【D.W.ニコルズ・健太の『だからオリ盤が好き!』】第31回「~レコード棚の整理から~ The Staple SingersのSTAX盤とJT『Gorilla』の国内再発盤」

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D.W.ニコルズの鈴木健太です。

もう2012年も1ヶ月が過ぎようとしていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。僕は、昨年は11月12月と初のワンマンでの全国ツアーがあり、ツアーを終えてからもイベントに出演したりDJをしたりと、なかなか忙しい日々を送っておりました。

年末には一段落したので仕方なく大掃除をしたのですが、ずっとやらなきゃと思っていたレコード棚の整理にもついに着手しました。まあレコード棚の整理なんて言っても、いざ始めてみれば、次々手に取ってはジャケットを眺めてみたり、盤やレーベルをチェックしてみたり、ついには聴き始まったりなんかして、結局のところ何の整理にもならずに終わるのが常です。

でもそれは自分のレコードコレクションを見直す良い機会になります。

レコード棚をあらためてチェックしていくと、しまいどころが悪かったために存在を忘れられてほとんど聴いていないアルバムを発見するなんてこともあります。

まずはそんな例を1枚。

■ The Staple Singers『Be Altitude: Respect Yourself』


▲いかにも'70sソウルな素敵ジャケット。仲良さそうな家族です。しかしよく見るとこれ飛行機のエンジンの前ですね、怖い……
ステイプル・シンガーズの1972年、STAXからの代表作。

どういうわけか、今となっては滅多に聴かないLed Zeppelinコーナーに埋もれていたために、せっかく探して買ったのに、ほんの数回聴いたきり、存在を忘れていました。

僕がステイプル・シンガーズを知ったのは、僕の最も好きな映画でもある、マーティン・スコセッシ監督によるザ・バンドのフェアウェル・コンサートのドキュメンタリー映画『The Last Waltz』のビデオで、でした。優しそうな顔で声も優しいおじさんと、ハツラツとした女性たちによるゴスペル色の強いヴォーカルグループが、緩急に富んだコーラスワークで「The Weight」をザ・バンドとともに演奏する映像はとても印象的で、『The Last Waltz』を何度も繰り返し観ているうちに大好きなシーンの一つとなっていました。

僕は大学時代に黒人音楽に特に傾倒した時期があり、その頃にステイプル・シンガーズのベスト盤のCDを買ったのですが、そこで初めて、ステイプル・シンガーズが父と娘達によるグループであることを知り、それから間もなくして、優しそうな顔で声も優しい父ステイプルズ、ローバック・“ポップス”・ステイプルズの訃報が報じられました。つい最近のことのような気がしていましたが、こう思い出してみると大学時代のことですから、もう10年以上が経っていることに気付かされ、驚きました。

しかしながら、やはりベスト盤というのはあまり面白いものではなく、それほど聴き込むには至っていませんでしたが、数年前、アナログのオリジナル盤の音の凄さの虜になり、特にソウル系の音の迫力を知ってから、このステイプル・シンガーズもオリジナル盤で聴いてみたいと思うようになりました。まずはその黄金期と言えるSTAX時代の作品の中でも代表作とも言える『Be Altitude: Respect Yourself』か、「The Weight」の収録された1968年作『Soul Folk In Action』を探していたのですが、先に見つけて手に入れたのはこの『Be Altitude: Respect Yourself』でした。


▲この手のデザインのSTAXのマークはレコードコレクターでなくとも見たことがある人は多いはず。1972年のオリジナル盤はこの手のマークは黒バックに茶で、レーベルは黄色。
「I'll Take You There」や「Respect Yourself」などのヒット曲も収録、商業的にも成功しつつある時期で、いろんな意味で乗りに乗ったヴォーカル、コーラスは凄い迫力で圧巻です。それをマッスルショールズレコーディングによる、南部臭に溢れつつも洗練され、かつパンチの効いたサウンドが後押しし、聴いて胸が高鳴るような躍動感に溢れた作品です。また、父ステイプルズの哀愁漂う優しい声が、絶妙な緩急の“緩”となっており、飽きずに聴ける大きな要素となっているように思います。

そしてやっぱりSTAXのオリジナル盤の音はエグい。

'60年代のSTAXのオリジナル盤の音は、乾いていてザラッとしていて、ひたすら生々しい印象が強いのですが、この'72年のSTAX盤の音はとにかく太く、声はずっとふくよかに聴こえ、コーラスも割れんばかりの迫力です。グルーヴも粘り、うねっています。前述の2曲などはそのベスト盤CDにも収録されているのですが、このオリジナル盤で聴くとまるで別物に聴こえてきます。

こんなに素晴らしいレコードを、妙なところにしまい込んでしまったばかりにほとんど聴かずに、しかも存在すら忘れていたなんて本当にもったいない話です。
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