ロバート・グラスパー、スタンダードからニルヴァーナまで、ライブ感あふれる新作『ブラック・レディオ』

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米国人ジャズピアニストのロバート・グラスパーが2月22日、新作アルバム『ブラック・レディオ』(アルバムはヒップ・ホップ感覚を主張する『ロバート・グラスパー・エクスペリメント』名義)を発売する。気心知れた12人のアーティストが参加したレコーディングは、自らのステージと同じように、アーティスト同士が互いの熱をぶつけ合い、そこで生まれた衝動に引っ張られて制作を進めたという。ライブ感あふれる新作について聞く。

◆ロバート・グラスパー画像

アルバムには「アフロ・ブルーfeat.ミシェル・ンデゲオチェロ」などジャズファンになじみのある曲に加え、ニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」などジャズ曲ではない曲も収録。乾いた打ち込み音や、電子音などを取り入れ生まれた音は、枠にとらわれない独特の世界観を放っている。

音が持つ心地よい“浮遊感”を、グラスパー自身も感じ、楽しんでいる。

「僕は名目上リーダーだけど、何も決めないでスタジオに入ったんだ。そこで音(声)を出し、お互いの呼吸を感じていった。時間を重ねていくと、音楽が持つスピリットが、音が向きたい方向を示してくれる。僕らもそのムーブに乗って動いていて、誰にも行方は分からないんだ。アルバムは作品として出すために、そのときに生まれた感情を録音しているから、ライブではまた、そのときの熱によって音が進化していくと思う。音楽はどんどん広がって行くものだからね」。

ジャズとR&B、ヒップホップ…など、異なるジャンルを融合させる自らの制作については「僕は母がピアニストだった影響で、ピアノに親しんでいたけど、ゴスペル、ファンク、カントリーといろんな音楽を聴き育ったんだ。もちろん学校では歴史や音の作りを学んだよ。でも音は楽譜ではなくて、耳でおぼえたんだ。だからこうでなくてはいけないという考えをまず置いて、自由に。融合すると感じるものを追求していきたいんだ。ジャズについては、古典と思っている人も多いよね。だから生ピアノにシンセサイザー、ヴォコーダーを合わせたり、ドキッとするような表現をして、入口を広く開け、まず聴いてもらえるよう注目して欲しい。将来的にはジャズをメインストリームに上げたいっていう思いがあるんだ。ジャズは過去の遺産ではないからね」と熱く語った。

『ブラック・レディオ』というタイトルは飛行機のブラック・ボックスからヒントを得た。「飛行機のブラック・ボックスって、いろいろな情報が詰め込まれているでしょう。それと同じでこのアルバムにもいろんなジャンルの音楽が入っている。いろいろなものが詰め込まれているけど、どんな音楽の中にあっても生き残っていく」という思いを込めたんだ。レコーディングは友だちが友だちを呼んで…、しっちゃかめっちゃかな所もあったけど、人がレコーディングをする姿を見ることってなかなかないから、すごく刺激的だったよ。計算では生まれることがないライブ感を感じてほしいね」。

取材・文・写真/西村綾乃

ロバート・グラスパー・エクスペリメント『ブラック・レディオ』
2012年2月22日 日本先行発売 TOCP-71225 2,300円(税込)
1.リフト・オフ feat. シャフィーク・フセイン/マイク・チェック
2.アフロ・ブルー feat. エリカ・バドゥ
3.チェリッシュ・ザ・デイ feat. レイラ・ハサウェイ
4.オールウェイズ・シャイン feat. ルーペ・フィアスコ&ビラル
5.ゴナ・ビー・オーライト(F.T.B.) feat. レディシ
6.ムーヴ・ラヴ feat. キング
7.アー・イエー feat. ミュージック・ソウルチャイルド&クリセット・ミッシェル
8.コンシークエンシーズ・オブ・ジェラシー feat. ミシェル・ンデゲオチェロ
9.ホワイ・ドゥ・ウィー・トライ feat. ストークリー・ウィリアムズ
10.ブラック・レディオ feat. モス・デフ
11.ヘルミオーネへの手紙 feat. ビラル
12.スメルズ・ライク・ティーン・スピリット
13.トゥワイス

◆ロバート・グラスパー・オフィシャルサイト
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