【異次元連載】トム・ハミルトンが語るエアロスミスの真実 Vol.16「バンドのスタイルが確立された『ロックス』と、絶頂期でありながら地獄への入口にもなった『ドロー・ザ・ライン』」

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筆者は過去、『ゲット・ア・グリップ』が完成した1993年当時にもトム・ハミルトンに電話インタビューをしたことがある。その際にとても印象的だったことのひとつに、彼が『ロックス』(1976年)について振り返りながら、「何もかもが順調に進んだ唯一のアルバム」と語っていた事実がある。そしてその理由については「アルバム収録曲すべてがレコーディング開始以前に揃っていたからだ」と。日本ではこの『ロックス』の35周年記念エディションが2011年11月の来日にタイミングを合わせてリリースされていたりもするが、この機会に改めて、今から19年前の発言の真意について確かめてみた。するとトムは「ちょっとその発言には訂正を加えないといけないな」と前置きをしながら語り始めた。

◆トム・ハミルトン画像

「まず、『ロックス』の全曲がレコーディング開始前から出揃っていたというコメントは正確ではないね。曲自体の構成は完成していたけど、その時点では、スティーヴンのヴォーカル・パートは1~2曲しかできあがっていなかったと思う。だけど、すべてがうまくいったというのは事実さ。ときにはお互い熱くなり過ぎて声を荒げるような場面もあるにはあったけども、全体的にはとても楽しいアルバム制作のプロセスだった。すでにそれ以前に3枚のアルバム制作を経ていたことで、各々が何をすべきか分かっていたし、しっかりプレイできていた。すごくグルーヴするようになっていたんだ。そして同時に、あのアルバムを手掛けたのがジャック・ダグラスだったことも忘れちゃいけない」

前回に引き続き、トムはこの敏腕プロデューサーの貢献度の高さを強調する。

「まさにあの時期、つまり『ロックス』当時というのは、ジャックと一緒に仕事をしながら僕らがエアロスミスならではのサウンドを確立しつつあった時期だと思う。ジャックがその場で手助けをしてくれたことで、みんなのアイデアが採用されることになった。だからこそ楽しかったし、みんな上機嫌だった。ベーシック・トラックはリハーサル・ルームでできあがって、それをレコード・プラントのリモート・トラックに持ち込んだ(注:この作品のレコーディングは、巨大な倉庫に同スタジオの機材を持ち込みながら行なわれている)。そしてそこでの作業が終わると、今度はニューヨークのレコード・プラントに場を移して、そこでオーヴァーダブが行なわれたんだ。実際、スティーヴンはそこでヴォーカル・パートを書き上げたんだよ。あの頃こそが、当時の自分たちにとってはピークだったと思う。ところがその次のアルバム、『ドロー・ザ・ライン』(1977年)になると脱線していくことになるわけだけどね(笑)」

『ドロー・ザ・ライン』当時のエアロスミスがドラッグとアルコールの罠に嵌まった状態にあったこと、その制作過程における彼ら自身の記憶がかなり不明瞭で正確さに欠けるものであることは、メンバーたちも認めている。そしてトムに「一度だけタイムマシンに乗ってエアロスミスの歴史の一部を書き換えることができるとしたら?」と尋ねてみると、彼は即答した。やはり、絶頂期でありながら同時に地獄への入口でもあったその時期についてだ、と。

「もっと正確に言うならば、このバンドにドラッグが入り込んできた箇所というのを書き換えたいね。みんなパーティをして楽しむのが大好きなのは当然だけど、しばらくそういうことを続けていると、馬鹿騒ぎしたいときばかりじゃなく、たとえば朝、ベッドから起き上がるためにドラッグに手を出すようになっていたりすることがある。習慣というか悪癖というか。それが僕たちにとっての、成功の不幸な副産物だった。突然大金が転がり込んできて、メンバーたちも毎日のようには会わなくなり、数ヵ月もの間、お互いに口をきくこともなくなってくる。すると、そういうものに手を出してしまいがちになる。それがまさに、あの頃だった。だから僕は、できることなら『ドロー・ザ・ライン』に関わり始めた最初の頃に戻りたいね。そして、“常にアルバムの曲たちがちゃんとまとまるまでスタジオには足を踏み入れなかった”というふうに書き換えたいよ」

かなり赤裸々な話だが、ここまで堂々と話すことができるのは、エアロスミスの現在が、過去とは違った次元で充実した状態にあるからこそだろう。そしてトムの赤裸々トークは、もうしばらく続く。果たしてこの連載は第何回まで続くのか? 次回をお楽しみに。

取材/文:増田勇一

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