【インタビュー】西寺郷太のジャーメイン・ジャクソン直撃「魂抜かれました…」

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12月3日に続く西寺郷太のジャクソンズ来日記念コラム第2弾は、待望の復帰を果たした三男ジャーメインとのインタヴューと、急遽代官山蔦屋書店で行われた「ジャクソンズ/湯川れい子/西寺郷太」のトークショーの話を中心にコラムをお送りします!

(3)ジャーメイン、その「オーラ」。

2012年12月3日(月)、ジャッキー、ティト、マーロン、3人とのインタヴューを終えた僕は、ジャーメインとの再会にいつになくドキドキしていました。

彼にはじめて会ったのは、約4ヶ月前、7月末のこと。湯川れい子さんと訪れたアメリカ合衆国オレゴン州シヌーク・ウィンズ・カジノにおいてのジャクソンズ<ユニティ・ツアー>ステージの舞台裏でした。笑顔の優しいジャッキー、冷静だけど音楽の話になると子供のように目が輝くティト、いつもふざけて周囲のムードをハッピーにするマーロン、これまで何度も会ったこの3人とはかなり違う…、一言で言うと「強烈なスター」としてのオーラを全身から放つ、そこにいるだけでドキッとする存在、それがジャーメインのファースト・インプレッションでした。

話す声もマイケルと同じようにメロウで囁くよう。58歳になろうとしている今もスタイルもルックスも抜群、衣装もゴージャス。セクシーな魅力の固まりのような人で、これは会った人が皆共通して騒ぐほど…、実際蔦屋書店でのイベントでも多くの女性が嬌声を上げていました。

昔からのマイケル、ジャクソンズ・ファンならジャーメインが様々な場面である種の「問題」を起こしてきたことを知っているはずです。前回、説明したジャクソン・ファイヴからの脱退劇などは、彼のおかれた状況から仕方がなかったとは言えますが、良くも悪くもスポークスマン的存在としてタブロイドなどのスポットが当たりやすい彼の存在は、マイケルが成人して以降、彼を中心に比較的平和にものごとを進めることの多かったジャクソン兄弟の中では異端でありました。

しかし、ジャーメインにはソロ・アーティストとしてもヒット曲を持っている、というプライドがあります。所属レーベルの違う彼の存在とある種の「特別扱い」は、マイケル在籍時の1984年「ヴィクトリー・ツアー」でもチームが一枚岩になりにくくしていたのは事実…。そして、1990年代以降もジャクソンズ再結成やニュー・アルバムの話を、ジャーメイン発信で何度聞いたかわかりません。そのすべては途中で立ち消え。嘘をついてもしょうがないので、本当のことを言えば「またジャーメインか」という諦めがファンの間にマグマのように存在しました(苦笑)。

ともかく、色々あったのですが、しかし、実際に会い、兄弟達とステージに立つ彼を観ると「あーーーー、ごめんなさい!!!!ジャーメイン!あなたは素晴らしいーーーーーーー!最高ですー!」と感動してしまうんですよね。やっぱり、何もかもを飲み込むシンガーとしての魅力がある。これは、僕自身、百聞は一見にしかずというか、体感してみなければわからなかったです。オレゴンで観た「リード・ヴォーカリスト」ジャーメインが加わった4人のジャクソンズのライヴは、当初の予想以上にグループとしてキラめいていたのです。是非、ライヴで4人のショーを観て欲しい!

(4)ジャーメインへのインタヴュー

さて、興奮する僕のもとに微笑みをたたえた彼が現れ、インタヴューは、なごやかに進みました。彼は今回のツアーから参加した理由を優しい声でこう言いました。「すべてはタイミングなんだ。マイケルの死は自分にとって、とても悲しく辛い出来事だった。昨年の時点では自分の中でまだ傷は癒えていなかった…。でも、世界中のファンから沢山のeメールや手紙をもらい、直接話して、自分の考えも次第に変化したんだ。マイケルの遺した歌や、ステージング、パフォーマンスを兄弟でまた復活させたい。そして歌うことでヒーリングし、追悼の気持ちを皆と分かち合いたい。それで今回は参加を決意したんだよ」

