【インタビュー】ワイルド・ナッシング、「1980年代UKインディ・ポップにすごく惹かれる」

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9月12日、ワイルド・ナッシングのニューアルバム『ノクターン』がリリースとなる。ワイルド・ナッシングはアメリカのポップ・バンドだ。ただ、バンドと言ってもジャック・テイタムしか在籍していないワンマン・バンドである。

◆ワイルド・ナッシング画像

テイタムにワイルド・ナッシングとは何かと尋ねると、彼は“矛盾”と答える。彼は矛盾の中で生きている。ワイルド・ナッシングは一人の男性によるポップ・バンドであるとよく言及される。実際、テイタムは曲を独りでスタジオで作っている。ただ、ツアーではバンドと一緒だ。二つのワイルド・ナッシングが存在するのだ。

ニュー・アルバム『ノクターン』について尋ねられると、テイタムはこのように語る。「僕がポップ・ミュージック好きであるということを皆に伝えるアルバムではないと思う。それよりは、僕の理想世界の中でポップ・ミュージックは何だったのか、またどうあるべきなのか、といった感覚を表現したアルバムだ」

『ノクターン』は、テイタムのポップ・ミュージックの理想世界の窓となるアルバムだ。2011年、ジョージアのサヴァナでアルバムの曲の大半は書かれた。これらの曲は、新しいワイルド・ナッシングの世界を語っているのだ。テイタムは、自分の存在意義を作り上げる為、まるで強迫観念を持ったように、ポップ・ミュージックに対してのヴィジョンをこのアルバムに詰め込んでいる。

──音楽を始めたきっかけは?

ワイルド・ナッシング:音楽を始めたのは10歳くらいの時。父がギターを弾いていたから、ギターを教えてもらって、自分の好きなバンドの曲を弾くようになって。で、10代の頃から自分で曲を作って、それをレコーディングするようになった。でも大学に入るまで、他の人とプレイすることはなかった。で、ワイルド・ナッシングを始めたのは、アルバムを出す半年ほど前だったよ」

──今作の制作はどのように始まったのですか?

ワイルド・ナッシング:まず曲を書くプロセスは前作とほとんど同じだった。今でも曲作りってパーソナルなひとりでやる作業なんだよ。今回も全部のパートを僕が書いている。ただ、今回のレコーディングはニューヨークのちゃんとしたスタジオを使ったから、そこは僕にとって新しかった。前のアルバムと一番違う部分はそこかな。それでプロダクションのクオリティが高くなったし、前作はドラムが全部プログラミングだったけど、今回は生ドラムもある。

──プロデューサーでもあるニコラス・ヴェルネスとのレコーディングはどうでしたか?

ワイルド・ナッシング:このレコードを一緒に作る相手としては、他にも何人かのプロデューサーと話をしたんだけど、ニコラスの人柄やプロセス全体への彼のアプローチが気に入ったんだよ。もともと会おうと思った最初の理由は、彼がブラッドフォード・コックス…ディアハンターやアトラス・サウンドでやってた仕事が好きだったからなんだ。プロデューサーにニコラスを迎えたことで、このアルバムは変わったと思う。ドラスティックに変化したわけじゃないけど、サウンドとしては絶対によくなったんじゃないかな」

──アルバムの制作にあたり、何か参考にしたアーティストや曲はありましたか?

ワイルド・ナッシング:生のストリングスを使った「シャドウ」では、スマッシング・パンプキンズのメロウな曲とかを参考にした。「トゥナイト・トゥナイト」みたいな曲には、いいストリングスのアレンジメントがあるからね。また、「ザ・ブルー・ドレス」や「カウンティング・デイズ」みたいに、前にはなかったちょっと金属的なサウンドの曲がいくつかあるけど、あれはある意味『ザ・ヘッド・オン・ザ・ドア』時代のザ・キュアーを参照している。

──ワイルド・ナッシングは1980年代のUKインディ・ポップから影響を受けていますが、その時代の音楽が持つ魅力とはなんでしょうか?

