【ライブレポート】PENICILLIN、20年に及ぶ絆の証

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2012年4月、バンド結成20周年を記念してリリースされた『20th Anniversary Fan Selection Best DRAGON HEARTS』は、その名の通り、ファン選曲によるベストアルバムだった。オフィシャルサイト上で投票を実施、過去200曲以上にのぼる楽曲からセレクトされた上位15曲が収録されている。そして、<20th ANNIVERSARY TOUR 2012>と題して8月から開催中のツアーは、1992年2月に結成された彼らが、同アルバムを掲げて全国11ヶ所延べ12会場を廻る20周年記念公演である。

◆PENICILLIN画像

ツアー8本目となる東京キネマ倶楽部公演。ステージ上にはメンバーの機材が並べられている。いつものように中央台上にセッティングされたドラムセットのバスドラのヘッドには、アルバム(通常盤)のヴィジュアル・イメージがはめこまれていた。3人の手が絡み合う絵柄が意味するものは、意志をダイレクトにアルバムへ反映したファンとの“絆”、そして20年間のたゆまぬ継続的活動によってしか得ることのできないメンバー間の“絆”でもある。

開演時間の18:00をほんの少し廻ったところで場内が暗転した。この日のオープニングナンバーはベストアルバム収録曲にして、シングルナンバーとしては最新となる「Rosetta」(2010年発表)だった。のっけから轟音を響かせたステージに対して、フロアもそれをかき消さんばかりの歓声で応える。続けて「聖・MARIAN HURRICANE」(2001年発表)、「Quarter Doll」(1995年発表)といった具合に、さまざまな年代の楽曲たちが立て続けに演奏される。曲調も実にさまざまだ。PENICILLINほど変化に富んだ楽曲を持ち合わせていながら、変わらぬ自分たちらしさをまとうバンドはそういないだろう。前半だけでも、「hyper chord」といったタフなギターロックから、荘厳なオルガンアレンジが似つかわしい「WILL」まで多岐にわたる楽曲が披露されたが、それらはメンバー個々の確かな個性に裏付けられて揺らぐことのない衝動を貫いていた。「Never Ending Story」のような聴かせるミディアムナンバーもそのひとつ。しかしシングルのカップリングに収録されただけのこの楽曲(ライヴのメニューに入ることもほとんどなかったそうだ)がファン投票で3位を獲得したのは正直意外だったと明かすヴォーカリストのHAKUEI。

「みんながベスト盤のために選んでくれた曲が素晴らしいので、とても気持ちよくツアーを廻れてます。でもさ、なんで「Never Ending Story」なの? 確かに歌ってて気持ちいい曲ではあるし、演奏も聴きやすいと思うけど、20代中盤に作った曲だから歌詞も稚拙だしね。それを40歳過ぎた俺が恥ずかしそうに歌う姿をみたいのかっていう(笑)。みんなホントに聴きたいんだよね?(場内から大拍手!)。長くバンドをやっていると、こういうことも感じられるんですね」

というように、もちろんこの日の聴きどころはファンの意志を反映したベストアルバム収録曲の完全再現。しかしライヴならではのパワー感が全面に押し出されたサウンドは、より迫力を増して会場の空気を震わせていた。また、ベストアルバムに収録された初期の楽曲は現在のPENICILLINスタイルで再レコーディングされているのだが、原曲とも再レコーディングバージョンとも異なるライヴアレンジを要所要所に施した楽曲たちが、新鮮な驚きとともにさすがの技量を感じさせてくれる。細かく言えば、哀愁漂うアルペジオギターの独演で幕を開けた「花園キネマ」などは会場から感嘆の声が上がるほどだった。

ステージ後半はまさに怒濤。ほとんど身動きもできないほど埋め尽くされたキネマ倶楽部のフロアが荒波のように逆巻く。とりわけ、「Desire」から「イナズマ」への流れは圧巻だった。音と音が所狭しとせめぎ合って飛沫を上げる千聖のギターとO-JIROのドラムはアグレッシヴに真っ向から迫りくる。ビールという発憤燃料をガンガン注入するHAKUEIのステージングは一層の激しさを増していく。これにはファンもヘッドバンギングの嵐で応酬、本編ラストの「NEW FUTURE」まで一気に駆け抜けた。