ジャーメインとは1対1だったこともあり、沢山の深い話が出来ました。モータウン社長ベリー・ゴーディ・ジュニアの愛娘ヘイゼル(前回にも書きましたが、ジャーメインの最初の奥さんになった人です)は、結果的に別れたがひとりの人間として尊敬出来る素晴らしい女性だった。しかし、その後は何人か尊敬出来ない人と付き合ってしまった(笑)とか…。ジャーメインがデビュー・アルバムで何曲かプロデュース・共演し、一躍スターになったホイットニー・ヒューストンと一時期「恋におちていた」とか…(有名な話ですが、本人の口から直接聞くと驚きます)。

そして、僕の「マイケルとジャクソンズ研究」的な話で言えば、1980年代中盤から1990年代初頭にかけてマイケルの音楽的参謀となり、「ブラック・オア・ホワイト」「フー・イズ・イット」「デンジャラス」などのヒット曲に関わったエンジニア兼プロデューサーのビル・ボットレル(後にシェリル・クロウのプロデューサーとしても大成功を収める)をマイケルに最初に紹介したのが、ジャーメインだったことを確かめられたのは貴重でした。現在の視点で見ると、多くの人はマイケルと、ジャクソンズ及びジャーメインとの関係は、天才マイケルに「兄弟皆が影響を受け」「ついていっていただけ」のような印象を持つことが多いかもしれませんが、これはそのような一方的な関係性ではないことを如実に示す一件だからです。

2012年9月に発売された25周年記念盤『BAD 25』。そこに初収録された「スムース・クリミナル」の原曲とも言われる「アル・カポネ」のデモ音源。その曲をはじめて聴いた時、僕はジャーメインが自身のソロ・アルバムで、マイケルと共に1984年にデュエットした「もしかして恋(テル・ミー・アイム・ノット・ドリーミング)」のサウンドにそっくりなことに驚いたのです。当時の典型的な「ジャーメイン・サウンド」がそこにありました。マイケルの新曲だったはずなのに。つまり、「ジャーメインのサウンドかっこいい!」と思っていたんだろうなーと。僕はそんなマイケルを素直に「可愛いな」と思いました。彼らの間にはなんだかんだメディアの流す不仲説などもありましたが、それは本質的には嘘だったことを「アル・カポネ」のサウンドが証明してくれます。嫌いな人のサウンドに似せるなんて、音楽家には出来ないですから。

そのことに僕がふれるとジャーメインはにっこり笑いながら「僕とマイケルは、色々音楽の話をしたよ。お互い影響を与え合ったのは、その通りだね。ただ最終的に僕はマイケルが、その方向に行くなら同じことはやらない。自分なりの道をゆくって。彼も、自分の音楽を極めたい、他とは似たくない。そう思ってたんじゃないかな」と、答えてくれました。今回の「ユニティ・ツアー」の素晴らしさは、実はこのジャーメインの言葉、ポリシーに集約されているような気がします。もちろんダンス、そしてパフォーマンスはジャクソン5、ジャクソンズの系譜そのまま本人達が再現するわけですが、決してジャーメインはこれまでマイケルが歌ってきた曲でも、ヴォーカルをマイケルに似せたりするわけではなく、きちんと「ジャーメイン・ジャクソン」として再構築して、自分のものにして歌っているんです。当然と言えば、当然なんですが、実はこれが出来るのは、マイケルとパートナーとして長年歌ってきたジャーメインだからです。マイケルの代わりは誰もいない、でももしジャクソン・ファイヴや、ジャクソンズの歌を今ステージで歌い継ごうと思えば、ジャーメインしかいないんです。新生ジャクソンズには、まだまだ無限の可能性があると僕は感じています。

インタヴューが終わった後、会場の隅にグランドピアノがあったのですが、なにげなくその前に座り、鼻歌で1分間ほど弾き語りをしてくれたジャーメイン。本当は音楽がしたくて、歌いたくてたまらないのに、そのキャリアとプライドの高さゆえになかなかその場を見つけられなかった、その忸怩たる悔しさや憂いが彼の心の声として聴こえてきた気がして、そしてそれは本当に美しくて…、少年時代からの彼の波瀾万丈の人生に僕は想いを馳せました。ジャクソンズとしてのライヴを一番楽しみにしているのは、彼なんじゃないか、そう思ったんです。

