【ライブレポート&インタビュー】<千聖プロデュース!! ハロウィンイベントライブ>、前から裏から徹底レポ

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10月28日(日)、東京・原宿アストロホールにて<千聖プロデュース!! ハロウィンイベントライブ>が開催された。タイトルが表す通り、PENICILLINのギタリスト:千聖プロデュースによるこのライブは、千聖がMSTR(ミスター)名義で展開するソロ・プロジェクト:Crack6ほか、GOTCHAROCKA、ν[NEU]と世代の異なる3バンドが出演。2011年の<千聖伝 ~Crack6 HALLOWEEN PARTY~>が、千聖ソロ~Crack6 の新旧楽曲で構成されたソロ・デビュー15周年アニバーサリー的内容だったのに対して、共演バンドを招いた今回は、よりハロウィン・イベント色を濃くしての開催となる。

◆<千聖プロデュース!! ハロウィンイベントライブ>画像

▲ν[NEU]
▲GOTCHAROCKA
▲CRACK6
チケットは発売からわずか5分でソールドアウト。当日のアストロホール周辺は、精霊や魔女、メイドやバニーガールなど、思い思いの仮装に身を包んだファンが取り囲んでいる。その光景は開演前の楽屋裏も同様で、仮装を楽しむ出演者達の会話が爆笑ものだった。“やられたー!”“それ自分で作ったの!?”“俺の女装、お婆ちゃんとそっくり”などなど、通常のステージ前とはひと味異なるパーティー・ムードに盛り上がっている。

17時30分、ステージ前面に張られた暗幕が落とされた。トップを飾るバンドはν[NEU]だ。海賊風のЯel(Dr)、スヌーピーに扮したヒィロ(B)、白鳥姿の華遊(G)、“呪われた花嫁”がコンセプトだという吐血&振り袖姿のみつ(Vo)が、荘厳なパイプオルガンの音色をバックに登場した。そのSEが聞き覚えのある勇ましいテーマに変わり、颯爽と姿を現したのが仮面ライダー姿のタクミ(G)だった。それも仮面ライダーのマスクを脱いだら、顔面に仮面ライダー・ペインティングが施されているというマトリョーシカ状態。期待通りのド派手な仮装で場内が大爆笑に包まれた。

「それじゃ、始めるか!」というみつの第一声からステージがスタート。オープニングは「スプラッシュ!」だった。メロディアスでアッパーなナンバーが会場の熱気を容赦なく突き上げる。続けざまの「YES≒NO」では彼らのパワーに牽引されるかのごとく、コーラスの輪がフロアに広がった。この日演奏された全6曲はライヴ定番曲のオンパレード、メンバーのリラックスしたステージングが実に頼もしい。また、一聴するとポップで馴染みやすいナンバーの数々は、ツインリードのハモリが美しいギター・ソロをはじめ、パワフルなベースのスラップや鮮やかなロート・タムの響きなど、こだわりのプレイが随所に散りばめられている。そういった部分をさらりと聴かせるアプローチにこそ、このバンドの本質が刻み込まれているような気がして実に興味深い。

「僕達の想いは、この3バンドにしかできないイベントにすること。だからバンドも、ファンも、すべての垣根を取り払って、みんなで楽しみたいと思います」。この日、会場に溢れていた一体感は、みつのこの言葉に集約されていた。ハロウィンを全員で楽しむ、この一点に集中して会場のヴォルテージをオープニングから頂点に引き上げたν[NEU]に拍手を送りたい。

続いての登場はGOTCHAROCKA。元VIDOLLのヴォーカリスト樹威、元PhantasmagoriaのギタリストJUN、元しゃるろっとのギタリスト十夜といった強力なメンツを中心に結成された新バンドだ。アニメ『銀魂』主題歌が流れるステージに十夜とテロが登場した。そのSEが『黒執事』の主題歌に移り変わってベーシストの真悟、『るろうに剣心』の主題歌が流れるとJUNがそれぞれのコスプレ姿で登場した。彼らの仮装コンセプトは言うまでもなくアニメ縛り。そして『エヴァンゲリオン』の主題歌が流れ、恥ずかしげに登場したのが、膝上スカート姿の綾波レイ=樹威だった。場内の驚きと歓声をかき消すように、間髪入れずドラマーのテロがカウントを刻む。ガツン!と響く音の塊は「Gotcha6ka」のイントロだ。強靱なリズムにのって髪を振り乱す樹威。荒波のような音のウネりに合わせて、客席も鼓動するように激しい。シャッフル・ビートが重厚に躍動する「2032」、タテノリのソリッドなリズムが心地好い「JapaneseQ」とタイプの異なるナンバーを次々と繰り出して、さすがの演奏を聴かせてくれた。

