井手綾香、オーガニックで柔らく太陽のように暖かい1stアルバム『atelier』

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CMやドラマ等でその声を耳にすると、ふと聴き入ってしまう。それが井手綾香の声。オーガニックで柔らかで、太陽のように暖かい。そんな声を持つ彼女の初めてのフルアルバム『atelier』が完成した。宮崎県串間市都井育ちで、現在も地元を拠点に音楽活動を行っている彼女だからこそ生み出せる、歌詞の世界とメロディに、聴いていると自然に癒されるそんな作品だ。色や匂い、景色等、五感で感じられる13曲が詰まっている。

◆井手綾香、オーガニックで柔らく太陽のように暖かい1stアルバム『atelier』~拡大画像~

──お母さんがアメリカ人のプロのダンサーで、お父さんが福岡でバンド活動をされていて、母方のおじいさんはグラミー賞ノミネートのジャズのトロンボーン奏者のビル・ワトラス氏。音楽一家ですね。

井手綾香(以下、井手):はい。私が育った宮崎県串間市都井はすごく田舎なんですね。お父さんが稼業を継ぐことになって、両親は福岡からお父さんの地元の都井に移り住んだんですけど、お母さんはニューヨーク出身で見た目も白人だし、お母さんが都井に来るまでは金髪の人は街にいなかったんですよ。すごい小さい街に外国人が来たってことで、新聞社が取材に来たくらい珍しかったんです。音楽大好きの両親だったから家には常に音楽が流れていて、車で移動しているときも必ず音楽がかかってましたね。


▲『atelier』初回限定盤:CD+DVD / VIZL-463 \3,500(taxin)
──どんなものを聴いていたの?

井手:お父さんがビートルズ好きなので、もちろん聴いていましたし、あとはキャロル・キングとか、カーペンターズ。お母さんはボズ・スキャッグス、アレサ・フランクリン。両親の世代の音楽はいろいろ聴いてましたけど、逆に新しい音楽を聴く機会があまりなかったかな。

──グッドミュージックに囲まれて育ったんですね。

井手:はい。物心がつく前からそういう音楽に触れてましたが、どれも馴染みやすいメロディなんですよね。英語で何を言ってるのかわからなくても口ずさんだり、家族みんなでコーラスしてハモったりしていたんです。

──自分で曲を作るようになったのも早いですよね。

井手:作詞作曲というちゃんとした形になったのは中学2年生のときですね。ピアノは小学校のときから習っていたんですが、もらった楽譜の曲を弾くだけでは物足りなくて、自分が弾きたい曲を即興で弾いていたので、それが最初の作曲かもしれないですね。もともと家にピアノがあったので、習う前から、ペダルを押して、この音とこの音とこの音を出すと綺麗な音が伸びるなぁとか、そういう音の重なりを探していたんですよ。そこからピアノに興味を持ちはじめて習うようになったんです。ピアノの先生に教えてもらうよりも、自分で綺麗な和音を探して弾くほうが好きでしたね。


▲『atelier』通常盤:CD / VICL-63849 \3,000(tax in)
──へぇ?。同時に唄ったりもしていたんですか?

井手:それが、クラシックピアノを習っていた影響もあるのか、当時はまだ弾き語りはできなかったんです。歌は昔から家族で唄っていたし、お風呂で唄ったり、唄うことは大好きだったんです。でも、弾きながら唄うということはどうしても難しくて。どうすれば、同時にできるのか考えていましたね。中学二年生のときに初めて作詞作曲にトライしたときも弾き語りはできないので、4トラック録音ができるMTRで、歌とピアノは別々に録音して。そこで初めて、自分の声とピアノが一緒になっているのを聴いて、「あ、面白いな」と思いました。高校一年生のときにインディーズ盤をリリースしたんですけど、同時に宮崎を中心にライヴ活動を始めたので、大急ぎで弾き語りの練習を必死にしたんです。

──そこからどんどんデビューの話に繋がって行くんですね。

井手:はい。私は小学校一年生のときから歌手以外の将来は考えられないと思っていたんです。どうやってデビューしたらいいのかなんてまったくわからないし、こんなに小さい街からデビューしたいなんて言ってもいいのかなっていう恥ずかしさもあったので、家族にも友達にも言えず、心に秘めていました。雑誌とかにオーディションシートみたいなのがついてましたけど、それを見て、「こういうのに応募しないとダメなのかな」って悩んだ時期もありましたね。でも、曲を作ったときに両親に聴かせてみたら、両親のお友達に音楽関係の方がいて、聴いていただくことができて、デビューへのきっかけになったんですよ。自分では思ってもないところに夢へのチャンスがあったんですよね。それがビックリでもあり、嬉しかったし、怖かったです。これ、夢? 嘘? って。

──すごいですね。今、デビューした実感は?