(5)代官山蔦屋書店にて

12月4日、火曜日。夜8時から、代官山蔦屋書店にて、「ジャクソンズ/湯川れい子/西寺郷太」のトークショーが急遽行われることが前日に決まり、ネットのみの告知にも関わらずあふれんばかりのマイケルとジャクソンズのファンが全国から集結。4人との質疑応答あり、アカペラでの歌あり、ハグあり、というファンにとってなんとも奇跡のような体験で、「ジャッキー!」「ティートー!」「ジャーメーイン!」「マーローーン!」「アイ・ラヴ・ユーーー!」「生きてて良かった」「ありがとうございます!!!」と声が響く熱狂と感謝の中、イベントは終了。僕にとっても自分の人生でも指折りの嬉しい瞬間となりました(感涙)。正直、イベント中、あまりの感動で、湯川さんの横でちょっと足が震えてました(笑)。僕、ほんとに緊張したことがないくらい、どんなシチュエーションでも割と余裕で、心臓に毛でも生えているのかと皆に気持ち悪がられるんですが、昨日は別でした。ジャクソンズ、やはり4人揃うと凄いんですよ…。10歳で初めてLP買ったアーティストですから…。魂抜かれました…。

楽屋でも4人は和気あいあい。僕がシンガーで、彼らの曲をほぼ歌えることを知っているジャッキー、ティト、ジャーメイン、マーロンから楽屋で「郷太、ジャクソンズの曲歌ってくれよ」「郷太、次はなんだ」と、もうほとんどジュークボックス状態でリクエストを出してきます。例えば「LET ME SHOW YOU …」と僕が彼らの名曲「ショー・ユー・ザ・ウェイ・トゥ・ゴー」を歌いはじめると、かぶせて「LET ME SHOW YOU THE WAY TO GO…」と一斉にハモってくるんです。で、カモン!ってずっとリード・ヴォーカルのマイケル役で歌わされ、それを色んな曲で、本番まで…。彼ら4人めっちゃ楽しそうで、僕も感激しつつも、なんなんですか。なんなんですか…(涙)の連続で…。あれほどのスーパースター達が、ジャクソン・ファイヴ時代からのまさにレジェンドが、そんなにフレンドリーだなんて信じられるでしょうか?本当に優しい。これは僕にだけでなく、すべてのファンに対しての彼らのスタンスが伝わるエピソードだと思います。

そして、もうひとつ。よくジャクソン兄弟の不仲説やトラブルがメディアを賑わしますが、それは彼らは兄弟でありながら、バンドであり、グループであり、もちろんビジネスパートナーでもあるわけで、多少の意見の相違はあるのが、僕は当たり前だと思っています。ただ、楽屋でも一緒に歌ってハーモニーしている4人は、まさに「デスティニー」で結ばれた一心同体のハーモニーを奏でる信頼し合うチーム。本当に楽しそうな彼らのそういう笑顔こそが、タブロイドやゴシップなどとは別の「真実の姿」だと実感しています。

6日、7日の東京、そして9日の大阪。ライヴが心から楽しみです!

文執筆: 西寺郷太(NONA REEVES)

<ザ・ジャクソンズユニティジャパン・ツアー2012>
今なら間に合う、ジャクソンズ!マイケル・ジャクソンの映像満載のステージ。世界に二つとない、実の兄弟だからこそ実現した奇跡の来日公演
Jermaine (ジャーメイン)Jackson/ Jackie (ジャッキー)Jackson/ Marlon (マーロン) Jackson / Tito (ティト)Jackson
12月6日(木)~12月7日(金)
@東京国際フォーラムホールA
12月9日(火)
@グランキューブ大阪(大阪国際会議場メインホール)

◆<ザ・ジャクソンズユニティジャパン・ツアー2012>オフィシャルサイト
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