【インタビュー】グレン・ヒューズ、ジョン・ロード/ゲイリー・ムーア/ロニー・ジェイムズ・ディオとの出会い【後篇】

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『マシン・ヘッド・トリビュート:リ・マシンド』は、ディープ・パープルが1972年に発表した『マシン・ヘッド』の40周年を祝うセレブレーション・アルバムであるのと同時に、2012年7月16日に亡くなったキーボード奏者ジョン・ロードに捧げる鎮魂歌でもある。

◆グレン・ヒューズ画像

第3期ディープ・パープルのベーシスト兼シンガーであり、自ら『リ・マシンド』に「メイビー・アイム・ア・レオ」で参加しているグレン・ヒューズは、ジョン・ロードとの作業について、こう語っている。

「ジョンと初めて一緒にやったのは『紫の炎』(1974)だった。このアルバムを作っている時、新加入のデヴィッド(カヴァーデイル)と私は以前からのメンバーと急速に友情を育んでいたけれど、それぞれが独自のアイデンティティを持ったミュージシャン達だったから、デンジャラスなアルバムとなった。私自身は、続く『嵐の使者』(1974)の方が好きなんだ。よりメロディアスでソウルフルだからね」──グレン・ヒューズ

ジョンとのコラボレーションで、最も印象に残っているものとして、グレンは『カム・テイスト・ザ・バンド』(1975)の「ディス・タイム・アラウンド」を挙げている。

「1975年8月、ミュンヘンでのセッションだった。深夜の午前2時、ジョンがピアノに座って、私がマイナー9thのメロディを口ずさんでいた。プロデューサーのマーティン・バーチもいて、カクテルで一杯やりながら作業していたんだ。まるで曲が自分を形作ったように、5分ぐらいで完成したよ。レコーディングも6時間しかかからなかった。このように音楽の女神が訪れることは、滅多にない。ジョンとの共演で、最も誇りにする瞬間だね」

「ジョンと最後に共演したのは2年前、ロンドンのO2アリーナで行われた幼児虐待ベネフィット・コンサート<チャイルドライン>でのことだった。私が短いセットをやって、「ユー・キープ・オン・ムーヴィング」で彼がゲスト参加したんだ。彼と私の間には、お互いへの敬意と愛情があった。彼がいなくなる前に、最後に一緒にプレイすることが出来て本当に良かった」

ジョン・ロードに先駆けて、グレンと縁の深い2人のミュージシャンも亡くなっている。2011年2月6日に亡くなったゲイリー・ムーア、そして2010年5月16日に世を去ったロニー・ジェイムズ・ディオだ。

グレンとゲイリーの関係は、波乱に満ちたものだった。

「1970年代後半、急激に親しくなったんだ。ゲイリーがシン・リジィのツアーを途中で離脱した時、ロサンゼルスの私の家でかくまったこともある。その後、なかなか一緒に活動できなかったけど、『ラン・フォー・カヴァー』(1985)で共演することになった。でも当時の私は酒を飲んでいたし、不健康な生活をしていた。それで数曲で歌ったのみで、クビになったんだ」

その後、二人はずっと疎遠になっていたが1999年、偶然に和解を果たすことになる。

「私はストックホルムに住んでいた。ある時、私がいるレストランのバーにゲイリーが来たんだ。店の人から私がいると聞いて、「グレン・ヒューズはどこだ?」って見回して、私が近寄っていくと、すごく喜んでいたよ。ほとんど泣きそうなほどだった。抱きあって、いろんなことを話して、仲直りしたんだ。いつか私のアルバムにゲスト参加してもらうつもりだったけど、それは実現しなかった」

「最後に会ったのは彼が亡くなる3ヶ月前、オスロからロンドンに向かう飛行機の中だった。彼は新しいガールフレンドと一緒にいたし、あまり長話も出来なかった。ちょっと立ち話をして、また会おうと言って別れたんだ」

グレンとロニーは同じバンドで活動したことこそないが、その交流は40年近くにおよぶものだった。

「ロニーと初めて会ったのは、『紫の炎』ツアーだった。アメリカ・ツアーの初日、デトロイトだったと思う。ロニーはエルフというバンドでやっていて、パープルの前座だった。ステージ袖から見ていて、「身体は小さいのに、何て声のでかい男なんだ!」と驚いたのを覚えている。それから彼とは友達になって、インド料理店によく連れていった。彼はすっかりインド料理にはまって、世界のどこに行っても食べるようになった。朝ごはんにカレーを食べていたほどだよ(笑)」

「ロニーが亡くなった時、私はイタリアにいた。彼を看取ることが出来なかったのは残念だ。出来れば最後に、彼にさよならを言いたかったよ」

数々の友との別れを経ながら、グレン・ヒューズは前進を続けていく。『リ・マシンド』に加えて、10月にはブラック・カントリー・コミュニオンとしての3作目のアルバム『Afterglow(原題)』を発表。さらに「まだ詳細は明かせない」と言いながら、年内にはビッグネームと共演するスーパーグループの陣容が明らかになる予定だ。このプロジェクトで彼は、日本を含む大規模なワールド・ツアーを行うと宣言している。

