【ライブレポート】ブラント・ブラウアー・フリック・アンサンブル、「ジャズとテクノの境界線を笑いながら軽々と破壊」

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2012年春、日本にも来日したドイツの"人力ミニマル・テクノ・ユニット"ブラント・ブラウアー・フリックのライブを見に行った。2012年12月23日、ベルリン、ローザ・ルクセンブルク・プラッツの劇場、Volksbuhne。

◆ブラント・ブラウアー・フリック・アンサンブル画像

ブラント・ブラウアー・フリック・アサンブル(Brandt Brauer Frick Ensemble)は、エレクトロ・ジャズ・ユニットのスコットで活動していたダニエル・ブラントとヤン・ブラウアーが、ポール・フリックと結成したドイツ・ヴィースバーデンを活動拠点とするユニット。いわゆるミニマル・ミュージックを、独りよがりに電子音楽の打ち込みで演奏するのではなくて、スコアに書き、アコースティックな楽器(ヴァイオリン、チェロ、チューバ、トロンボーン、ヴィブラフォン、シロフォンなど)で10人を超える編成で生演奏するから、”人力ミニマル・テクノ・ユニット”。2011年、アルバム『Mr.Machine』をK7からリリース。

彼らのライブを見るのは初めて。チェロ、ヴァイオリンのピチカート、高温域の擦弦音、楽器のボディを叩く音、管楽器のミュート音などなど生楽器の生音とノイズ、それらの一音一音が放たれる瞬間が大事にスコアリング、そして演奏されていて、それがパーカッシブなグルーヴを作り上げていく。

女性ヴォーカリスト、Erika Janumberがハスキーなトーンで参加するヴォーカル曲などは、例えば、ノーマ・ウィンストンとジョン・テイラー、ニュークリアスとの共演や、カーラ・ブレイのロック・オペラにも通じるヨーロッパジャズの伝統、気品、高貴さを感じさせる。だからこそ、現代のジャズファンにも高く評価される音楽となっているのだと思う。

一転、テクノスタイルで彼らが演奏を始めると、伝統ある大劇場ホールの一階席はダンスホールに姿を変えるから驚きだ。メンバーのほとんどが、正式な音楽教育を受けた音楽インテリであり、彼らの実験は、等身大のスコープで楽しまれながら行われている。頭の硬い古臭いフリージャズとかを軽く蹴散らすような遊びゴロロでそれが行われている。

ジャズとテクノの境界線を笑いながら軽々と破壊するような、そんな痛快さを味わえる素晴らしいライブだった。

文:Masataka Koduka

◆ブラント・ブラウアー・フリック・オフィシャルサイト
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