「僕らの音楽人生は未来に向かっています」。アンコールに応えて登場したHAKUEIの、この言葉に続いて演奏されたナンバーはベストアルバム収録曲にして新曲「Dragon Hearts」だった。<限り無く流れる僕らの今 あの日信じた歌は間違いじゃない♪>と歌われているように、彼らの溢れんばかりの決意は未来をたぐり寄せ、今、真っ直ぐ前を見据えている。そして、「一緒に歌ってください!」と告げられた大ヒットナンバー「ロマンス」は、しかし歌に入る前に演奏が突如ストップ……と同時にバースデイソングが鳴り響くサプライズが。本編の千聖のMCでは「何も用意していない(笑)」との前振りがあっただけに、今月誕生日を迎えたサポートベーシストのHIROKIは驚き&満面の笑みをみせて、場内がピースフルな雰囲気に包まれた。ラストナンバーとなった「Chaos」はO-JIROの高速ビートも千聖の光線銃プレイもHAKUEIのシャウトも、すべてがハイライト。全演奏終了後、フロアに降りてファンとタッチを交わすメンバーの姿がこの日のライヴの大成功を物語っていた。

<20th ANNIVERSARY TOUR 2012>は9月いっぱいで終了するが、まだまだPENICILLINの20th Anniversaryは終わらない。12月5日、今度はメンバーセレクトによる楽曲に新曲を加えた『20th Anniversary Member Selection Best PHOENIX STAR』をリリース、年明けにはそれに伴うツアー開催も発表された。

20年間続いているバンドは、何ものにも代えがたい強さを得ながら、実は今、とてもフレッシュな状態にあることを実感したファンも多かったのではないだろうか。客席とステージが渾然一体となったこの日のライヴは、終わらない真夏の夜の夢のように楽しくも妖しい、新たなる未来が感じられるひとときだったのだ。

撮影:加藤正憲(KATO PHOTO CLUB)
取材・文:梶原靖夫

<20th ANNIVERSARY TOUR 2012 2012.9.15(土)@東京キネマ倶楽部>
SE.1999
1.Rosetta
2.聖・MARIAN HURRICANE
3.Quarter Doll
4.DEAD or ALIVE
5.hyper chord
6.WILL
7.Never Ending Story
8.花園キネマ
9.FIORE
10.one star
11.Melody
12.Mr.Freez
13.Desire
14.イナズマ
15.NEW FUTURE
<encore>
16.Dragon Hearts
17.ロマンス
19.天使よ目覚めて
20.Chaos

<PENICILLIN 20th Anniversary TOUR 2013 PHOENIX STAR>
■2013年1月5日(土)千葉・柏PALOOZA
OPEN 17:30 / START 18:00
(問)サイレン・エンタープライズ TEL.03-3447-8822
■2013年1月6日(日)埼玉・HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
OPEN 17:30 / START 18:00
(問)サイレン・エンタープライズ TEL.03-3447-8822
■2013年1月12日(土)福岡DRUM Be-1
OPEN 17:30 / START 18:00
(問)GreeN Music TEL.092-714-0230
■2013年1月14日(月・祝)岡山IMAGE
OPEN 17:30 / START 18:00
(問)夢番地 岡山 TEL. 086-231-3531
■2013年1月19日(土)愛知・名古屋ElectricLady Land
OPEN 17:30 / START 18:00
(問)ズームエンタープライズ TEL.052-290-0909
■2013年1月26日(土)大阪FANJ TWICE
OPEN 17:30 / START 18:00
(問)夢番地 大阪 TEL.06-6341-3525
■2013年1月27日(日)大阪FANJ TWICE
OPEN 17:00 / START 17:30
(問)夢番地 大阪 TEL.06-6341-3525

※2012年9月29日(土)チケット一斉発売
※All Standing ¥5,500(税込)
※入場時ドリンク代別途¥500が必要になります。
※ご入場には3歳以上からチケットが必要になります。
TOTAL INFO.サイレン・エンタープライズ
TEL.03-3447-8822(平日12:00~18:00)

◆チケット詳細&購入ページ
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