【異次元連載】トム・ハミルトンが語るエアロスミスの真実 Vol.11「じわじわと効いてくる「クローサー」と、ジョーが歌いスティーヴンがドラムを叩いた「サムシング」」

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今回も引き続き、トム・ハミルトンによる『ミュージック・フロム・アナザー・ディメンション!』の収録曲解説をお届するとしよう。まずはアルバムの13曲目に収録されている「クローサー」。こちらの作曲クレジットにはスティーヴン・タイラーとジョーイ・クレイマー、そしてマーティ・フレデリクセンの3人が名前を連ねている。トムは「ああ、これはけっこう前からあった曲だな」と振り返る。

◆トム・ハミルトン画像

「マーティはとてもポジティヴな人間でね、“いつでも誰でもいいから、ジャムをやりにおいでよ”と言ってくれるんだ。ナッシュヴィルとL.A.に彼の場所があるんだけど、そこで曲を作ってレコーディングしようじゃないかと持ち掛けてくれる。それで、あるときジョーイが彼と一緒にやったんだ。どれくらい前のことだったかは、申し訳ないけど正確には記憶していない(笑)。ただ、どうあれ彼らは1日かけてジャムをしながらアイデアを練って、そこにスティーヴンが歌詞をつけてヴォーカルを重ねたんだよ。僕はこの曲が大好きなんだ。バラードという分類になるかもしれないけど、すごくロックしてるバラードだからね。そこのところをファンにも理解してもらえると嬉しいな」

もちろんこうして改めて言葉にするまでもなく、エアロスミスのファンがこの曲を“ありがちなバラード”として捉えることはないだろう。また、トムはこの楽曲について、次のようなきわめて客観的な発言もしている。

「これは僕たちが“スリーパー(sleeper)”と呼んでいるもののひとつでね。アルバムを聴いた途端にみんながすぐに飛びつくような曲じゃないけど、聴けば聴くほど好きになるタイプのものだと思う。「クローサー」がそういう曲だということは、この僕が保証するよ。今回のアルバムについては、みんなが時間をかけて全体をじっくりと聴いてくれることを願っているよ。現在は21世紀だし、多くの人たちが音楽をアルバム単位じゃなく楽曲単位で聴いている時代だってことも充分承知している。“これだ!”と思うものを1曲セレクトして聴いているわけだ。だけどこのアルバムには、そういう曲が15曲収録されていると思うからね。まさに聴きごたえ充分な1枚だよ。だからこそファンには、時間をかけて1曲1曲を聴き込んで欲しいと思う。実際、そうするだけの価値がある作品だと思うんだ」

まるで全曲解説を締め括るかのような発言が飛び出してきたが、もちろんこのアルバムはまだまだ終わらない。「クローサー」の次に収録されているのは、12曲目の「フリーダム・ファイター」と同様にジョー・ペリーの作詞/作曲によるもの。ヴォーカルももちろん彼自身が担当している。しかし、それだけではない。

「これまたジョーが自宅のスタジオでレコーディングしたデモを持ち込んだものだ。実は一度、棚上げになっていたんだけど、それが翌年の夏、スタジオで最終的なオーヴァー・ダブやミキシングをやっているときに復活してね。ジョーはヴォーカルとギターだけじゃなく、ここでもベースを弾いている。しかもこの曲では、スティーヴンがドラムを叩いていたりするんだ」

エアロスミス始動以前、スティーヴンが“ドラマー兼ヴォーカリスト”だったことを知っている読者も少なくないだろう。しかも今作のクレジットを確認してみると、彼は曲によってはギターも弾いていたりする。エアロスミスは、実はマルチ・プレイヤーの集合体でもあるといえるのだ。そしてトムの話は、さらに続く。

「この曲はある意味、とてもおかしな存在だ。スティーヴンとジョーが何日間かリハーサルを休んで、一緒に曲作りをしていた時期があったんだけど、そこから生まれた曲のひとつがこれだったんだ。でも、この曲についての詳しい情報についてはジョーに訊いてもらわないといけないな。曲の内容とか、彼が何を思っていたかについてはね。でも、彼のギター・プレイの魅力が見事に発揮されていると思う。すごくイカしたギター・サウンドが入っているし、ユーモアもたっぷりだ。ジョーのプレイはすごく強烈でダークだけど、それがユーモアのセンスになっているんだな。その好例がこの曲だといえると思う」

さて、今回はここまで。次回はアルバム本編のラストに収録されている名曲バラード「アナザー・ラスト・グッドバイ」について語ってもらう。しかしもちろん、この連載はまだまだ終わらない。まずは次回の更新をお楽しみに。

取材/文:増田勇一

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