2012年2月24日、全労済ホール/スペース・ゼロで行われた<活弁大絵巻~ニセモノvsホンモノ~交感ひろば>。山崎バニラの独特な声で語られる言葉は、故き映画を今に蘇させる魔法のようだった。

◆山崎バニラ画像

「活弁」。正直、これまで縁がないまま過ごしてきました。2012年のアカデミー賞では、サイレント映画『アーティスト』が作品賞を含む最多5部門で受賞。言葉がない映画に触れることも増えそう。

<活弁大絵巻>は、彼女の故郷でもある白石をテーマにした「白石よござりす」でスタート。作詞・作曲・編曲・演奏・歌・編集のすべてを彼女が行ったという作品。白石は宮城県白石市。しかし、県内の人でも白石を「しらいし」を読む人がいるそう。正しくは「しろいし」。ホワイエでは、白石の名産品の販売も行われていました。

「白石よござりす」のあと、山崎バニラ登場。金髪に袴姿。挨拶のあと、大正琴の弾き語りによる「国士無双」を。この作品は、1932年(昭和7年)に封切られた伊丹十三監督の父上、伊丹万作監督の作品。今回のサブタイトルでもある<ニセモノvsホンモノ>の物語。伊勢伊勢守という侍の本物と偽物のやりとり。2時間以上の作品なのだが、現存するのは23分のみ。そこを補うのが活弁士の技とのこと。難しい話かと思いきやコメディ。かなり笑わせていただきました。これは、彼女の言葉のセレクトの素晴らしさです。80年前の作品に今を入れることで作品はあっという間に、古さが消え鮮明に見えてきます。まさにマジック。

「国士無双」を楽しんだあとは、「活動写真いまむかし」という作品を上映。これも、脚本・編集・音楽・イラストすべてを彼女が手がけたもの。なんと、パソコンまで自作だそう! これにはビックリ。活動写真、活弁士について知識のない私には、本当に勉強になる一本。8000人以上の弁士がいて番付があった時代から、現役活弁士が十数名ほどになってしまった今への時代の移り変わりを知りました。彼女が弁士になったきっかけも。そして、ここで初めて知ることになるのですが、活弁士は自分で脚本を書くということ。つまり、活弁士の思いが作品にも込められるということ。クリエイティブな仕事だと実感した瞬間です。

ここで休憩。

休憩後は、金髪&袴姿から黒髪&洋装へ。扱う楽器は大正箏からピアノに。作品は「メトロポリス」という1927年のドイツ映画。しかし、この映画で描かれているのは、2026年という近未来。制作された年は85年前、描かれているのは14年後。2012年にこの作品を観るのは、なんとも不思議な感覚。ここでの<ニセモノvsホンモノ>は、人とロボット。このロボットは、映画『スター・ウォーズ』シリーズの人気ロボット「C-3PO」の参考になったそう。85年前の作品とは思えないセットは圧巻。しかし、2026年を描いているにも関わらずパソコンという概念がないので手書きをしているシーンは微笑ましい。シーンごとに、活弁士ならではの言葉のセレクトで、白黒無声映画に色が付いていく。作品の最後は、平和に握手をして終わるシーンなのだが、そこに乗せられた言葉は、この握手を信じていいのか?2012年を生きる私たちには分からないというような内容。脚本を自ら書く活弁士によって物語は創られているということ。そこに、惚れました。誰かが作ったものを読むのではなく自ら産み出す。活弁士という職業の深さを知った大絵巻となりました。

伊藤緑 http://www.midoriito.jp/

◆山崎バニラ・オフィシャルサイト