ワイルド・ナッシング:1980年代のUKインディ・ポップのプロダクションにすごく惹かれるんだよね。あと、あの時代の音楽には、すごく純粋な感触がある気がする。ある意味すごくシリアスなんだけど、同時にシリアスでもないっていう。ソングライターとして、キュアーにしてもスミスにしても、何故か僕にとってはすごくコネクトできるんだ。僕の音楽を好きな人も、ああいう音楽を聴いてる人、聴いたことがある人が多いと思う。だっていい音楽だから(笑)。

──ワイルド・ナッシングのサウンドはドリーム・ポップとも言われますが、そのことについてどう思いますか?

ワイルド・ナッシング:僕はあらゆるジャンルの音楽を聴くんだけどね…。まあ、ドリーム・ポップっていうと、僕にとっては音楽のひとつの説明の仕方って気がする。僕の音楽の全部がそこに当てはまるとは思わないけど、僕がやってることを説明する時の、ある意味表層的なタームって感じかな。別にそう呼ばれることに腹が立ったりはしないけどね。

──今のシーンの中で共感を持てるアーティストは?

ワイルド・ナッシング:やっぱり、キャプチャード・トラックス(ワイルド・ナッシングのUSのレーベル)のバンドかな。ビーチ・フォッセルズ、ミンクス、クラフト・スペルズ。みんな僕がやってることに似たフィーリングを持っていると思う。あとは、必ずしも彼らがやってることに自分が当てはまるとは思わないけど、ディアハンターは好きだし、アリエル・ピンクも好きだね。

──ワイルド・ナッシングの目標は?

ワイルド・ナッシング:大きな目標はないと思うな…。自分が誇りに思える音楽を作り続けるっていうことくらいで。どんな形でも、曲はずっと書き続けると思う。一番好きなことだし。とにかく、今の活動のスケールにも満足しているんだ。スタジオでレコーディングして、ツアーして…。大きなゴールってないんだよね。ゆっくり活動を続けて、起きることに対処して、それが自分のキャリアになればいいと思う。

──日本のファンに向けてメッセージを!

ワイルド・ナッシング:とにかく日本に行きたいんだ。別のどんなところよりも日本に行きたい。実は2012年に実現させたくて、会う人全員にプッシュしてるんだよ(笑)。2013年1月~2月っていう話も出てるんだけど、噂を流したくないから、ここでは言えない(笑)。まだ決まってないからね。とにかく日本のファンとコネクトできることには、ものすごくエキサイトしてるよ」

インタビュー:JACK TATUM
写真:Shawn Brackbill


『ノクターン』
2012年9月12日発売
YRCG-90080 2,300円(税込)
解説/歌詞/対訳付、日本盤ボーナス・トラック9曲収録、初回盤のみ特殊パッケージ(スリップケースによりジャケットのデザインを変更できる特殊仕様)
1.Shadow / シャドウ
2.Midnight Song / ミッドナイト・ソング
3.Nocturne / ノクターン
4.Through The Grass / スルー・ザ・グラス
5.Only Heather / オンリー・ヘザー
6.This Chain Won't Break / ディス・チェイン・ウォント・ブレイク
7.Disappear Always /ディサピアー・オールウェイズ
8.Paradise / パラダイス
9.Counting Days / カウンティング・デイズ
10.The Blue Dress / ザ・ブルー・ドレス
11.Rheya / レヤ
12.Feel You Now / フィール・ユー・ナウ *
13.Nowhere / ノーホェア *
14.Wait / ウェイト *
15.Golden Haze / ゴールデン・ヘイズ *
16.Quiet Hours / クワイエット・アワーズ *
17.Take Me In / テイク・ミー・イン *
18.Your Rabbit Feet / ユア・ラビット・フィート *
19.Asleep / アスリープ *
20.Vultures Like Lovers / ヴァルチャーズ・ライク・ラヴァーズ *
* Bonus Tracks for Japan

◆ワイルド・ナッシング・オフィシャルサイト
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