「もう、どういう動きをしたらいいか分からないよ。マジで、女形ってやったことないし、ここに出てくる瞬間は家に帰りたかった(笑)」という樹威のMCが客席の拍手と爆笑を誘う。さらには、「スカートが後ろ前だよー」との突っ込みが客席から入って、「えっ、うそ!……いいんだよ。これがオレなりのオリジナルだよ!」と、攻撃的なナンバーとは裏腹な、微笑ましい雰囲気に場内が包まれるMCだった。

刺激的な肌触りを持ちながらキャッチーなメロディーがその核を貫くナンバーの数々は、多彩なアレンジ・ワークとリズム・アプローチが楽曲ごとのカラーをくっきりと浮き彫りにしていた。この日は、12月にリリースされる1stミニ・アルバム『Virginity』からタイトル・ナンバーも披露。ますます今後が楽しみとなるステージが印象的だった。

そして、いよいよCrack6の登場だ。ステージ前面にスクリーンが下りた状態のまま、SEの「G線上のアリア」が鳴り響く。ストリングスの調べはやがてMETALLICAの「Battery」へ。そのSEにCrack6の生演奏が重なるとスクリーンが上がり、メンバーが姿を現した。和装に網タイツ姿のMSTR、STAR WARSのダースモールそのもののギタリストSHIGE ROCKS、ミッキーマウスのような衣装+顔にドクロペイントを施したベーシストのTENZIXXが、重厚なリフを奏でる。メイド姿のドラマーJIRO6(O-JIRO from PENICILLIN)が2ビートを刻むと曲はオープニング・ナンバーの「狂想曲 -第666章-」へ。このクラシックmeetsヘヴィメタルなスピードチューンに、客席はのっけからヘッドバンギングの嵐。続く「770R」では全編スラップによるベースが圧巻のグルーヴを描き、ギターを置いてハンドマイクに持ち替えたMSTRが、MSTRちるどれん(ミスターチルドレン!?)なるダンサーを従えてステージを所狭しと駆け回る。ノリの臨場感と、テクニシャン揃いのサウンドがCrack6の生命線と言わんばかりのステージが熱い。

「ν[NEU]とGOTCHAROCKAが盛り上げてくれたんで、俺たちはそこに乗っかるだけの、(自分達にとって)非常にありがたいイベントです(笑)!客席もいい感じで仮装してるね。オレの衣装は、“オイラは花魁(おいらん)”という感じで(笑)、わざわざ作ってきたんだよ。今日はね、イベントなのでノリのいい曲を集めてきたから、盛り上がっていきましょう!」

キャッチーなMCでファンをのせつつ、彼ら本来のハイブリッドな楽曲群は抜群の演奏力が曲にウネリを加えて、会場をさらに盛り上げる。実績を重ねたメンバーならではの一糸乱れぬコンビネーションには、さすがのキャリアを感じずにはいられない。また、千聖のソロ・プロジェクトであるCrack6には、彼本来のルーツや実験性が色濃く投影されているのだろう。ヘヴィメタル、ヒップホップ、ニューウェイブ、ポップスetc.といった多彩なジャンルにアプローチしながらもブレない音楽性があるのだから、やはりMSTRはただ者ではない。そして、ラストにふさわしいアゲアゲのナンバー「NEO」でCrack6のステージを締めくくった後は、お楽しみのセッション・タイムだ。3バンドのヴォーカリストによるスペシャル・セッションがこの日のフィナーレであり、これは9月6日のニコ生で発表された“チケット発売開始5分以内に完売したら実現させる”という公約によるもの。

「ソールドアウトしたらセッションするっていってたんですけど、ここにギタリストとドラマーとプロデューサーがいるからさ。よかったら、この曲でセッションしたいと思います」。MSTRの紹介で披露されたナンバーはPENICILLINの「ロマンス」だった。<千聖プロデュース!! ハロウィンイベントライブ>という名の下に、3バンドが集まったこのイベントは、世代やバンド間の垣根を越えて、より楽しく、より一体感のある空間を作り上げようとする意気込みに溢れていた。それはメンバーに限らず、スタッフや、会場を埋め尽くしたファンにも共通していたように思える。「ロマンス」の最後に壇上からジャンプして全演奏を締めくくったMSTR、樹威、みつの3人。その屈託のない笑顔がライブの成功を物語る何よりの証だった。

なお、9月6日のニコ生『Crazy Pumpkins』内で発表されたもうひとつの公約が、“イベント終了後に、もう一度ニコ生に出演する”というもの。12月6日(木)には、「Crazy Pumpkins だョ!! 全員集合!!」の放送が決定している。そのタイトル通り、今回は3バンドのメンバー総勢13名が出演する予定だ。では最後に、イベント終了直後の楽屋で行ったヴォーカリスト3人による対談の模様も記しておこう。

