ベスタクスが新製品発表会開催、iPhone/iPad用インターフェイスV-MIDIは7月25日発売

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ベスタクスは、6月19日に新製品発表会を開催、DJコントローラー「VCI-380」、ITCH専用プラグインソフトウェア「serato VIDEO」、iOSデバイス用インターフェイス「V-MIDI」などを紹介した。

今回の発表会は2012年上半期の新製品の説明を中心に行われた。ターンテーブルやDJミキサー、ヘッドフォンやスピーカーなど多彩な製品をラインナップするベスタクスだが、今回の新製品はパソコンおよびiOSデバイス向けのコントローラー、インターフェイスがメインとなっている。新製品の説明とあわせ、多彩なデモンストレーションも盛り込んだ発表会となった。

最初に登壇したのは代表取締役の中間俊秀氏。「音楽の楽しみ方が時代を追うごとに多様化し、歌う、演奏するから原音に忠実に鑑賞して楽しむリスニングへ、さらに80年台後半には音楽のデータをエディット-編集して楽しむというDJというカテゴリでリミックスなどのいろんな文化が広がってきた。そして、すべてのデータがデジタル化した現在、デジタルが最も得意とする編集が誰でもカンタンに楽しめるようになった。音楽だけでなく動画も含めてエディットして遊ぼう、楽しもうという流れが6年くらい前に「CONTROLLERISM(コントローラーイズム)」という名前でムーブメントが盛り上がってきた。それはDJだけでなく、アーティスト、プロデューサー、クリエイターがいろんな形で発表して広めてきた。そして、今はさらに大きく広がり方をしている。最終的にはタブレットやスマートフォンのユーザーが潜在的ユーザーとなり、いろんなデータを自然にエディットして遊ぶ、楽しむようになっている。そして、今日は、デジタルデータをエディットする機能を高いレベルですべて盛り込んで、いろんな形でエディットする楽しさを実現できる機種を今回の5モデルで発表している」と新製品を紹介。

これら製品が同社最初のコントローラーVCI-100(2005年)から9モデル目となることに触れ、「今回のモデル群は最終型に近い機能を持っている。いろんなクリエイターにいろんな形でプレイし、その多様性を見てもらいたい」とした。また、「最終型に近い製品」としながらも「最終型ではあるが、これで終わりではなく、これら多機能の中から機能が選択、最適化され、次の世代では、音楽を使って遊ぶ人たちが使うコントローラーをどう作っていくか。おもちゃではなく、本気でそれを楽しめるものを作ったときにまた新しい展開が出てくる。それらの新製品は今年の下半期で発表したい」とした。

続いて、新製品の説明とデモンストレーション。まず「CONTROLLERISM」という同社製品で掲げられているコンセプトについて紹介された。この言葉はMOLDOVERというアーティストにより2006年に生み出された。2007年には同社初となるプロフェッショナル向けのDJコントローラーとしてVCI-100がリリースされ、「CONTROLLERISM」マーケットに急速に浸透。そして、2008年にDJのEAN GOLDENが登場し、同マーケットの拡大に貢献。VCI-100のボタンをカスタムしたり、あらゆるMIDIマッピングを駆使して型破りなプレイを行なってきた。そんな彼の影響を受け、CONTROLLERISMという世界が広がっているとした。VCI-100の成功をもって、コントローラーマーケットの拡大に努めてきたベスタクス。VCI-300では全世界で3万台、入門者向けのSpinは世界で6万台を超えるヒットを記録。そして、今回の製品はCONTROLLERISMというコンセプトにのっとった製品となっているとした。


▲CONTROLLERISMを生み出したMOLDOVER(写真左)。ベスタクス初のプロ向けDJコントローラーVCI-100(写真中央)。同社と共同開発も行うEAN GOLDEN(写真右)。


▲同社のヒット作VCI-300とSpin(写真左)、そして今回の2012年新製品(写真右)。

●パッドで多彩なパフォーマンスが可能なVCI-380

5月末に発売されたばかりの「VCI-380」は、「VCI-300」の後継モデルで、シンプルかつコンパクトというコンセプトはそのままに、より強力で確信的な新機能を搭載する。無駄を省き、必要を際立たせたレイアウトデザインを採用。ユーザープレイアビリティを追求、現場での使用を考慮し大きすぎず小さ過ぎない最適なサイズに仕上げている。特徴としてまず挙げられたのがパッド。トリガーとしてだけでなく、押し込んだ際の強弱を検出するアフタータッチ対応により、PAD FXという新機能を可能にしている。