還暦を過ぎて、今なお精力的に活動を行うグレンのエネルギー源は何か?と問われて、彼は「愛」だと答える。

「20年前、私はすべての悪癖を捨てて、生まれ変わった。それ以来、不義理をしてしまった古い友人たちに埋め合わせをしようとしてきたし、新しい友人たちには誠実であろうとしてきた。私には人間に対する愛、そして音楽に対する愛がある。私のことをどう呼んでも構わないけど、グレン・ヒューズが愛の人でないとは、誰にも言えないだろう」

インタビュアー:山崎智之

『ディープ・パープル マシン・ヘッド・トリビュート:リ・マシンド』
9月5日 日本先行発売
初回限定盤 CD+DVD 3,500円
通常盤CD 2,500円
【CD収録予定曲】
1.スモーク・オン・ザ・ウォーター
カルロス・サンタナ【カルロス・サンタナ(Lead Guitar)/ジャコビー・シャディックス(Lead Vocal)/デニス・チェンバース(Drums)/トニー・ アンソニー(Rhythm Guitar)/ベニー・リートヴェルド(Bass)/カール・ペラッゾ(Percussion and Congas)/フレディ・ラベル(Keyboards)/ハワード・ベンソン(Additional Keyboards and Programming)
2.ハイウェイ・スター
チキンフット【サミー・ヘイガー(Vocals)/ジョー・サトリアーニ(Guitar)/マイケル・アンソニー(Bass Guitar/Vocals)/チャド・スミス(Drums)】
3.メイビー・アイム・ア・レオ
グレン・ヒューズ/チャド・スミス【グレン・ヒューズ(Vocals & Bass Guitar)/チャド・スミス(Drums)/ルイス・マルドナド(Guitar)】
4.ピクチャーズ・オブ・ホーム
ブラック・レーベル・ソサイアティ(ザック・ワイルド)【ザック・ワイルド(Guitar & Vocals)/ジョン DeServio (Bass Guitar)/チャド・スゼリガー(Drums)】
5.ネヴァー・ビフォア
キングス・オブ・カオス【ジョー・エリオット(Vocals) (デフ・レパード)/スティーヴ・スティーヴンス(Guitars)/ダフ・マッケイガン(Bass) (ガンズ・アンド・ローゼズ、ヴェルヴェット・リヴォルヴァー、ローデッド)/マット・ソーラム(Drums) (カルト、ガンズ・アンド・ローゼズ、ヴェルヴェット・リヴォルヴァー)ゲスト・ミュージシャン:アーラン・シェアーバウム(B3 organ, Wurlitzer)
6.スモーク・オン・ザ・ウォーター
ザ・フレーミング・リップス ゲスト・ヴォーカル:ギビー・ヘインズ
7.レイジー
ジミー・バーンズ・ウィズ・ジョー・ボナマッサ【ジミー・バーンズ(Vocal)/ジョー・ボナマッサ(Guitar (R))/ブラッド・ウィットフォード(Guitar (L))/アーラン・シェアーバウム(Organ)/マイケル・ローズ(Bass)/アントン・フィグ(Drums)】
8.スペース・トラッキン
アイアン・メイデン【ブルース・ディッキンソン(Vocal)/デイヴ・マーレイ(Guitar)/エイドリアン・スミス(Guitar)/ヤニック・ガーズ(Guitar)/スティーヴ・ハリス(Bass)/ニコ・マクブレイン(Drums)】
9.ブラインド・マン
メタリカ【ジェイムズ・ヘットフィールド(Guitar & Vocals)/ラーズ・ウルリッヒ(Drums)/カーク・ハメット(Guitar)/ロバート・トゥルージロ(Bass Guitar)】

初回限定盤ボーナスDVD(収録予定)
・「ハイウェイ・スター」チキン・フット ライヴ映像(約7分)
・「レイジー」ジミー・バーンズ、ジョー・ボナマッサ スタジオレコーディング映像(約9分)
・参加アーティストらによるインタビューやレコーディング風景を収録したメイキング映像(約26分):ラーズ・ウルリッヒ(メタリカ)/カーク・ハメット(メタリカ)/ジェイムズ・ヘットフィールド(メタリカ)/ジミー・バーンズ/ジョー・ボナマッサ/ジョー・サトリアーニ(チキンフット)/チャド・スミス/グレン・ヒューズ/ザック・ワイルド/ジョン・ディサルヴォ/ジョー・エリオット/マット・ソーラム/カルロス・サンタナ/ジャコビー・シャディックス/*スティーヴ・ルカサー/*マーク・トレモンティ(クリード &アルター・ブリッジ)/*マイルズ・ケネディ(アルター・ブリッジ)/*スティール・パンサー


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