【異次元連載】トム・ハミルトンが語るエアロスミスの真実 Vol.13「テンプテーションズとヤードバーズ。ふたつのカヴァー・ソングの背景にあるものとは?」

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『ミュージック・フロム・アナザー・ディメンション!』の日本盤には、15曲の最新オリジナル曲に加え、ボーナス・トラックとしてふたつの興味深いカヴァー・ソングが追加収録されている。ひとつはテンプテーションズの「シェイキー・グラウンド」、そしてもう1曲はヤードバーズの「アイム・ノット・トーキン」だ。これらの楽曲についてもトム・ハミルトンに語ってもらうことにしよう。まずは「シェイキー・グラウンド」について。彼によれば、ドラマーのジョーイ・クレイマーは特にこういったファンキーな楽曲が大好きで、「彼はいつだってジェイムズ・ブラウンやクール&ザ・ギャング、モータウン系の曲をやりたがっていた」と語っている。

◆トム・ハミルトン画像

「なにしろジョーイは元々、モータウン・タイプの曲をやるバンドに籍を置いていたくらいだからね。かつてジェイムズ・ブラウンの「マザー・ポップコーン」とかをやったのも、そこからきてるんだ(注:同楽曲のカヴァーは1978年発表のライヴ・アルバム『ライヴ・ブートレッグ(Live Bootleg)』にも「ドロー・ザ・ライン」への導入として収録されている)。ただ、そもそもそういった理由からではあったけども、ファンク・チューンを演奏するようになって気付かされたのは、バンドがしっかりと素材を“料理”しないといけないってことなんだ。“バンドがクッキングする”なんていうのは、ちょっと古めかしい言いまわしなんだけど、とにかく演奏者全員がそれぞれのパートを完璧に上手くプレイしていて、テンポもばっちり決まっていて、単に正確にプレイされている以上の生命がそこに吹き込まれた状態にすることを、そんなふうに言うものなんだよ。僕たちは大昔からいつも、そうやって時間をかけてクッキングしてきたんだ。で、今回の「シェイキー・グラウンド」は、元々はテンプテーションズのヒット曲だけど、のちにエタ・ジェイムズが取り上げていたりもするんだ。これをカヴァーすることにしたのは、スティーヴン(・タイラー)が、この曲を歌うというアイデアに触発されたからさ。白人の自分にもこういう曲が上手く歌えるんだってことを証明したかったんじゃないかな。彼は基本的に、いつだって自分について証明することが大好きなんだ(笑)」

そして実際、この曲ではスティーヴンの歌唱の見事さも、バンドの“料理”の手腕の高さもしっかりと証明されている。また、ひとつ興味深いのは、この曲にリック・デュフェイがゲスト参加していることだろう。この名前に反応するのはよほどのエアロスミス・ファンということになるかもしれない。彼はジョー・ペリーとブラッド・ウィットフォードがこのバンドに不在だった時代、すなわち『美獣乱舞(Rock In A Hard Place)』(1982年)期にジミー・クレスポと共に籍を置いていたギタリストだ。彼が参加することになった経緯について、トムは次のように語っている。

「そもそも、かつて僕たちにリックを紹介してくれたのがジャック・ダグラスだったんだ。あの頃はジョーがバンドを去り、ブラッドもバンドを去った。だから当然、ギタリストが必要になった。リックはジャックの友人のひとりでね、ジャックが“紹介したい男がいる。かなりクレイジーだけど、君たちにはぴったりだよ”と言って紹介してくれたのがリックだったんだ。彼は実際、驚くべきキャラクターの持ち主だよ。とにかく強烈なヤツなんだ。自分を喜ばせることに長けているというか、楽しいことを表現することについて、ものすごく才能がある(笑)。結果、ジョーとブラッドがバンドに戻ってくることになって、彼とは長いこと離れていたけども、今回のアルバムでまたジャック・ダグラスと組むことになり、ジャックにはいまだに彼と付き合いがあったというわけなんだ。だからリックは何度もスタジオを訪ねてきてくれたよ。彼との付き合いが復活したのは最高だったな。この曲をプレイしていた晩も、まるでパーティーみたいな騒ぎだった」

そうした楽しげな空気が、確実にこのトラックの躍動感に反映されていると言っていいだろう。そしてもう1曲収められている「アイム・ノット・トーキン」について、トムは次のように簡潔な説明をしている。

「これはヤードバーズの曲。言うまでもなく「トレイン・ケプト・ア・ローリン」も彼らのレパートリーだけど、あの曲と同様、この曲についても、僕らはこのバンドを始めた当初から演奏してきたんだ。だからこの「アイム・ノット・トーキン」は、これまでも何度もアルバムに入れようとしてきたんだけど、どういうわけかいつもイマイチの出来だったんだよな。プレイしていて楽しいと思えるような形にすることが、なかなかできなかったんだ。それを今回こうして収録することができたのは、やっぱりこの種の音楽に造詣の深いジャック・ダグラスと一緒にやったことが、理由として大きいかもしれない。いわば彼に励まされながら完成させたようなところがあるんだ。ついにこうしてこの曲を世に送り出すことができて、僕自身も嬉しいよ。是非このトラックにも耳を傾けて欲しいところだな」

蛇足を承知で付け加えさせてもらえば、エアロスミスにとって重要なライヴ・レパートリーのひとつである「トレイン・ケプト・ア・ローリン」は1974年発表の2ndアルバム『飛べ!エアロスミス(Get Your Wings)』に収録されており、バンドとジャック・ダグラスとの関係が始まったのもこのアルバムからだった。

さて、今回をもってトムによる総計17曲の楽曲解説が終了したことになるわけだが、この連載はまだまだ終わりはしない。さて、次回、彼は何を語ってくれるのか? さらなる“異次元トーク”の続きをお楽しみに!

取材/文:増田勇一

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