また、JOGホイールはVCI-300よりもひとまわり大きく、再生位置が視認できるインジケーターも搭載。さらに回転トルクの調整も前作同様に可能だ。また、DSPデジタルミキサー内蔵により、スタンドアローンミキサーとして、コンピューターを使わないDJセットにも対応可能。3バンドのEQとフィルター搭載で、ラインとPHONO各2系統コントロールできる点もアピール。


▲展示スペースではターンテーブルと組み合わせてセットアップされていたVCI-380。スタンドアローンミキサー内蔵で外部機器との連携にも対応。


▲音同様に映像のスクラッチなどのプレイを可能にするプラグインSerato VIDEOもデモ。
このほか、Serato ITCH使用時の5つのパフォーマンスモードについても紹介。パッドによるキューポイントの設定(1曲あたり8つのキューポイント)、曲を分割して新しいビートが組めるスライス、パッドを離しても元の曲のビートが崩れないオートループやロールなどさまざまなパフォーマンスを実演。さらにパッドによるサンプルの再生、PAD Fxによるエフェクト効果のコントロールなど多彩なプレイを見せつけた。

そして、Serato ITCHおよびScratch Live用のプラグインソフトとして2チャンネルのビデオコントロールを可能にする、パッケージ販売がスタートしたばかりのSerato VIDEOによるについても紹介。音楽データと同様に、映像が入ったファイルもスクラッチや、各種パフォーマンスモードの使用したプレイが可能。音だけでなく映像を交え、パフォーマンススタイルが無限に拡大できることが示された。

●ベスタクス製品の高音質を支えるUSBオーディオ技術

続いて紹介されたのが「Vestax Technology」。ベスタクスが最近の新製品でうたっている高音質設計、USBオーディオ技術について解説された。ポイントはアシンクロナス伝送とビットパーフェクトという技術。

一般的なUSBオーディオ製品は、コンピュータ本体のクロックを利用して信号の同期を図るシンクロナス伝送が用いられているため、ジッターやノイズといった外部干渉を受けやすい。一方、ベスタクス製品が採用しているアシンクロナス伝送では、コンピュータのクロックではなく、ハードウェア本体のクロックを利用することで、外部干渉を極めて低く抑えているとした。

また、ビットパーフェクトは「100%忠実再生」を意味するもので、アシンクロナス伝送方式によりジッターやノイズ、リサンプリングといった外部干渉を少なくすることで、アーティストが本来作った原音を忠実に再生できると説明。これら2点の要素によりベスタクスの高音質設計が成り立っているとし、世界中から賞賛の声を得ていると紹介された。


▲Vestax製品の高音質設計を支えるアシンクロナス伝送とビットパーフェクトの概念図。

●VCI-400はアップデートでスタンドアローンミキサー搭載に

2011年末発売の4チャンネルDJコントローラー「VCI-400」についてはファームウェアのアップデートが発表された。6月25日に無償提供が開始されるスタンドアローンミキサーファームウェアにより、VCI-400はバージョン2として生まれ変わる。これにより、VCI-380同様本体内部にDSPデジタルミキサーを内蔵することになり、2系統のライン入力を追加可能になる。Traktor Proを使用すれば、最大で6デッキ分のコントロールができるようになることが示された。


▲VCI-400はアップデートで、ターンテーブルを加えるなどより幅広いセットアップに対応。

また、VCI-380とVCI-400の違いについても解説がなされた。まず、VCI-380はSerato ITCHに対応したコントローラーであるのに対して、VCI-400はソフトウェアを限定しないユニバーサルコントローラーであること。また、厳選されたコントロール機能だけを詰め込んだのがVCI-380、対するVCI-400は200種類以上のマッピングが可能。すなわち、VCI-380が強力なパフォーマンスコントローラーであるのに対し、VCI-400はプレイヤーが頭に思い描いたプレイスタイルを実現するのに最適なコントローラーであるとした。

