【異次元連載】トム・ハミルトンが語るエアロスミスの真実 Vol.5「発端がどこにあろうと、楽曲はいつも同じようなプロセスを通過することになる――「アウト・ゴー・ザ・ライツ」「レジェンダリー・チャイルド」出生秘話」

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トム・ハミルトンによる最新発言を軸としながらのこの連載も、早くも第5回。『ミュージック・フロム・アナザー・ディメンション!』収録曲の解説も、そろそろ中盤に差し掛かりつつある。今回はこのアルバムの5曲目に収録されている「アウト・ゴー・ザ・ライツ」と、6曲目の「レジェンダリー・チャイルド」について語ってもらおう。まずスティーヴン・タイラーとジョー・ペリーの共作による「アウト・ゴー・ザ・ライツ」について。まさに彼らのライヴ・パフォーマンスが目に浮かんでくるかのようなナンバーだが、まず彼の口から飛び出してきたのは、アルバムのオープニング・チューンである「ラヴXXX」について語ってもらったときと同じ言葉だった。

「何度も言うようだけど、僕たちは、アンプを全開にしてファンクをやるのが好きなんだ。まさにこれもその好例だよ。とても南部風でブルージーな、スウィング感のあるビートを基調とした曲。こういうのをやるのが、みんな昔から大好きなんだよ。このリフ自体はジョーが考えたものだけど、全員でそのアイデアに向き合いながら、それに合うパートを考えつつまとめていったんだ。実際、この形になるまでには時間もかかったんだけど、なにしろそのリフ自体が良かったから“このアルバムには是非ともこれを入れよう。このリフで曲を作らずにいる手はないからな!”ということになったんだ。そしてスティーヴンが、彼ならではのナスティで色っぽい歌詞を載せたところで完成したというわけさ」

ちなみにこの歌詞の主人公は「女とウィスキーを取り上げられたら、俺には何も残らない」と歌っている。現在のスティーヴンがこんな歌詞を書き得るのも、半分は過去の実体験、そしてもう半分はこのリフの魔力ゆえかもしれない。

続いては、このアルバムからの第1弾先行シングルとして去る6月に発表されていた「レジェンダリー・チャイルド」について。こちらの作曲クレジットには、スティーヴンとジョーに加えて、ブライアン・アダムスなどとの共作歴でもよく知られているジム・ヴァランスが名を連ねている。トムによれば、この曲は生まれてから比較的時間を経てきているものであるようだ。

「この曲は、かなり前に書かれたもののはずだよ。スティーヴンとジョーがジムと一緒に他の曲に取り組んでいたときに、かなり粗削りな状態でまとめられていたはずのものだと思う。ジム・ヴァランスはソング・ドクターというか、作曲コンサルタントというか、そういった立場だね。僕らとしては、バンドのクリエイティヴなエナジーを活性化させたかった。それが狙いで“自分たちが好きなソングライターを選んで、コラボレーションしてもらったらどうか?”ということになったわけだよ。僕自身がジムのコラボ相手として把握しているのはブライアン・アダムスぐらいかな。彼は実に才能のあるクリエイティヴな人物だよ。スタジオでの技術面にも精通しているしね」

多くの読者がすでに理解しているはずだが、今作ではここ数作に比べると外部ソングライターの起用がかなり抑えられている。これはバンドが本来あるべき形を取り戻した事実を裏付けると同時に「もしかしたら過去にもそうした専業ライターたちの存在を邪魔に感じたことがあるのではないか?」と推察を誘うものでもある。が、トムにそうした疑問をぶつけてみると「いや、発端がどこにあろうと、楽曲はいつも同じようなプロセスを通過することになるからね」という答えが返ってきた。

「結局、誰のアイデアがもとになっていようと、ある段階まで進んでくるとバンドのメンバー全員がプレイしてアイデアを加えていくことになるし、そこでその曲自体がエアロスミスの曲として仕上がっていくことになるんだ。曲の取っ掛かりになるのは至ってシンプルなものであることが多くてね。この曲については実際、以前レコーディングしてあったけど、自分たちでは完成したという気がしていなかった。他人様に聴かせられるようなものとは思えなかったんだ。だからいつか将来的に完成させようと考えて、とって置いてあった。それが今回のアルバムで完成に至ったんだ。つまりこの曲のベーシックな部分はずっと前にジムと一緒に書きあげられていて、それがこうしてついに形になったというわけ。この曲の象徴的なタイトルとあのメロディに、僕らはずっとインスパイアされ続けてきたんだよ」

少しばかり意地悪な質問を投げかけても余裕で切り返してくるトム。さて、次回はどんな発言が飛び出すことになるのか? 是非、アルバムを聴き込みながら、楽しみにしていて欲しいところだ。

取材/文:増田勇一

◆エアロスミス特設チャンネル「 【異次元連載】トム・ハミルトンが語るエアロスミスの真実」
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