【インタビュー】石月努、FANATIC◇CRISIS解散から7年を経て、再び音楽シーンへ

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2005年5月14日、FANATIC◇CRISISは13年の歴史に終止符を打ち、フロントマンを務める石月努は、音楽の道から離れ、デザイン、アートの分野へと道を進めた。それから7年、石月努が再び音楽シーンへ帰ってきた。転機を促すきっかけは、2011年の東日本大震災にあったという。

◆「365の奇跡」PV映像

──当時、ふたたび音楽の道へ戻る選択肢はあったのでしょうか。

石月努:自分はあまり器用なタイプではないので、中途半端なことはしたくなかったことから、以前から「本気でやってみたいな」と思っていたアパレルやジュエリー制作、空間デザインからアートの分野へ気持ちを注ぎ込もうと決めました。それにFANATIC◇CRISISは、僕が10代の頃から青春のすべてを注ぎ込み活動を続けてきたバンドだったからこそ、すごく思い入れもありました。そのバンドを終えたことでの喪失撼も正直あったんですね。だからこそ、中途半端な気持ちで音楽活動をしたくはない気持ちが強かったことから、あの頃は「ふたたび音楽活動を」という発想自体にも至れなかったどころか、実際に解散以降は、まともに音楽さえ聴けませんでした。それくらい音楽の世界へどっぷり浸っていたからこそ、気持ちの整理をつけるうえでも相応の時間が必要だったんだと思います。

──人生の転換期ですね。

石月努:やるからには中途半端なことはしたくなかったし。これまでの経験の延長ではなく、まったくゼロからスタートしたかった。それくらい、過去の延長ではなく、石附努としてゼロから始めたかったんですよね。その表現方法の中には、自分の感性のままに描き、作りあげるアートワークもありますけど。活動の軸となった商業デザインを行うということは、クライアントさんがあり、そのオーダーを形にしていくのが何よりも大切なこと。オーダージュエリーであれば、その依頼主の希望に沿っていくのが求められること。そういう1対1の関係の中で物を作っていくことが、自分にとってはとても新鮮でした。

──アートの分野で実績を築きあげてきた今、何故ふたたび音楽活動を始めたのでしょうか。

石月努:自分の意識を見直し、考え直す大きなきっかけになったのが、2011年に起こった東日本大震災であり、その復興支援のため現地に足を運んだことでした。あのときには、人間の知恵や力ではどうしようも出来ない自然の驚異や、震災後の地で住む人たちの姿に触れ、自分自身をすごく見つめ直すきっかけを与えられたんですね。その当時は、「アートという力で人を明るい気持ちにさせられないか?!」など、いろんなことを考えました。そのときに、「自分が発信したい想いをより多くの人たちの心へ直接届けていくうえでは、やはり歌の力があってこそ」ということを考え始めてゆく最初のきっかけが、そこで生まれました。それ以降、改めて「今の自分はどういう風に音楽に対しての想いがあり、どういう風に音楽へ向き合っていきたいのか」と考え続けていく中、次第に心の整理もついてきました。ただし、やるからには本気でやる覚悟も必要でした。

──結果的に、アート/デザインの仕事と音楽活動との両立という形になったわけですね。

石月努:そうですね。音楽活動を再開するから、それまでやっていたデザインの活動は辞めます、ではなく。むしろ、アートやデザインの仕事をしてきたからこそ、改めて純粋に、正直な気持ちで音楽へ向き合っていける自分自身にもなれた。いわゆる商業ベースで行う音楽活動ではなく、「人の心をより豊かにするための音楽でありたい」という意識のエネルギーが僕の根底にはあって、そこの部分へ改めて立ち返れたからこそ、自分自身が解散以降7年間まったく触れていなかった歌というものを改めて好きになれたと言うか。「歌の力って、やっぱすごいな」「歌っていいな」と純粋に思える自分がいました。その意識になれたことがすごく大きなことだったなと思うんですよね。

