【D.W.ニコルズ・健太の『だからオリ盤が好き!』】第32回『オリジナル盤と再発盤 ~Boz Scaggs、 Ry Cooder編~』

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D.W.ニコルズの鈴木健太です。

さあいよいよ春がやって来ました。出会いと別れの季節ですが、何か新しいことを始める季節でもありますね。皆さんもレコード蒐集を始めてみてはいかがですか?

前回は自分のレコード棚からの再発見について書きましたが、今回はそこから少し話を進めてみましょう。

レコードを集めるようになったきっかけについては連載の第一回で詳しく書きました。レコードを買い始めた当初はオリジナル盤というものに関しては存在すらろくに知らなかったので、レコード屋に行っては国内盤・輸入盤問わず、とにかく安い「安レコ」を買い漁っていました。もちろん再発盤や国内盤ばかりです。

後にオリジナル盤というものを知りその魅力に取り憑かれてからは、「安レコ」コレクションの中でも愛聴盤となっているアルバムのオリジナル盤を探し、良い出会いがあったときに買い直すといういうことを続けています。そして無事オリジナル盤で買い直した再発盤や国内盤の安レコ達は、売りに出したり友人にあげたりしています。

しかし、国内盤のレコードには訳詞やライナーノーツがついているものも多く、ライナーノーツには今の音楽雑誌のレビューなどでは到底考えられないような深い内容のものや、貴重な情報が満載のも多くあり、そういうライナーノーツが付いているものは手放さないようにしています。

さて、自分のレコード棚をあらためて整理していると、レコードを集め始めた頃やオリジナル盤と出会った頃のことを色々と思い出します。街へ出たら、まずレコード屋、出先で暇があればまずレコード屋。特にオリジナル盤を集め始めた最初の頃はかなりの勢いで買い漁っていましたが、オリジナル盤に関する知識も乏しかったので、その分たくさん失敗もしました。とは言ってもその失敗に気付いたのはだいぶ後になってからなのですが……。今回は、そんな「オリジナル盤を集め始めた頃の失敗談」について書いてみたいと思います。

まず、僕がオリジナル盤を集め始めた当初は、そのレコードが果たして本当にオリジナル盤かどうかを自分で見極める目をまだまだ持っていませんでした。だからオリジナル盤を買うと言っても、頼りはお店の値札等にある表記のみです。買いに行くお店も、それがオリジナル盤とわかる表記をしてくれているお店にしか行けませんでした。そのオリジナル盤であることの表記方法はお店によって様々で、値札に値段と一緒に「US-ORGINAL」や「UK-ORIGINAL」などと米英の表記までしてくれているお店もあれば、「オリジ」、「ORG」などと表記しているお店もあります。当時の僕は、とにかくそれらの表記があるものから手に取り、それと盤質・値段を天秤にかけて、これなら買いなのではと思うものを買っていました。今思うと、相場も全くわからなかったのに何の天秤にかけていたのでしょうか……。本当に当てずっぽうに近い買い方で、だから検盤(※注)と言ってもチェックするのは盤質くらいなものでした。

※注)検盤……レコード屋で、ジャケットから盤を出して見せてもらうこと。レコードレーベルや、盤質等のコンディションのチェックを行う。見るだけ見て買わないと店員に嫌な顔をされることも多々ある。でもめげずに買う際には必ず行ないましょう。

どんどんオリジナル盤にのめり込んで行った僕は、数少ないオリジナル盤愛好家の友人達と情報を共有し合ったり、暇さえあればインターネットで情報をかき集めたり、またレコード関係の雑誌を買い集めたりしながら、少しずつ少しずつ、自分で見極める方法を身につけていきました。ときには、お店でオリジナル盤表記のあるレコードを検盤だけして、オリジナル盤のレーベルを見て勉強する、なんて荒技もしました(お店の迷惑です、やめましょう)。

そうして次第にその見極めるスキルが身についてくると、お店のオリジナル表記自体にも誤りが少なからずある、ということに気付きました。
あるとき「US-ORIGINAL」という表記のレコードを買おうとして検盤してみたら、レコードレーベルがオリジナルレーベルではなく、再発盤のレーベルだったのです。そのときは「ああ危なかった」と思っただけだったのですが、それからも何度か同じようなことがあり、これはお店の表記を鵜呑みにしちゃいかん、と強く肝に銘じたのです。まあよくよく考えてみればそれも仕方のないことだと思います。あれだけの数のレコードを取り扱って、人間が選別しているのですから、間違いも起こるでしょう。

その表記違いは、ときにはただのミスではなくお店側の勘違いということもあるのようで、それが買う側にとっては逆に幸運となることもあります。連載第28回でも取り上げたアレサの『SOUL'69』なんかはまさにそれで、お店がオリ盤ではないと勘違いしていたおかげでオリ盤を再発盤価格の安値でゲットできた、という例です。

しかしそこで、「と、いうことは?」なのです。

まだ自分に見極める知識がない頃、お店のオリジナル表記だけを頼りに買ったレコード達の中には、実はお店側の表記が間違っていて、それに気付けるはずもなく買ってしまった、というものがあるかもしれません。オリジナル盤の表記があるからそのつもりで買ったけれど、実はそうではなかった、という。

それで急に不安になり早速チェックしてみると、案の定、オリジナル盤のつもりで買ったものの中から、再発盤が1枚見つかりました。
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