音楽ファンが東京でライブに行くということ:miaou、NETWORKS、塚本功、MUTE BEAT

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私事で恐縮だが、12月半ばにドイツベルリンへ発ちしばらく向こうで暮らす予定。Berlinのライブシーンを書きまくりたいと思ってるので乞うご期待!

というわけで残り2週間、東京で見たいライブは極力見ておきたく、12月1日(土)は午後から深夜にかけて二十歳代に経験して以来の東京ライブハウス3連チャンで、1日で10以上の日本のバンドを見まくった。

まず第一発目は渋谷WOMBでのイベント<REPUBLIC Vol.10>。映像と音楽のコラボレーションが美しいDJ&VJたちのユニットのステージ。ブライアン・イーノとクラスターの共演(古い?)を見ているみたいなDUB-Russelが鋭い閃光で脳を刺激する。メロディアスかつグルーヴィなaus。少女漫画画像と等身大ラップのコラージュ、泉まくら等のステージを見る。しかし、こういうバンドがたくさんでるイベントって、ひとつのバンドの余韻や感動を大切にしたいなあ~と思っているときに破壊的なパンクバンドなどによってそれらが瞬時にしてかき消されてしまうのがちょっと残念。

第二発目は渋谷O-nestでのイベント<a place in the sun VS. ELECTRIC-FUZZ!!>。やはりmiaouは素晴らしいバンドだ。とてもサウンドを大切するバンドであるが、ただ可愛らしいだけでなくソニック・ユースなどが孕んでいるロックの根源的な“危なさ”を確実にもっているのがすごい! そしてその音楽は確実に青い青い空にまっすぐ昇って行って、宝石のようなカタルシスを僕らの心に残す。

"キラキラ変拍子ダンス音楽バンド"NETWORKSのライヴをこの日初めて見たが、知的でシェイプアップされたカッコいい音楽で、フランク・ザッパやソフトマシーンや1990年代以降のニューヨーク・ジャズ等が持っている、刺激的な香辛料のような変拍子をビシビシと決めるから、自然と踊れる不思議な音楽。

午後9時に渋谷を離れて、阿佐ヶ谷Loft-Aへ。小島麻由美やピラニアンズなどのギタリスト、塚本功のソロライブ。相変わらず卓越したギター技術で確実に観客をリラックスさせ笑わせ、音楽の喜びを伝えてくれる塚本くん。という感じで、12月1日の筆者の“ライブハウスはしご”は締めくくられた。さて、音楽ファンが東京でライブに行くということ、って何なのだろう?

音楽について積極的に書きたいと僕に思わせるきっかけになったのは、2012年7月の松永孝義さん(MUTE BEATのベーシスト)の逝去だった(参照:https://www.barks.jp/news/?id=1000081470)。この日の“ライブハウスはしご”の合間、最近友人になったausのYasuhiko Fukuzono君たちと飯を食っていて(彼とはおそらく10歳以上の世代差があるのだが)、好きな音楽的共通項探しで、MUTE BEATの話になった。「MUTE BEATから始まったものは多いと思いますよ」と彼。世代を超えて、共通に語り合える音楽をMUTE BEATは確実につくった。塚本くんのライブが終わった阿佐ヶ谷のライブハウス店内にはMUTE BEATの「MARCH」が流れていた。店員さんとMUTE BEATについて話す。すべて客層も異なり、世代も異なる1日10以上のバンドを今の東京で見るということは、一見音楽的カオスの渦のなかに叩き込まれて自己の混乱しか産み出さない行為かもしれないが、そのなかで、突然何かしらひとつの通奏低音と歌心あるベースラインが流れ出したりするのだ。そしてこの日、MUTE BEATのベースラインが常に僕の頭の中を回っていた。

松永孝義氏が伝えようとした「グルーヴすること」、自身の心の闇などグルーヴの妨げになるものを取り除いていく生きかた、自分を白紙にして新しいグルーヴや言葉(ゲーテが言う「外国語を勉強しないものは自国語すら理解していない」は、松永メソッドの教えに近いと思う)をつかんでいくこと。コントラバスの弟子時代、松永さんは僕から授業料も取らないどころか、おいしい焼き肉をたくさん食わせてくれた。「そうじゃないと、白紙を作ることをお前に教えられない。教えるってことは、大好きなものが腐ってもずっと好きでありつづけるってことだ」と松永さんは言っていた。僕は、つべこべいうまえに美しい音楽を美しい言葉にして、他人に世界に伝えていく1音楽ファンであり続けたい。松永さんのお葬式で「ずっとファンでいてくれてありがとう!」と泣きながら言ってくれた宮武希さん(松永孝義夫人)と松永さんに恩返しをしたいから。

文:Masataka Koduka

◆松永孝義トリビュート~君がここにいた音楽
◆miaouオフィシャルサイト
◆塚本功オフィシャルサイト
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