●EAN GOLDENによるオリジナルファームウェア搭載のVCI-400SE

続いて紹介された「VCI-400SE」は、DJ/プロデューサーのEAN GOLDENのアイディアを基に作られたオリジナルのファームウェアを搭載したモデル。デザインは彼が主催するDJ TECH TOOLS仕様のカラーリングが施され、TRAKTOR専用のMIDIマッピングファイルが提供される。ファームウェアは、「今までに経験したことがない音を遊びつくすことができる」もので、たとえば、1つのボタン操作で3種以上のパラメーターを同時に切り替えたり、時間差でパラメーターを切り替えるといった特殊なマッピングが可能となっている。


▲ブルーのノブなどオリジナルのカラーリングが施されたVCI-400SE。TRAKTORによる複数のエフェクトを組み合わせたプレイをデモ。

●iOSデバイス用インターフェイスV-MIDIは7月25日発売


▲iPadとSpinによるデモ。V-MIDIとSpinは付属の専用ケーブルで接続、iPadとはドックケーブルで接続、さらにV-MIDIにはACアダプターが接続されている。iPhone、iPod touchにも対応。
3月に発表され、発売時期未定とされていたiOSデバイス用のインターフェイス「V-MIDI」については、7月25日発売予定であることが発表された。この「V-MIDI」は、iPhone/iPadのタッチパネルでの操作に満足できない人に、慣れ親しんだハードウェアでの操作環境を提供するインターフェイス。Apple純正のiPad Camera Connection Kitと異なりiPhoneでも利用できるほか、さまざまな利点を備えた製品だ。

基本機能としては、USBホスト機能の搭載により一般的なUSB MIDIキーボードやパッドコントローラーの接続が可能。CoreMIDI対応のMIDIアプリケーションのコントロールができる。また、内部には高音質のヘッドフォンアンプを内蔵。iOSデバイスからのオーディオ信号を内部の独自のアンプ回路を通してよりパワフルなサウンドで出力する(V-MIDI本体からの音声出力はiPad 2および新iPadのみ)。

コネクタにはヘッドフォンだけでなくライン出力としても利用可能だ。付属のスプリットキューケーブルにより、たとえば、同社のDJコントローラーSpinとalgoriddimのDJアプリdjayを組み合わせて使用した場合には、スピーカーアウトとヘッドフォンアウトをスプリットして使用することが可能になる。また、iOSデバイスとUSB機器の両方に電源を供給することも可能なので、長時間のプレイでもバッテリを気にする必要がないのもうれしいところ。また、MIDIは入力だけでなく出力にも対応、状態はLEDで確認できるようになっている。


▲V-MIDI本体の左がACアダプタのコネクタ、正面手前がUSBホスト(ミニDINコネクタで、付属のUSB変換ケーブルで接続)とヘッドフォン出力(写真左)。LEDインジケーターは電源/iOS MIDI/HARDWARE MIDIの3つ、ロゴ側のコネクタはドック接続用。

各製品の説明のあとは、DJらによるデモンストレーションも披露された。最初に登場したDJ Top Billはパッドによるサンプルのプレイなど、VCI-380ならではのパフォーマンスをたくみに繰り出す。VCI-380については、「ついに出たターンテーブルを超えるようなパソコンの音をコントロールできる機材」とコメント。「サンプルプレイとターンテーブルのパフォーマンスを合わせたものができる機材」とし、コンパクトさ、反応のよさをメリットとして挙げた。


▲会場内には実際に製品に触れられるハンズオンスペースも。写真左はアフタータッチ対応のパッドを備えたUSB MIDIコントローラー「PAD-One」。V-MIDIとともに展示。写真右はMac用エントリー向けシステムとして登場し、iPadにも対応した「Spin」。


▲オンキヨーとのコラボレーションによる製品も。写真左はオンキヨー製タブレットPCとDJコントローラーのVestax Typhoonをセットにした「TYPHOON TABLET-PACK」。写真右はオンキヨー製ノートPCとスピーカー、イヤホンをセットにした「TYPHOON PC PACK」。


▲VCI-380は、2台のターンテーブルとともに展示(写真左)。ステージ上にはベスタクスの歴代モデルがずらり。

◆VCI-380 製品詳細ページ
◆VCI-400SE 製品詳細ページ
◆VCI-400 製品詳細ページ
◆V-MIDI 製品詳細ページ
◆ベスタクス
◆BARKS 楽器チャンネル
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