第54回グラミー賞に映し出された、コンピューターでは作れない「ヒューマンな才能」

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2011年10月に史上最高齢で全米チャート1位を獲得した85歳のトニー・ベネットが、第54回グラミー賞受賞式でノミネートされていた以下3部門全てを受賞し、史上最高齢での3部門受賞となった。トニーはこれまでに15回の賞を受賞しているので、これで計18回目の受賞となる。

●『最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス』(「ボディ・アンド・ソウル」 with エイミー・ワインハウス)
●『最優秀トラディショナル・ポップ・ヴォーカル・アルバム』
●『最優秀インストゥルメンタル・アレンジメント』(「フー・キャン・アイ・ターン・トゥ」 with クイーン・ラティファ)

受賞式では、キャリー・アンダーウッドと『デュエッツII』に収録されている「イット・ハッド・トゥ・ビー・ユー」をパフォーマンス。これもまた、グラミー史上最高齢のデュエット・パフォーマンスとなった。

85歳のトニー・ベネットが活躍する一方で、あまりにも若すぎる死が悔やまれている。2月11日に亡くなったホイットニー・ヒューストン、1月に亡くなったエタ・ジェイムズ、そして2011年夏に亡くなったエイミー・ワインハウス…『デュエッツII』にはエイミーの最後のスタジオ・レコーディングとなった「ボディ・アンド・ソウル」が収録されており、この楽曲が今回のグラミー賞で最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンスを受賞している。受賞スピーチではトニーと共に、エイミーの両親が壇上にあがった。父親のミッチ氏は「今このステージにいるべきなのは私達ではなく、娘のエイミーだ。運命は皮肉なカードを配るものだ。トニーとのデュエットは彼女に大きな意味を持っていました。「ボディ・アンド・ソウル」は彼女が一番好きな曲でした。」とエイミーの思い出を振り返り、「ホイットニー・ヒューストン、エイミー・ワインハウス、エタ・ジェイムズよ皆永遠に。天国に美しいガールズ・バンドが出来た…」と締めくくった。

2012年グラミー賞の主役となったのは6部門受賞のアデル、5部門受賞のフー・ファイターズ、そして史上最高齢での3部門受賞となったトニー・ベネットだろう。

トニー・ベネットは、データ交換で世界どこでもデュエット出来る今の時代において、あえて世界各地を飛び回り、スタジオで一発録りのデュエットにこだわることで、その時だけに生まれる臨場感を生み出し、アーティストがふれあい奇跡のマジックと弾けるパッションを作品に閉じ込めた。

フー・ファイターズも全く同様だ。『ウェイスティング・ライト』は自宅ガレージでテープレコーダーを回して制作するという、トレンドとは完全に逆行した極めてアナログな作品であった。

「ありがとうございます。大変な栄誉です。このレコードは私たちにとって特別でした。最高のハリウッドのスタジオに行って最新のコンピューターを使って作る代わりに、自宅のガレージでマイクとテープマシンで制作したのです。この賞は、私にとってとても重要です。音楽を作るということにおいての“ヒューマンな才能”が重要だということが示されたからです。マイクで声を出して歌って、楽器を学んで演奏するということが一番大事だということ、完全でなくても良い、完全な音を出さなくても良い、コンピューターの中で何が起こるのかということではなく、心の中、頭の中で起こることが大事なのだと示してくれました」──デイヴ・グロール

デジタル化が進む音楽制作の現場で、あえて時代と逆行し手間のかかる制作方法がとられた作品たちが今回のグラミー賞で評価される形となった。そして、85歳になっても最前線で活躍しグラミー3部門を受賞したトニー・ベネットに、若すぎる死を迎えたホイットニー、エイミー、エタ・ジェイムズ。めでたさと悲しみが互いを照らしあうような、記憶に残るグラミー賞となった。

最新DVD『デュエッツII:グレイト・パフォーマンス』
3月21日発売 SIBP-216 \3,990

CD『デュエッツII』
初回限定盤1CD+ボーナスDVD2枚組 ¥3,780 SICP-3256~3257
通常盤1CD ¥2,520 SICP-3258

『ウェイスティング・ライト』
SICP-3072 ¥2,520(税込)
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