ノエル・ギャラガー、武道館ライヴで1万人大合唱

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5月23日(水)、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズが、オアシス以来14年ぶりとなる日本武道館でのライヴを行った。1万人が総立ち、割れんばかりの大合唱で、そのライヴ・パフォーマーとしての貫録と才能を改めて見せつけた圧巻のライヴとなった。オフィシャルレポが到着したので、ご紹介しよう。

◆ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ画像

4か月ぶりという短いスパンでの再来日にはなったけれど、前回のTOKYO DOME CITY HALLと今回の日本武道館では大きく異なる、変わった点が見られたと言っていい。ステージと観客が近いTOKYO DOME CITY HALLではその臨場感をたっぷりと味わえたし、何よりもソロになって初の日本公演ということへの期待感も渦巻いていた。一方、ステージ後方や最上階まで360°ぎっしりと観客で埋まった武道館では音楽の聖地というスペシャルな雰囲気と、約1万人のファンによる熱い連帯感に包まれていた。しかし、ノエルのソロという見方、受け止め方が強かった1月の公演と決定的に違っていたのは、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズというバンドがそこにいて演奏していたということだ。2011年10月からほぼ休むことなく世界中でライヴを行なってきた彼らの演奏が生み出す一体感、緩急がつけられた巧みな表現力、そしてノエルを引き立てるのではなくバンドとしていかに聴かせるかという姿勢が武道館のステージでは感じられ、わずか4か月ではあるけれど、その間のバンドの充実ぶりが伝わってくるような演奏を見せつけてくれた。

不動のオープニング・ナンバー「トゥ・ビー・フリー」も音の厚みが増したようで、武道館の丸くて広い空間をどんどんと埋め尽くし、続く「マッキー・フィンガーズ」での煽るようなギター・リフとドラムが観客の興奮に火を付けていく。5人の息の合ったプレイでじっくりと聴かせる「イフ・アイ・ハッド・ア・ガン」から、軽快な「ザ・グッド・レベル」をはさんで、再びメランコリックな「ザ・デス・オブ・ユー・アンド・ミー」への流れも良く、安定感さえ漂う雰囲気の中、ノエルはアコースティック・ギターを手にした。ドラムとキーボードだけを従えて、ギターを鳴らそうとする前にノエルが「この曲をここにいる親友のアラン・マッギーに捧げる」と語り、「スーパーソニック」へ。そう、この曲はオアシスのデビュー曲であり、所属していたクリエイション・レコーズのオーナーで、ちょうど来日していたアランを前にしてアコースティック・タッチで聴かせてくれた。ノエルの心意気も感じさせる瞬間だった。

前回とセットリストはほぼ変わらず。しかし、曲への入り込み具合というか、深みがさらに加わったようで、それが伝統ある武道館によく似合い、まさに立つべくしてこのステージに立っているような印象を抱かせた。こんなにも早く日本に戻ってきたのは、そんな自分たちの進化を見せつけたいがためというような気さえしてしまうほどで、その強固な演奏を緩めることなくラストまで一気に畳み掛けていった。

アンコールでは前回日本のファンのためにツアーでは初めて演奏された「ホワットエヴァー」を再び武道館でも披露。ピアノタッチのキーボードからヴィンテージ風のオルガン調に変わり、躍動感が加わったアレンジに。軽やかで楽しそうに演奏し終えて、1曲挟んだ後に、「ごめん、あともう1曲しか演奏する時間がないんだ。またすぐに会えるからさ」とノエルが告げるやいなや、キーボードからあの調べが流れ出した。「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」だ。1万人が総立ちになり、最初のフレーズからシンガロングが巻き起こる。そして、サビでは割れんばかりの大合唱が。何度となくこの心が震える瞬間を経験しているが、15年ぶりとなる武道館での感動はやはり特別なもの。後々までに語り継ぐような一夜だった。きっと名古屋、大阪でも同じように誰かに伝えたくなるようなステージになるはず。こうしてノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズは、さらなる高みへと羽ばたいていくのだろう。

文:油納将志
写真:Mitch Ikeda

◆ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ・オフィシャルサイト
◆ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ・オフィシャルサイト(海外)
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