   ◆   ◆   ◆

<MSTR×樹威×みつVOCALIST TALK SESSION>

──ハロウィン・イベント、おつかれさまでした。まずは本日の感想からお願いします。

MSTR:予想以上に楽しかったね。2つのバンドがカッコよかったということがもちろんあるし。お客さんは正直だから、前評判が高かったとしても実際のステージがダメだったら盛り上がらないんだよ。逆にいうと、ステージがカッコよければ無条件で盛り上がってくれるという。そういう意味ではν[NEU]は初っぱなから盛り上げてくれたし、GOTCHAROCKAはすごく攻めてるなという印象でしたね。バンド自体が新しくても、ひとりひとりは場数を踏んでるし、慣れてる。百戦錬磨の戦士達のようでした。

──そもそもGOTCHAROCKAとν[NEU]という2バンドを今回のハロウィン・パーティに招いたのは?

MSTR:GOTCHAROCKAは出来たばっかりのバンドなんだけど、樹威くんのことはVIDOLL時代から知ってはいたし、歌が上手いなというイメージが強かったな。後に彼のソロで、PENICILLINの「ロマンス」をカバーしてくれたのを聴いて、それがすごく良かったんだ。HAKUEIも「こんな歌い方もあるんだな」って言ってたくらいだから。ヴォーカリスト同士が、そういう感想を抱くということは大きなことでね。

樹威:そのマスタリングかミックスのスタジオで、初めてしっかり千聖さんとお話をさせていただいたんです。もちろん面白い方だというのはテレビとかで知っていたんですけど、ONとOFFでは違うのかなって想像していて。でも、まったく変わらないという逆のギャップがあった。親しみやすくて、優しくしてくれたのが印象的でした。

MSTR:オレとしては、新しい樹威のバンドはどんなだろうって期待するじゃない。で、ハロウィンイベントの企画を立ち上げて、声をかけさせてもらったわけです。ただね、イベントって対バンがどんなメンツなのかとか気にされることも多いんだよ。ましてや仮装してほしいという条件があったわけで。そんな状況なのに、ふたつ返事でOKだったから、まずそのノリがオレらと合ってるなと(笑)。

──ν[NEU]とも面識はあったんですか?

MSTR:オレの中では前から注目していた若手バンドですね、ヴォーカルのみつくんが加入してからのν[NEU]は。噂ですごくイイって聞いてたし、実際に見て“迷いがないバンドだな”と思った。探りがないっていうか、コレって決めたらそこに向かっていく感じが見ていて気持ちよかったんで。いつか一緒にやれたらいいなと。

みつ:初めてお会いしたときに千聖さんにも言ったんですけど、僕も正直、樹威さんと同じように恐い人かなと思っていて。でも、えっ、こんなに優しいんだってビックリするくらいだったんです。ホントだったら、あまりにもオーラがあるので何も話せなかったと思うんですけど、そうさせない気遣いをしていただいているような。今回、イベントに出させてもらえることになって、一緒に盛り上げたいなと思ったのは千聖さんの人柄に触れたからです。

MSTR:いろんなアーティストがいるんだけど、やっぱり人間性なんだよね。音楽性も大事だけど、人間的に合う合わないのほうが重要かなっていうね。せっかくイベントに誘うんだったら、お互いに話が面白いほうがいいでしょ。みつくんは、カッコいい、面白い、そしてプロ根性がある、全部揃っている。“なんだ、俺にない部分をたくさん持っているじゃないか。助けてもらおう”と(笑)。だから今回は、若い2バンドの大船にオレが乗ったつもりで。ありがてー、これで今回(のイベント)勝ったも同然と思ったよ(笑)。

──今回のハロウィン・イベントは、参加したお客さんも含めて会場全体にフェス感が漂ってましたね。各バンドのファンがそれぞれの好みのバンドを楽しんでいるというよりも、イベントをトータルで楽しもうという雰囲気がありました。

樹威:それは、千聖さんとお客さんとの関係性がそうさせているんじゃないですかね。オレもその関係性を見習おうと思いましたから。

みつ:普段もステージ上も、千聖さんはすごく本音で語っているんだなっていう風に思えて。自分は今まで、MCでいいことを言おうって考えていたから、セリフみたいになっていたんですよ。

──いつでもどこでも自然体ですよね、MSTRは。

みつ:そうそうそう!自然体なんですよ。

MSTR:最近、ライヴを観ているとMCでいいことを言おうとしているバンドが多いなと感じているんだけど、でもお客さんがそれを求めているのかといえば、俺はちょっと違うかなと思うんだよね。まずは、ステージでみつや樹威が歌う姿がカッコよかったりさ、曲を通してその人の生き様が見えるから、その人のライヴ会場に来ているんじゃないかと。ただ単にいい話を聞きたいんだったら、なんかのセミナーとか感動映画とかに行けばいいわけだから(笑)。でもね、オレのMCは自然体なのかもしれないけど、ギャグだけは考えておこうと努力はしてるよ。イヤ……やっぱその場で考えたもののほうが多いか(笑)。

──今日のステージも冴えていましたね。仮装コンセプトは「オイラ、花魁(おいらん)」とギャグを飛ばしていましたが、GOTCHAROCKAとν[NEU]の仮装コンセプトは?

