ザ・ローリング・ストーンズ結成50周年、最も深く知る2人がストーンズの現在を語る Vol.1

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いよいよ本格的に動き出したザ・ローリング・ストーンズ。2012年で結成50周年という節目を迎え、キャリアを総括するベスト・アルバム『GRRR!』。さらにブレット・モーゲン監督によるドキュメンタリー映画『クロスファイアー・ハリケーン』が12月19日にリリースされるが、アニバーサリー・イヤーが終盤を迎えた11月、遂にライヴ活動を再開。ロンドンのO2アリーナ、ニューヨークのバークレーズ・センター、ニュージャジー州ニューアークのプルデンシャル・センターのステージに立った。ニューアーク公演は日本時間12月16日午前11:00にWOWOWで独占生放送、ブルース・スプリングスティーン、レディ・ガガ、ブラック・キーズのゲスト出演が決定している公演だ。

◆ザ・ローリング・ストーンズ画像

常にロック界に集中砲火ハリケーンを巻き起こし続けるストーンズの現在、そしてライヴ、映画、CDなどのプロジェクトを総括するべくして、元レコードコレクターズ編集長であり、『クロスファイアー・ハリケーン』の5万字を超える日本盤解説書も執筆した寺田正典、そして日本唯一のストーンズ・オフィシャル・フォトグラファーの有賀幹夫という、日本におけるストーンズ有識者2大巨頭に話を訊いてみた。

20年以上ストーンズを撮り続けてきた有賀幹夫は、2012年もロンドン2公演を撮影、誰よりも近い距離から彼らを目撃した。その感想は「一言でいって、素晴らしかったですよ!」というものだった。

「5年ぶりの大舞台ということで、事前には不安視する声もあったけれど、前回の『ア・ビガー・バン』ツアーから地続きという感じで、ある部分、さらに凄みが増している。会場は50周年ならではの暖かい、“神聖な祝福感”に包まれていました。ただ、単なるお祭りに終わることなく、“ストーンズの50周年とは何か?”をテーマにして観客に見せつけるステージでした」──有賀幹夫

ロンドン公演のオープニングを「アイ・ワナ・ビー・ユア・マン」(初日)、「ひとりぼっちの世界」(2日目)と、前半5曲をブライアン・ジョーンズ在籍時、1960年代の初期ナンバーで固めてきたのは、やはり“50周年”を意識したものだろう。

興味深いのは、このライヴと映画、CDが有機的に共鳴しあっていることだ。寺田正典は語る。

「『クロスファイアー・ハリケーン』で効果的に使われている「フライト505」が『GRRR!』に収録されたのもそうだし、新曲「ドゥーム・アンド・グルーム」にみなぎる危険で冒険的なイメージは、映画で描かれている初期の彼らを彷彿とさせるもの。お互いにリンクしているんです。ただ、ストーンズは“やりながら考える”タイプの集団だし、全部がキッチリ決まっている印象はない。そんな微妙なズレもまた、彼ららしいんです」──寺田正典

映画『クロスファイアー・ハリケーン』は、まさにそんなストーンズらしさが表れた作品だ。バンドの軌跡を速いカット割りで約2時間で描いた本作、監督のブレット・モーゲンがミックから映画制作の打診を受けたのは何と映画公開の1年前、2011年10月だったという。この映画について、寺田正典はこう語る。

「ストーンズを“素材”にした映画。昔ながらのお行儀の良いドキュメンタリーではないし、資料やデータではなく、理屈を超えた、凝縮されたインパクトを持った作品です。ストーンズの熱さ・濃さが伝わってくるし、1960年代~70年代に彼らが置かれていた混沌を疑似体験できます」

有賀幹夫は、モーゲンがこれほど短期間で『クロスファイアー・ハリケーン』を完成させることが出来た理由について、「モーゲンには、自分の中にある“最高にかっこいいストーンズ”の確固たるビジョンがあった」と指摘する。

「彼の中にあるストーンズ原体験は、危険なロックンロール・バンド。編集途中のラッシュをメンバーに見せると「きっとミックはNGを出すだろうな」と言っていたシーンがいくつもあったそうですが、それらがすべてOKになってしまった。監督は冒険を恐れていないし、気迫が感じられます」

「最近は過去のアーカイヴ映像や音源の発掘リリースが続いて、ミックやキースが懇切丁寧にコメントしたりするけど、元々ストーンズはそんな親切なバンドではなかった。ファンそれぞれが、独自のストーンズ像を抱いていました。世界を飛び回り、行く先々で怒る暴動と混乱が、物凄いスピードで描かれる。そんなモーゲンの描いたストーンズは、メンバー自身にも跳ね返っていった。そうして書かれたのが『ドゥーム・アンド・グルーム』なのだと考えています」

寺田正典が「いきなり剛速球を投げられてひっくり返った感じ。しかも球のスピードが全然違う」と表現する『クロスファイアー・ハリケーン』だが、単なる“勢い”オンリーの映像作品ではない。これまで誰も見たことのない貴重なフッテージ、まったく未発表だったレア音源の数々が、怒濤のように襲いくるという意味でも、まさに“ハリケーン”な作品だ。その詳細については、次回で触れていきたい。

撮影:有賀幹夫(11月25日@ロンドンO2アリーナ)
インタビュワー:山崎智之
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