増田勇一が選ぶ『1月の10枚』

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以前、『今月のヘヴィロテ』と銘打って毎月のお気に入り盤10選をお届けしていた。その連載を諸事情によりストップしてからすでに久しいのだが、今月から唐突に再開させていただくことにする。あれこれ事情を説明するつもりはないので、さっそく1月に発売された新作アルバム群のなかから、特によく聴いた10枚の顔ぶれをご紹介したい。

■LAMB OF GOD『RESOLUTION』
■DIR EN GREY『UROBOROS [Remastered & Expanded]』
■cali≠gari『11』
■INSOMNIUM『ONE FOR SORROW』
■REVOKER『REVENGE FOR THE RUTHLESS』
■TRENT REZNOR/ATTICUS ROSS『THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO』
■VEKTOR『OUTER ISOLATION』
■DAUGHTRY『BREAK THE SPELL』
■JAMES DURBIN『MEMORIES OF A BEAUTIFUL DISASTER』
■LOS LONELY BOYS『ROCKPANGO』

上記10枚に厳密な順位付けはないのだが、ほぼ聴いた回数の順だとご解釈いただいて構わないと思う。LAMB OF GODの新作はいい意味でわかりやすく、このバンドの支持基盤を拡げながらさらに強固なものにするはず。2月下旬に迫っている来日公演にも期待感が高まるところだ。

DIR EN GREYのこの作品に関しては、純然たる新譜とは言い難いものだが、かといって単なる新装盤にも終わっておらず、『UROBOROS』という怪物アルバムの深層に迫るものとなっている。あくまで個人的な意見だが、今回のタイトルに含まれている“Remastered”という言葉には、やや説明不足なところがあったように思う。実際、マスタリングのみならず改めてミックスもやり直されているだけに、それこそ“Reconstructed(再構築)”くらいの言葉を掲げたほうが作品の性質について伝わりやすかったのではないだろうか。

頻度で言えば上記2枚を聴いていることが圧倒的に多かったこの1月だが、cali≠gariの『11』の面白さも群を抜いていた。まさに奇跡的ともいえるこのバンドの現在の成り立ちが、そのまま音として体現された画期的な作品だ。もっともっと純粋に音楽的なユニークさとクオリティの部分でも評価されてしかるべき存在だと、改めて思う。

他にも、フィンランド出身のINSOMNIUMの作品はメランコリアとブルータリティの調和が魅力的な烈しくも美しい1枚だったし、まったく別の意味で“感情とメロディの洪水”を堪能させてくれたのがLOS LONELY BOYSだった。英国出身のREVOKERのイキの良さ、あのVOIVODを彷彿とさせるVEKTORの鋭利な屈折感も印象的だったし、『アメリカン・アイドル』から登場したジェイムズ・ダービンは、同番組からデビューを飾った大先輩であるクリス・ドートリー率いるDAUGHTRYの好敵手になるかもしれない。どちらも完成度の高い普遍的ハード・ロック作品である。

そして、この10作品のなかに唯一、輸入盤で混入しているのが、映画『ドラゴン・タトゥーの女』のサウンドトラック。とりあえずトレント・レズナーのファンは必聴。アルバムに先駆けて音源が公開され話題を集めていたLED ZEPPELINの「Immigrant Song」のカヴァーも収録されている。

これらの作品以外にも、THREAT SIGNALのセルフ・タイトル作、NIGHTWISHの『IMAGINAERUM』などはよく聴いた。また、LOUDNESSのデビュー30周年を記念して3社から同時発売された『LOUDNESS BEST TRACKS』も興味深かった。これは各時代の作品から選び抜かれた楽曲群に新たにデジタル・リマスターが施されたもの。こうして波乱万丈の歴史に触れてみると、このバンドがいつの時代にも先駆的だったことに改めて気付かされ、同時に、早くも“次”が聴きたくなってくる。

なかなかの豊作だった1月。2月にも数多くの強力新譜が登場することになるはずだが、毎月たくさんの音源を聴きながら、できるだけこのシリーズを長続きさせていきたいと思っている。そして、読者のみなさんが新しいフェイヴァリット・アルバムを見つけたり、うっかり購入し忘れていた作品の存在を思い出したりするうえで、少しでもお役に立てれば幸いだ。そして、是非、できるだけCDショップに足を運んでみて欲しい。

では、次回もお楽しみに。

増田勇一
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