「城南海」のよみかたVol.12「城南海ワンマンライヴ<ウタアシビ2012春>、自らの原点を見つめ直して」

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約1年ぶりの開催となった、城南海のワンマンライヴ<ウタアシビ>。2012年春のライヴは、ミュージックレストラン ラドンナ原宿(東京)、南堀江Knave(大阪)の2か所で開催されました。「彼女の歌をたっぷり聴きたい」と、単独ライヴの開催を待ち望んでいた人が多く、東京公演のチケットは発売直後にSOLD OUT。今回の「城南海のよみかた」では、彼女が「自分の原点を改めて振り返った」という<ウタアシビ2012春>東京公演(5月20日)の模様をお送りします。

◆城南海 画像

19時開演。今回のバンド編成は、ピアノとパーカッションのみ、というシンプルな構成。淡いピンクの衣装でステージに登場した城南海は、おもむろに姉妹(うなり)神信仰に由来する神に捧げるシマ唄「ヨイスラ節」をアカペラで披露。場を清める澄んだ声が響き渡り、会場の空気がサアッと浄化されていきます。そのままピアノとパーカッションが加わり、1stアルバム『加那-イトシキヒトヨ-』の1曲目に収録されている「太陽とかくれんぼ」へ。太陽と月をモチーフにし、聴き手の想像力をかきたてる幻想的なこの楽曲。城南海は手元に持った卵型のシェイカーを振りながら、ジャンベ(西アフリカの太鼓)が奏でる、大地から沸き起こるようなリズムに体を任せて歌います。「太陽とかくれんぼ」のMVは2009年の皆既日食のときに撮影されましたが、折しも今回のウタアシビ東京公演の翌日は金環日食の日。なにか運命めいたものを感じます。そして2011年の<ウタアシビ2011春>で初披露したシングル曲「兆し」。どんな困難な状況でも、明るい兆しを見つけようとする人間の折れない気持ち。それを彼女は優しく包み込み、歌声にのせて空へと導いていきます。

「皆さん、うがみんしょーら(こんにちは)!城南海です。今日は久しぶりのウタアシビ2012春へようこそ。ゆっくりと島時間を楽しんでください」。冒頭から私たちを別世界へ連れていくような、圧巻のステージを届けてくれた城南海。しかし、MCに入るといつもの柔らかな雰囲気の彼女に戻ります。MCに続いて「兆し」のカップリング曲である「ずっとずっと」。共に同じ時間を過ごした大切な仲間へ、たとえ実際の距離は離れていても、心はいつもそばにいる、というメッセージを、力強く歌いあげます。この楽曲の歌詞のなかに<卒業アルバム 眺めてたら>というフレーズが出てきて、今春に大学を卒業したばかりの城南海の姿に重なりました。そして、切なさと温かさが交差する前奏ではじまり、子を思う母の気持ちを歌った「童神~私の宝物~」。彼女はインタビューなどで「加那(愛しい人)を思う心」についてよく話していますが、一音一音に魂をこめて歌う姿を見ていると、誰かを思う心の尊さに改めて気づかされます。

包み込むような城南海の歌声に、すっかり惹きこまれていったオーディエンスの人々。「皆さん、楽しんでいますか? ここで島時間を感じてもらおうと、シマ唄を唄いたいと思います」。1曲目は奄美大島で一番よく知られているという、シマ唄「行きゅんにゃ加那節」。<行ってしまうんですか 私の愛しい人>と別れを悲しむ曲を、三味線を弾きながら披露。

「ここでメンバー紹介をしましょう。ピアノを弾いてくださっているTKさんこと、小林哲也さん! パーカッション、まっすんこと舛岡圭司さん!」。シマ唄の2曲目は、バンドメンバーとともに仕事唄である「イトゥ」を唄います。この曲は奄美大島が薩摩藩の圧政下で、サトウキビの収穫作業のときに唄ったのだそう。そして「“ウタアシビ”なので、皆さんも一緒に唄ってください」と城南海はオーディエンスに呼びかけます。定期ライヴのタイトルでもあるウタアシビ=唄遊びとは、皆で集まり唄ったり踊ったりする、参加型の音楽遊び。ただじっと、静かに聴いているだけではつまらない。「皆さんに唄ってもらいたいのは、“ハーラーヘンヨーホー”です」。初めての人でもすぐに加わることができるように、節回しを実演。会場も一緒に<ハーラーヘンヨーホー>と合唱。その流れのまま曲へ入ると自然と手拍子が起き、オーディエンスが一斉に<ハーラーヘンヨーホー>と声を上げれば、城南海も笑顔でうなずくように応えていました。「今日は(ステージの構造によって)180度皆さんの声が包んでくれて、お酒を飲んでないのに、酔ってしまいそうな雰囲気です」と語り、客席からの歌声に圧倒されたようです。