井手:CDショップに自分のCDが並んでいるのを見ると、「私もプロのアーティストと同じステージに立ててるのかなぁ」と思いますけど、自分の気持ちはまだそこまで追いつけていないですね。

──でも、1stアルバム『atelier』ができたじゃないですか。良い曲が揃っていますね。

井手:このアルバムの曲は、私のことしか唄ってないんですよ。誰かに向けて書こうとか、そう思いながらピアノに向かうこともありますけど、そうやって誰かのために書こうとすると迷走しちゃうんですよね。自分のことを書けば、へんに上手にやろうと思ったり、誰かにこう思われるかもとか、そういう思いがなくなるんですね。自分のことを唄っているから、他の人にどう思われてもいいかなって開き直れるんです。自分の思ったことに、少しでも共感してくれる人がいたら、私と同じ思いの人がいてくれるんだ! って、逆に私の力になります。

──なるほど。等身大ですものね。そういうほうが、聴く人も自分に置き換えられますよね。サブタイトルに色の名前がついた曲がありますよね。『atelier』というタイトルに相応しいですね。曲を聴いていても絵を見ているように色が浮かんだり、風景が見えて来るものが多いし。

井手:高校三年間で私はずっと絵を勉強してきたんですよ。学校の中に先生のアトリエがあったんですね。どうしてもそこに入りたくて、先生がいないときに入ったことがあるんです。先生はいないのに、まるでそこに先生がいるような、先生の何かがそこにあったんです。絵もたくさん立てかけられていたんですけど、全部違う絵なんだけど、先生が感じられるんですね。この時の感情はこうだったのかな? とか、そういうのがすごく伝わって来て。私も、そういう曲たちがいっぱい入っているアトリエ……作業部屋みたいなものができたらいいなぁと思ってこのタイトルにしました。曲たちも、アトリエに立てかけられている作品みたいな存在だったらいいなぁと思って。サブタイトルに色の名前がついているものもあるんですけど、それはアルバムバージョンとして新しく生まれ変わった曲たちですね。アルバムの歌詞カードの一つ一つの曲に色のイメージがわかるようになっているんですよ。

──そうなんですね。匂いもしてきますよね。「震える瞳の下で」とか、冒頭からユリの花の香りと雨の匂いがします。

井手:私の曲はそういう自然を感じるワードが多いと思うんです。たぶん私が生まれ育った場所が影響しているのかな。すごく田舎で、目に映るものすべてが自然なので。それが自分の中でも焼き付いているのかな。

──「ひだり手」は、おじいさんのビル・ワトラスさんがトロンボーンで参加していますよね。編曲は井手さんがしていて、すごくシンプルなアレンジですけど、どうやって作っていったの?

井手:この曲は私の大切な人のことを曲にしようと思って書いたんですよ。私の大切な人って誰かなって考えたら、お母さんだったんですね。お母さんの手って、大きくてゴツゴツしているんですよ。でも、その手で、毎朝毎朝ご飯を作ってくれたりとか、私を抱っこしてくれたりと、ずっとお世話してくれた手なんですよね。ゴツゴツして大きいけど、そこに何かものすごい愛というか優しさを感じたんですね。その左手を見て、お母さんに対しての感謝の気持ちが湧いて来て、この曲を書いたんです。で、それとは別に、おじいちゃんとコラボできるという話になって、どの曲がいいかなって並べてみたら、自分のお母さんのことを唄っている曲だし、メロディとかもおじいちゃんの柔らかいトロンボーンの音に合いそうだなぁと思ってこの曲を選んで。

──意味のある素敵なコラボですよね!

