大西洋平【インタビュー】後ろを振り返っているんだけど前に向かって歩いている気持ちが詰め込まれたアルバム『僕らが最後に少年だった夏』

twitterツイート

インディーズでの活動にも関わらず2010年には赤坂BLITZでのワンマンライヴを成功させるなど、独立独歩のスタイルで活動を続けるシンガー・ソングライター大西洋平が、キャリア初のフルアルバム『僕らが最後に少年だった夏』を完成させた。日常生活の中でぶつかった壁、恋人との別れ、そして、家族との別れ……。自身の人生の様々な場面をリアリティたっぷりに切り取り、かつ、ストーリー性豊かに描く詩世界。そして、それを歌い上げる圧巻のエモーショナル・ボイスは、聴き手の心の琴線を激しく揺さぶる。切なく、力強く、そして温もり満ちあふれる歌声の持ち主のバックグラウンドに迫った。

■幸せなときには曲が書けなくなるタイプだけど
■できる限り前を向こうって自分が変わってきた

──今回のアルバムは、ジャケット写真も大西さん自身の強いこだわりを元にして撮影されたそうですね。

大西洋平(以下、大西):そうなんです。まず、アルバムタイトルは“小説”っぽい感じがいいなっていうのが自分の中にあって、『僕らが最後に少年だった夏』っていうタイトルになったんです。こういう広大な大地を歩いてるみたいな風景を撮りたかったんですが、それは北海道とか海外とか超遠くに行かないと無いよねって思いながらそういう場所を探していたときの移動中の電車から、「あっ、あそこなら!」って偶然見つかったのがこの場所で、自分の中で描いてたぴったりの場所が見つかったっていう奇跡が起こったんですよ。晴れてる空も夏っぽくて、本当にイメージにぴったりで。

──青空は鮮やかで、と同時に、どこか叙情的で……。爽やかな風景でもあり、大西さん遠くを見つめている姿がどこか切なさを感じさせるような写真だなと感じました。

大西:その“切ない”っていう感情は、僕も一番って言って良いぐらいすごく大事にしている感情で。昔の自分は、もう戻ってこない。前を向けない、前を向かないっていう物語も本来は好きなんですけど……。“できる限り前を向こう”っていうふうに、このアルバムを作るに当たって自分の中が変わってきたんで、この写真も、後ろを振り返ってもいるんだけど前に向かって歩いているっていう写真にしたかったんです。最近は、特にそういうふうに自分が変わってきてますね。元々は、まぁまぁ幸せなときには曲が書けなくなっちゃうタイプだったりもするんですけど(笑)。

──(笑)幸せな気分のときに“楽しい!”みたいな曲調は書けないんですか?

大西:苦手ですね。僕は、気持ちは本当だけどストーリーはフィクション、みたいなスタイルが曲作りに関しては多い気がするんです……。それでいて、聴いている人の胸をえぐるようなことを歌いたいし、聴いてる人を「明日から頑張ろう!」っていう気持ちにさせるような歌を歌いたいし。

──自分自身も胸をえぐられるくらいの強さがないと、歌ってもグッとこないというか。

大西:そうですね。聴く立場としてもそうですね。他の音楽を。

──先ほどのお話にもありましたが、大西さんが書く作品は自分自身が感じた気持ちだったり、ご自身が体験したことがどれも元になっているっていう?

大西:基本になっているのはそうですね。いわゆる職業作家さんというか、プロの作詞家、作曲家の方が書く曲も大好きなんですけど。でも、そういう職業作家の方が書いた曲って、たぶんどんな人が歌っても良い歌なんだけど、僕はやっぱり“シンガー・ソングライター”なんで……。一流の作詞家さん、一流の作曲家さんがコンビを組んだら、世界一美味しいスープと世界一美味しい麺で作ったラーメンを作られてる感じで勝ち目ないなとか思うんです(笑)。そのぶん僕は、音も言葉も両方自分で作ることができ自分で歌うことができるから、“僕がすごく見える”曲が書きたいなっていう思いが強いので、こういうわりと赤裸々な歌詞を書く方法に惹かれますね。

──じゃあ、例えば、“キチンと僕はフラレました”としっとりと歌っている「Memo」も、リアルな体験? 同じ男子として、この切ない感じはすごくグッと来ちゃいました(笑)。

大西:これも、完全に実体験です(笑)。実体験を物語的に変えて作りました。この曲を作ったときは、ちょうど、2年くらい付き合った彼女と別れて。僕、別れたら、だいたい相手とは全く連絡を取らないんですが、僕はその子をすごく大事に思ってたし相手もそうだったんで、別れた後も2ヵ月に1回くらいメールが来てたりしたんです。僕もそれに返してたし。でも、それってきっと良くないことだなと思って、この曲を書いたんですよ。あらためてみると、そういう実体験が元になっている曲がほとんどですね。「プラスチック永遠を」も、僕は、両親が離婚していて、双子のお姉ちゃんがいるんですけど……。この曲の、“ブランコにうつむいて座ってるアイツ”っていう主人公は、じつはそのお姉ちゃんがモチーフになってたりするんです。

──本当にさっきの話の通り、ご自身の体験を赤裸々に描いているんですね……。

大西:そうですね。僕の家は、親がすごくケンカしてて。まぁ、僕は男の子だったし、離婚するならすればいいのにぐらいに思ってたんですけど。お姉ちゃんはきっと離婚してほしくなくて、親がケンカするたびに、すごくショックを受けてて。この「プラスチックに永遠を」は、それを友達に置き換えて作った歌なんです。だから、“それって自分の体験なのに、なんで本人じゃない感じで書くの?”ってよくまわりから言われるのは、そういうことなんですよね。

──今回の1曲目の「今日に名前をつけるなら」も、“胸をえぐる”ような感覚がすごく表れている曲だと思います。この曲は、大西さんのどんな体験が元になっているんですか?

大西:この曲を作った時期は、赤坂BLITZでワンマンが終わったときのことです。このライヴの準備ためにバイトも辞めて臨んで、うまくいって、若干鼻高々になっちゃってたんです。で、またバイトしようと何軒も面接しに行ったら落ちまくって、あるところでボロクソに言われて腹立って、すごい落ち込んでこの歌詞を書いたんです。だから書いた当初は本当に暗い、“世の中なんて真っ暗だぜ”みたいな歌詞だったんですが、それじゃもったいないなと思って歌っていくうちに最後のあたりの歌詞とかも変えていきました。

◆インタビュー続きへ
twitterこの記事をツイート

この記事の関連情報