【ライブレポート】中村 中が伝える、生きる姿勢そのものの迫力

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9月15日(土)東京国際フォーラム ホールCにて「中村 中LIVE2012 聞こえる プレイボタンを押せ!」が開催された。

◆中村 中画像

4月にリリースした最新アルバム『聞こえる』を携えたアコースティック・ツアー<阿漕な旅2012~未来に宛てた手紙~>を、5月から7月にかけて行った中村 中だが、それに続く今回の東京国際フォーラム公演も、<聞こえる~プレイボタンを押せ!~>というタイトルが示すように、アルバム『聞こえる』に連動しているものだ。

とはいえ、本公演はギターとチェロの伊藤ハルトシ、キーボードの大坂孝之助というアコースティック・ツアーでもお馴染みの顔ぶれに加え、ドラムスに林久悦、ベースに林由恭という双子のリズム・セクションを迎えたバンド編成で構成され、中村の幅広い音楽性を存分に披露する意欲的かつ挑戦的な内容となっていた。

合唱曲「聞こえる」をピアノとチェロをバックに歌って幕を開けた本編は、「過去」「現在」「未来」の三部に分かれており、それぞれ衣装も変えるというコンセプチュアルな構成だ。

「平熱」を歌った後のMCでは、東日本大震災を経て普通であることの大切さを訴え、自らの体験も交えて語ったいじめの問題をテーマにした新曲「同級生」へと続く。その語り口は親しみやすいが、一転して「戦争を知らない僕らの戦争」では、真っ赤なライトに照らされながら戦場で負傷した兵士が憑依したかのように鬼気迫る形相で髪を振り乱し、客席を圧倒する。

だがその後の「未来」の部では、キラキラと輝くスパンコールの衣装に身を包み、ビートの効いたバンド・サウンドを連発。さらに「闇のまん中」は、打ち込みのダンス・ナンバーで、4人のプレイヤーは楽器の代わりに手にしたスポットライトで場内を照らす。その変幻自在の華やかさには、性別を超越したオーラを放つグラム・ロックの代名詞として一世を風靡した1970年代のデヴィッド・ボウイを連想させた。

メンバー紹介の際、中村がまだ27歳だということに気が付いた時も、改めて愕然となった。僕は二周りも年上であるにも関わらず、いつの間にか彼女が目上の人のような感覚になっていたのだ。なぜなら彼女の歌から伝わってくる人生観は、とても成熟した強さを感じるものだから。自分の生き方が明確に分かっている者ならではの濃度、いわば生きる姿勢そのものの迫力を、見事な歌唱力で伝えてくれるステージだった。

◆中村 中オフィシャルサイト
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