シマ唄コーナー3曲目は、徳之島(奄美群島のひとつで、奄美大島に次いで2番目に大きい島)のシマ唄「ワイド節」。この曲は闘牛を応援するときの唄で、にぎやかな曲調が特色。城南海は「自分の応援している牛への掛け声をワイド!というんですよ」とタイトルの意味を説明。「皆さん、せっかくだから。踊りのレクチャーをしますね。右手上げてー。左手もあげて。ワイド! ワイド!」と誘導し、最初は遠慮がちだったお客さんも、次第に席から立ち上がって、思い思いの振りで楽しそうに踊り始めます。「最高ー!」と弾けた笑顔を見せる彼女に対し、客席からは「おぼらだれん!」との掛け声が。「おぼらだれん! “おぼらだれん”というのは、徳之島の方言で“ありがとう”なんです。奄美大島では“ありがっさまりょーた”なんですけれど、島によって違うんです」と補足。地域と言葉の密接な関係を教えてくれました。

さらにカヴァー曲コーナーへ。1曲目は中国で有名な「草原情歌」を前半は中国語で、後半は日本語で披露。昨年、城南海は中国の南京と上海でこの曲を歌い、現地のオーディエンスから大きな反響を得ました。今回のライヴでは、それぞれの言語が持つ響きの美しさを表現。目を閉じてその音に耳を澄ましていると、目の前に広大な草原の光景が浮かぶよう。さらにユリアーナ・シャノーの「もう一度おしえてほしい」。こちらは、城南海がデビュー前の修行時代に歌っていたという楽曲。当時、彼女は大切な祖母を亡くし、天国へ向けての思いを込めながら歌っていたそうです。この曲の主人公は別れの悲しさを抱きつつも、力強く前に進んでいくことを誓っていて、シンガーとして歩き始めた城南海を支えていた一曲であることを感じました。

城南海は「ウタアシビを1年ぶりにできて、すごくうれしいです。私は14歳で奄美大島を出たのですが、島を出てから海の美しさ、人の温かさといったことに改めて気づきました。シマ唄は鹿児島に行ってから始めて、大学の卒論ではシマ唄のことを書きました。なぜなら、もっと島の心を伝えたいと思ったんです。今回のライヴでは(「ヨイスラ節」を)アカペラで唄い始めたり、デビュー前の課題曲(「もう一度おしえてほしい」)を歌ったりしたのは、自分のルーツを大切にしたい、という思いからなんです」と自らの思いを語ります。

「それではここで、2曲続けて歌いましょう」。美しい星空、月明かり…と歌の舞台が脳裏に自然と描けるバラード曲「十六夜」。そしてテレビアニメ「オズマ」のエンディング曲に起用された「ウタゴエ」。人の絆を歌ったこの曲を、ほとばしる感情を解き放つように、体中の力を込めて熱唱します。

「最後になってきたんですけれど、最後も盛り上がっていきましょう!」。ラストスパートはライヴで初披露となる、BS朝日『市長はムコ殿』の主題歌「幸せの種」。軽快なメロディにのって、ステージをアクティブに動き回ります。そして本編最後の曲はライブでは定番の「虹色輪舞曲」(リリース未定)。明るい曲調に合せて、会場からは手拍子が起こります。ピアノとパーカッションとの掛け合いもどんどんヒートアップしていき、盛り上がりは最高潮に。

城南海が一旦ステージから下がると、オーディエンスからは大きな「みなみ」コールが。その声援に応えて、アンコールへ。「今日は私の大事な曲を歌いたいと思います。この曲は上京してきて、初めてコンサートに行ったのがケルティック・ウーマンだったんですけれど、アイルランドの音楽の響きと奄美の響きがすごく似ている気がしたんです。アイルランドと日本は遠く離れているのに、懐かしさを感じて。それで「You Raise Me Up」の原曲、「ロンドンデリーの歌」に詞をつけてみようと思い、日本語で歌詞をつけました(1stアルバム収録の「紅」)。今日はデビュー前から弾いていた、城南海ヴァージョンで披露します」。自らピアノを弾き、1人で「紅」の世界を表現する彼女。シンとした静けさのなか、憂いを帯びた声が広がっていきます。城南海の歌声には、楽曲が抱えている歴史や背景、込められた思いといった多くのものがのせられていて、私たちの心に直接染み込んでいくのです。

