ギタリストとして約20年間、小島麻由美、スチャダラパー、UA、中島美嘉、ピラニアンズ、SLY MANGOOSEなどのレコーディング・セッションに参加、プロデュースも行ってきている塚本功の2012年秋のギターソロ・ツアーを9月24日(月)東京下北沢lete、9月25日(火)東京恵比寿カチャトラ(共演:ワダマンボ)と見に行った。

彼のソロライブは主に、ギターのインストルメンタル曲とオリジナル曲およびカバー曲の弾き語りで構成。ギターのインスト曲としては、彼のギターソロ・アルバムにも収録されているニーノ・ロータ作曲「太陽がいっぱい」や「エデンの東」などのやや懐かしめの20世紀映画テーマ曲から、アストル・ピアソラの「リベルタンゴ」などが採り上げられる。これらの曲は一音一音の粒がプッチンプッチンで七色の光を放つことを要求する(おそらく)が、塚本功はそれを、何の気負いもなく色彩感豊かに演奏できる卓越したギタリスト。

弾き語り曲ではフェイセズ時代のロッド・スチュワートとロニー・ウッド作曲、浅川マキがカバーした「ガソリン・アレイ」、RCサクセションの「よそ者」などロックファンならば涙無しで聴けない名曲や、ニニ・ロッソなどイタリアの名曲群、そして彼がバンマスを務めるバンド、ネタンダーズのナンバーが歌われる。そして塚本功ならではの“流儀”なのだろう、彼の大学時代の先輩のバンドや東京・国立在住時代の友達のバンドの隠れた名曲がフィーチャーされる。彼のギターの音色の素朴さ/美しさには、彼が過去の巨匠の名曲であろうとも、友達が何気なく出した一音や言葉であろうとも、なんの心理的な垣根も設けずにそれぞれの出会いと音を心から大切にしている生き方が滲み出ている。だからこその「いい音色」であり、これがロックだと思う。

9月25日(火)のライブではたまたま客席に来ていた塚本功も共演経験があるハナレグミの永積 崇がステージに飛び入り、その深く暖かいヴォーカリゼーションで客席を酔わせるというハプニングもあった。彼の人徳が培ってきたミュージシャンシップに敬意を感じた。

彼のソロライブに足を運ぶたびに、僕はいつも幸せな気持ちになる。20年間ちかくものあいだ愛器Gibson ES-175とひたすら向き合い、彼がポツンと椅子に腰掛けている佇まいを観て、アンプに直結された男らしいギターの素朴な音色を聴くことで、おそらくリスナーもその“向き合う時間”を共体験できるのだ。

私事で恐縮ではあるが、僕はお互い20代だったころに彼とバンドを一緒にやった経験があり、そのときの彼のいくつかの発言に心から感動したことがある。たぶん彼は忘れているだろうけど。たとえば、結局音楽メディアのファンに過ぎず、次から次へとレコードや音楽媒体を収集する僕に対して塚本君は「(名盤を)集めるのが自己目的化していない? 俺だったら一枚のアルバムを何千回、何毎回も聴き込むけどな~。スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーンの『フレッシュ』一枚で飽きないよ」と言った。心に刺さった。

また「巧くなりたいからたくさんフレーズをコピーして自分のものにしたい」というプロ志向のアマチュアが発言しがちな僕の言葉に塚本君は、「ただひとつのフレーズのプロになろうよ」という、僕が今まで出会った名言のなかのベスト・オブ・ベストとも言える名言を吐いた。千のフレーズを習得するのを義務でやらない。自分が本当にすきなただひとつのフレーズを心から大切にする。20代で何かしらの結果を出したいと焦る僕に対して、「それは結果だろ。俺たちは音を作る過程だけに集中しようよ」という言葉も忘れられない。

その言葉たちとあまりかけ離れていない距離で、いまも塚本くんの音はフツーにポツンとそこににある。そしてその音を出し続けることで生きている。積極的なライブ活動を通じて、彼の美しい音を僕らは聴ける。ぜひ以下サイトで彼の活動をチェックしてライブハウスに足を運んで欲しい!

文:小塚昌隆

◆塚本功オフィシャルサイト