います。それが違ってもいいんですけど、漠然としたものを言葉に託しているので、今言われたような共感覚として受け取ってもらえるとしたら作り手冥利に尽きるというか嬉しいことだなと思います。

──英語の歌詞がついている「Delicious Moon」ですら、感じられるものがありますからね。日本語詞のものに混ざっていても違和感がないし。

上野:これは妄想好きな女性の視点から書いた曲なんですけど、それも自分の中にあった感覚の中から出て来たので、もしかしたら自分かもしれないし(笑)。

──グルーヴも確立して、完成した今の気持ちは?

上野:良い作品ができたと思いますし、決して間口は広くないかもしれないですけど、わかってもらえる人にはわかってもらいやすいアルバムになったのかなと思います。そういう意味で、自分と同じ価値観を持っている人は、今まで以上に大好きになってくれるんじゃないかっていう手応えはありますね。そういう意味ではツアーも楽しみ。それはバンドとしての成熟度というか、活動をスタートしてから時間は経ってますけど、今の形としてはまだまだ伸びしろがあるバンドなので、そういう意味でも楽しみだし。ツアーでのお客さんとのコミュニケーションも楽しみですね。

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