──8月6日、ニコニコ生放送で「音楽活動の再開」を報告したときのリアクションもすごかったですね。

石月努:この7年間の僕の活動を見ていたら、ふたたび僕が音楽を演るなんて誰も思っていなかったんじゃないかな。そんな僕の音楽活動の再開という言葉を、あんなにもたくさんの方々が待っててくださっていたことが、自分の中で間違いなく励みになりました。しかも、デビュー日にそれを一つのけじめとして発表できたことも良かったと思っています。デザインやアートに触れ続けているからこそ、歌やライブでしか表現できないものがあることは実感しています。これからは、歌やライブを通しても、人の心や魂の近いところへ訴えかけていきたいですね。

──第1弾は、9月17日にオフィシャルWEBサイトにて通販限定販売になるDVD SINGLE「365の奇跡」ですね。

石月努:今の音楽の流行りとかまったくわかんないんだけど。でも、僕だって今の時代の中で生活しているように、世の中の雰囲気を感じて生きている。「今の時代の中で僕が感じている音楽」であるし、「5年後も、10年後に聴いても色褪せない音楽」として生まれたと思ってます。そういう意味では、「努っぽい」と言われるのも納得なんでしょうね。

──身近な人に想いを届けるように語りかけた内容ですが、詰め込んだ想いはグローバルなものですね。

石月努:365日という日々の時間は、世界のみんなへ平等にあるものじゃないですか。きっとその中には、喜びも悲しみも同じよう平等にあるんだと思います。でも、それに気付けるはずの目線が擦れてしまうと、絶対に見つけ出せないものになってしまう。とくに「誰かがこうだから、わたしもこうしなきゃ」という目線になってしまうと、その目線はどうしても振れてしまう。僕には僕の目線があるし、AさんにはAさんの目線があるわけで、それぞれの中で想い、感じる幸せの価値観だって違うものなはずなんです。物事は、自分の視点次第でまったく違うものになっていく。そういうニュアンスを、この歌から感じてもらえたら嬉しいなぁと思ってる。

──今回は、2,106(努)枚限定販売だとか。

石月努:それは自分のわがままでもあるんですけど。あまり時間を空けずにみなさんの元へ届けたかったことから、今回は流通を使わずにWEBを通した通販という方法を取ったんです。枚数限定に関しても、アマチュア時代のFANATIC◇CRISISがやっていたときのような遊び心を持ったこともやりたいと思い、自分の名前と数字をひっかけてしまいました。むしろそれくらい今は、フットワーク軽く遊んでいける自分がいるってことじゃないですかね。

──2013年1月27日には、渋谷公会堂を舞台にソロ1発目となるコンサート<TSUTOMU ISHIZUKI the FIRST LIVE 2013 遠い日の約束~たとえ、鬼が笑っても~>が開催となりますね。

石月努:渋谷公会堂という場所を選んだのは、FANATIC◇CRISISのラスト・インディーズの会場が渋谷公会堂だったことから、「自分がリ・スタートしていく場所としては、すごくいい場所だなー」ということが大きいです。場所は先に決まりましたけど。実際に演奏する曲や、どういう編成で誰と一緒に演るか?などは、今から考える状態です。でも、絶対にいい形になると信じています。もちろん、新しい曲たちも、何らかの形で届けたいとは思っています。

──デザイン/アートと音楽の並行活動は、物理的にも大変じゃないですか?

石月努:大変なんですけど、すごく刺激的でもありますよね。自分の中で「音楽を演る」という発想自体が、2011年まではまったくなかったんで。今こうやって音楽へ向き合っていること自体がすごく新鮮な気持ちだし。「その気持ちは大事なことだなー」と改めて思ってます。

──デザインやアートと同様に、音楽もずっと長く続けていくつもりなんですよね。

石月努:ここで音楽活動を宣言したということは、もう音楽活動を封印することは絶対にないと思います。自分が生きてる以上、音楽やアートとはズッと向き合っていくし、付き合ってもいく。とにかくクリエイティブな作業すべてに於いて、石月努(石附努)としての活動は、僕が生きてる限りすっとあるものだと思っていますし。つねに自分自身を更新しながら、新しい自分であり続けていきたいと思っています。


TEXT:長澤智典
編集:BARSK編集部

◆石月努オフィシャルサイト
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