樹威:イベント前のニコ生で3人が対談したときに、「いき過ぎた感じで」っていう話が出ていたので。僕らは他のバンドと被らないように、アニメ縛りっていうコンセプトがありましたね。僕もるろうに剣心とか着たかったんですけど、髪の赤色でそこはギタリストのJUNに譲って。で、ツイッターでどんな仮装したらいいか募ったり、スタッフとかに相談したら、綾波レイという……ま、僕はあんまり乗り気じゃなかったんですけど(笑)。

──人のせいだ(笑)。

樹威:ハハハ。でも、いい経験になりましたね。初めてですから、ハロウィン・イベントに仮装で参加したのは。

──ν[NEU]は、メンバーそれぞれが思い思いの仮装をしていましたが?

みつ:もともと僕らは、イベントごとに“今回はロリータ”みたいにコンセプトを立てて服を着たり、ハロウィン・イベントも毎年やっていたんですよ。ニコ生のときも千聖さんから「ハロウィンはすごいことやってくれるんだよね」ってハードルを上げていただいて。ここで期待に応えなかったら、二度と呼ばれないんじゃないかと(笑)。今回は、イベントに参加する3バンド全員の仮装を楽しんでもらいたかったので、あえてバンド内で合わせずに、個々が好きな格好をしたんです。で、千聖さんが和装するという情報をいただいていたので、僕は2パターン用意してきたんですよ。千聖さんとかぶらないようにしながら、千聖さんと僕の和装で、樹威さんの綾波レイを挟むという(笑)。

樹威:みつくんの女装はキレイでしたね。モニターを見ながら“いいなー”と思ってました。オレの綾波は……家に帰ってから落ち込みそう(笑)。

みつ:いや、樹威さんの綾波はギャップがあって、客席がすごく盛り上がってましたよ。

MSTR:スカートが後ろ前だって指摘されても、「うるさい!」っていいながら、歌い出すとカッコいいという。オレだったら、動揺してたと思うね(笑)。

──確かに3バンドのヴォーカリストは全員女形の仮装でしたね。

みつ:そうです。バラバラなんだけど、バンドのそういうつながりを考えていたんです。

──それと、チケットが5分で売り切れたときの公約のひとつとして、セッションの披露があったわけですが、アンコールでは3人がステージに揃ってPENICILLINの「ロマンス」をカバーしました。

みつ:今回、セッションのためにリハーサルでスタジオに入ったんですけど、イントロだけで“あ、この音だ!”みたいな。音源で聴いていたものとまったく同じ音だったから、千聖さんのギターには圧倒的なホンモノ感がありましたね。

樹威:オレも鳥肌が立ちました。自分で歌っているのに(笑)。

──もう最初の一音からして、MSTRらしさがあるという?

みつ:ホントにその通りですね。

MSTR:ヴォーカルが良いとギターが活きるんだよ。どんなにいいギターでも、ヴォーカルだダメだったら、ヒュ~っと落ちるからね。そこはバンドにとって大事な部分なんです。

──2人はMSTRお墨付きのヴォーカリストというわけですね?

MSTR:2人ともすごく美学を持ったヴォーカリストですよ。俺自身も美学があるんだろうけど、それ以前に単純にロックファンだからさ、そういうヴォーカリストを見ると一緒にやってみたくなっちゃう。まだ12月のニコ生もあるし、今後もっと面白いこともやりたいと思っているので、ちょっと楽しみにしておいてください。どちらにせよ、この3バンドの動向には要注目かなという。

取材・文:梶原靖夫

ν[NEU]
1.スプラッシュ!
2.YES≒NO
3.FAKE
4.LAB
5.ピンクマーブル
6.in my secret…

GOTCHAROCKA
1.Gotcha6ka
2.2032(新曲)
3.JapaneseQ
4.Virginity(新曲)
5.kiravistars
6.Hydrag

Crack6
1.狂想曲 -第666章-
2.77OR
3.未来パラドックス
4.一撃必殺
5.Crazy Poker Face
6.NEO

SPECIAL SESSION
1.ロマンス(PENICILLIN)

◆CRACK6オフィシャルサイト
◆GOTCHAROCKAオフィシャルサイト
◆ν[NEU]オフィシャルサイト
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