井手:はい。おじいちゃんと共演するのは夢だったんですよ。今まで「夢は何ですか?」って聞かれると、「おじいちゃんと共演することです」って答えていたんですけど、それが一番最初のアルバムで叶っちゃうなんて! 宝物ですね。私もロスまで行って、おじいちゃんのお気に入りのスタジオでレコーディングしたんですよ。トロンボーンとピアノと声だけなんですけど、おじいちゃんもこの曲のメロディを気に入ってくれて。素晴らしいアレンジャーさんがアレンジしてくれた曲の中に、自分の編曲が混ざってるっていうのが、最初は大丈夫なのかなぁって思ったんですけど、おじいちゃんの力ですごく素敵な曲になりました。

──あとはお母さんへの愛の力ですよ。

井手:ふふふ(笑)。この曲は、いろんな受け取り方ができると思うんです。私はお母さんへの気持ちを唄ったけど、聴く方がそれぞれの大好きな人を思いながら聴いてほしいですね。

──今後も地元の宮崎県串間市都井を拠点に活動するんですか?

井手:はい。環境がすごく良いんですよ。家にグランドピアノがあるんです。ずっと欲しいって言ってたら、友達のピアニストがなんと譲ってくれたんですよ。そのピアノの部屋の窓を開けて、風を感じたりしながら、グランドピアノの蓋を全開にして唄いながら弾けるんです。こんな環境はないですよね。東京でスタジオを借りて練習をすることもあるんですけど、酸素は薄いし、密室じゃないですか。思い切って唄える感じではないんですよね。私が思い切り唄う場所は、小さい頃から唄って来たあの場所なんだろうなって。風を感じて作ってきたからこそ、今みたいな自然を感じられる楽曲が作れるのかなと思います。

取材・文●大橋美貴子

●井手綾香、記念すべきアルバム発売日の25日(水)、日本テレビ系「スッキ リ!!」に生出演。

◆井手綾香からのメッセージ映像

『atelier(アトリエ)』
2012.4.25リリース
初回限定盤:CD+DVD / VIZL-463 \3,500(taxin)
通常盤:CD / VICL-63849 \3,000(tax in)
(CD)
01.風をつかまえて[sky blue]
02.雲の向こう[cyan]
03.ヒカリ
04.きっと、ずっと
05.震える瞳の下で
06.輝く海
07.どんなときも
08.ひだり手
09.あのね[garnet]
10.少しずつ[maize]
11.君からのメッセージ[poppy red]
12.輝きの中で
13.愛をつなごう[mauve]
(DVD)
1.あのね
2.雲の向こう
3.君からのメッセージ
4.愛をつなごう
5.きっと、ずっと
6.少しずつ
7.ヒカリ
8.風をつかまえて(アカペラ short ver.)
9.ひだり手

【ライヴインフォメーション】
<Sing in the acoustic in 浦和美園~ヒカリ~>
4月28日(土) 15:00 ~ イオンモール浦和美園 セントラルコート

<ミニライブ&サイン会>
5月3日(木・祝) 13:30集合/14:00スタート NU茶屋町 1Fコリドール特設会場
5月4日(金・祝日) 14:00~ 阪急西宮ガーデンズ 4階スカイガーデン 木の葉のステージ
5月6日(日)14:00~ 岩手北上アメリカンワールド MJステージ
5月12日(土)12:30集合/13:000スタート タワーレコード福岡店3階イベントスペース
5月12日(土)17:00~ キャナルシティ博多B1F サンプラザステージ
5月20日(日)13:00~ 蔦谷書店宮崎高千穂通り
5月20日(日)16:00~イオンモール宮崎

<LACHIC presents SAKAE SP-RING 2012>
6月2日(土)・3日(日)
会場:CLUB QUATTRO/OZON/HOLIDAY NAGOYA/CLUB Zion/NAGOYA Blue Note/TIGHTROPE...and more
SAKAE SP-RINGオフィシャルHP(http://sakaespring.com/)

<井手綾香1st LIVE TOUR~atelier~>
6月22日(金)18:30開場 19:00開演 大阪 Music Club JANUS
6月24日(日)16:30開場 17:00開演 宮崎 宮崎市民文化ホール イベントホール
6月29日(金)18:00開場 19:00開演 東京 M’t RAINIER HALL SIBUYA PLEASURE PLEASURE

<井手綾香コンサート>
7月8日(日)13:30開場 14:00開演 三重県 東員町総合文化センター ひばりホール

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