ライヴを締めくくったのは、城南海のデビュー曲で、6月20日に再リリースが決定した「アイツムギ」。「この前奄美大島に帰って、初めて大島紬を織ったんですが、本当に気の遠くなる作業だということが分かりました。私は一枚の布のように、みんなとつながっていければと思っています。皆さんの大切なものを思い浮かべて聴いてください」。彼女のルーツである奄美大島の大島紬と“愛を紡ぐ”ということがテーマになったこの曲。以前、大島紬はどんな年齢の人でも、その年齢に合った着方ができる、という話を聞いたことがあります「アイツムギ」は普遍的なメッセージを発信する楽曲であるため、城南海が19歳でデビューした当時はもちろん、これから彼女が歳を重ねても、ずっと輝き続ける曲でしょう。それはまさに、大島紬の存在そのもの。城南海のシンガーとしてのスタート曲が、彼女のルーツといかに密接なのか、ということを改めて感じました。

「皆さん、今日は本当にありがっさまりょーた!」と、オーディエンスからの歓声に元気に応える城南海。今回のライヴは新曲の披露、通常の「ウタアシビ」ライヴで行われるシマ唄・カヴァー曲コーナーに加え、デビュー前に歌っていた楽曲を歌ったり、当時の弾き語りを再現したりするなど、彼女のシンガーとしての「原点」を見つめ直すステージだったと感じました。その出発点をしっかりと確認し、さらに新たな一歩を踏み出している城南海。その向かう先に見えるものはなにか。次の展開に、また期待が高まります。

ライヴ終了後、城南海さんに今回のライヴに対する思い、手ごたえ等についてお伺いしました。

アレンジも編成も変えてチャレンジしたライヴでした

――今回、「原点に返るライヴにしたい」と思ったのはどんな理由からなのでしょうか?

城南海:大学の卒業論文でシマ唄について書くにあたって、1年間奄美のことを調べてみましたが、卒論を書く前と書いた後ではいろいろ考えが変わり、もっと自分のやりたいことが見えてきたんです。奄美大島の人たちがシマ唄で唄い継いでいる気持ちや風景といったものを、自分の唄でいろいろな形で表現していきたい、と思いまして。だから今回はシマ唄をアカペラでやったり、1番民族色が強い「太陽とかくれんぼ」を最初に持ってきたりして。「紅」をデビュー前にやっていた自分ヴァージョンでやらせてもらったのも、そういった想いからです。

――「紅」は城さんの弾き語りでしたね。

城南海:デビュー前に1年くらいライヴ修行をしていたのですが、さきほどのライヴのように自分でピアノを弾きながら歌っていたんです。1stアルバム「加那-イトシキヒトヨ-」を作るときには武部聡志さんがアレンジを加えて、すてきに仕上げてくださいました。私が弾いていたヴァージョンでは、コードは3つくらいしか使っていないんです。

――今日はピアノとパーカッションというシンプルな編成でしたが、いかがでしたか?

城南海:今までピアノとパーカッションのみ、という試みをしたことがなかったんです。編成が違うからアレンジし直す必要があって、今回はリハーサルを3日取りました。「太陽とかくれんぼ」などは、ピアノだけだと明るい感じになるので、私が「マイナーにしましょう」と言ってコードを変えたりして。みんなで1曲1曲「ここはこうしよう」と話し合い、新しいアレンジを作るような気持ちでやりましたね。あと、パーカッションはいつもカホンだったんですけれど、今回はジャンベにしていただいて。カホンはポップス寄りの音なんですけれど、ジャンベは民族色が出る楽器なんです。今回は私がMCでお話したように、「島の感じをもっと出したい」というのがありまして。だからいつも聴いている曲も、今回は民族色が強く、新鮮に聴いていただけたのではないか、と思います。ジャンベは倍音を出しますし、ピアノもグランドピアノだったので、全体的に波がある音が出たのではないでしょうか。

――今回のライヴを見ていて、自然の息吹を強く感じたのですが、それは楽器の選択によるところも大きいのですね。

城南海:楽器によって全然音も違うし、曲の感じもガラッと変わるし、今回特にアレンジも編成も変えているから、いろいろチャレンジしたライヴだったと思います。皆さんに楽しんでいただくことができていれば、うれしいですね。

――城さんのチャレンジがとても伝わるライヴでした! ライヴ終了直後のお疲れの所、ありがとうございました。

城南海ニューシングル「アイツムギ/幸せの種」
2012年6月20日発売
PCCA.70338 \1,000(税込)
1.アイツムギ 作詞/作曲:川村結花/編曲:上杉洋史
2.幸せの種 作詞:Mari-Joe/作曲/編曲:安岡洋一郎
3.アイツムギ (カラオケ) 作詞/作曲:川村結花/編曲:上杉洋史
4.幸せの種 (カラオケ) 作詞:Mari-Joe/作曲/編曲:安岡洋一郎
※<ウタアシビ2012春>でも最後を飾ったデビュー曲でもある「アイツムギ」の、再リリースが決定。両A面のカップリング曲は、BS朝日のドラマ『市長はムコ殿』の主題歌「幸せの種」。心弾むメロディでこちらもライブを盛り上げた1曲です。

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