SPYAIR、5人最後のステージ、感動の日本武道館初ワンマン

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バンド結成、ENZEL☆の正式加入、メジャーデビュー、日比谷野音などワンマンライヴの成功、etc……。開演前、ステージを覆うスクリーンには、2005年から現在までの歴史がダイジェスト的にフラッシュバックする。そう、まさにこの2012年12月18日は、SPYAIRのこれまでの7年間の歴史に、大きな大きな1ページを刻む一日。スクリーンにはさらに、KENTA、MONIKEN、ENZEL☆、UZ、IKEの姿が……。自分の新たな道を探すためにENZEL☆が脱退を発表し、その5人が並び立つ最後の舞台となったのは、記念すべきSPYAIR初の日本武道館ワンマンのステージだ。

◆SPYAIR、感動の日本武道館初ワンマン~拡大画像~

「みんなで歌おうぜ!」。IKEの叫びに導かれて、オープニングナンバー「0 GAME(ラブゲーム)」の大合唱が武道館にいきなり響き渡る。そして、ピアノの美しいリフレインとともにKENTAが躍動的なドラムを刻む中で、ENZEL☆の「1、2、3、4!」の合図と同時にUZは高々とジャンプを決める。かと思えば、IKE、UZ、MOMIKENのフロント3人がファンの目の前まで勢いよく駆け、「Last Moment」と繋いでいく。「かかってこいよ武道館!」。ENZEL☆の叫びの通りに、ダイナミックなサウンドが響き渡る中でファンがジャンプを連発し、早くも大きな一体感で包まれる日本武道館。さらに続いた「Rock'n Roll」もまた、SPYAIRならではの豪快なサウンドが炸裂だ。頭を振って、ぶっ飛んじまって、タフな心とラフな気持ちで楽しもうか! 武道館の光景は、まさに「Rock'n Roll」の歌詞通り。SPYAIRのロックンロールへの初期衝動を凝縮したかのような1曲で、会場の熱気をさらに上昇させていく。

「色んな席で観てる方がいると思うんですけど、みんな一人ひとりの協力がないとライヴは楽しめないんだよね。今日は力貸してくれよ!」(IKE)。そんなメッセージ通り、ファンは常にメンバーと一緒に歌い、ときには激しく叫び、ときには高々と跳ぶ。そして、その両者がどんどん高めていく一体感の中で、「LIAR」を始めとするシングル曲はもちろん、彼らが7年間で作り上げてきた様々な楽曲がこの日のセットリストにはピックアップされた。自身のルーツであるロックサウンドをあくまでも強烈に響かせたうえで、より広いフィールドを目指すために様々なサウンド・アプローチを模索してきたSPYAIR。その音楽性を、この日披露された楽曲ラインナップは凝縮して振り返っているかのようでもあった。

そして、ライヴ中盤では、一緒にライヴをするのが今日が最後となる5人が全員で並び、「My Friend」をアコースティックセットで披露する。それぞれの道を歩いても、離れないMy Friend──。そんな歌詞が、ENZEL☆との最後の舞台に一際強く響く。地元の名古屋・栄のストリートライヴ時代から苦楽を共にしてきた彼らの歴史を知っている人なら、誰もが胸を熱くしたに違いない。そして、再びバンド・セットで迫力の音像を放った「BEAUTIFUL DAYS」もこの日だからこそ、歌詞があらためて心を揺らす。新たなスタート、どんな君も輝いていけるさ──。そのリリックは、ファン一人ひとりへのメッセージであるとともに、この日は、SPYAIRとENZEL☆の“新たなスタート”のためのものだったかもしれない。

アコースティックセットを披露した後は、再びテンションを熱く上げていく。KENTAとMOMIKENのソロ・パフォーマンスに「俺もまぜろーっ!」とENZEL☆が乱入(笑)、サンバのようなホイッスルを鳴らす。かと思えば、「Crazy」はレーザー光線と電子音がシンクロするなかで、ダンスビートを駆使しながらあくまでもロックに攻めるSPYAIRらしいプレイを披露。そんなエネルギッシュなステージに華を添えたのが、SPYAIRの地元の大先輩、そして偉大なるアニキであるSEAMO。「一緒に盛り上げようぜ! “Rock”していこうぜ!」(SEAMO)。SEAMOの高速ラップ、SPYAIR楽器陣のアグレッシブなサウンド、IKEのエモーショナルなボーカルが融合した1曲は「ROCK THIS WAY」。「武道館、声を聴かせて!」(SEAMO)。ジャンル超えのコラボレーションを実現させた、両者の個性が見事に発揮された圧巻のプレイを、ファンの万雷の手拍子と合唱が包む。

「最高だな武道館! ここで、ちょっと懐かしいヤツをやろうと思います。武道館、“夢の向こう”に行きたいんだろ? ついて来い!」(IKE)。俺らが見てた夢の向こうへ行こう──。激しく炸裂する火花とともに幕を開けた「OVER」は、大きな夢を描いて音楽シーンに飛び込んだ彼らが、2009年にインディーズでリリースしたシングルに収録された1曲。そして、その「OVER」を収録したインディーズ時代の作品のタイトル曲であり、2011年に新録されてリリースされた「ジャパニケーション」も披露だ。懐かしいナンバーをかみ締めるように、そして激しくENZEL☆はシャウトをかまし、その叫びが4人の熱気みなぎる演奏を後押しする。

そんな5人の歴史をファンの心へ刻み込む、記念すべき初武道館の最後を飾ったのは「Raise Your Hands」。この1曲もまた、彼らが描く夢を形にした作品だ。「サビの“Raise Your Hands”っていうフレーズが一番最初に浮かんで。で、それは、俺達がいつか見たいと描いている、どデカイ会場で全員が一つになって歌ってる光景だったんですよね」(MOMIKEN)。アルバム『Just Do It』の取材時に、この曲の背景を彼らはそう語っていた。そして、武道館の風景はまさにその言葉通り、ファン一人ひとりが掲げる手と歌声が、ひとつの大きな塊となった。現実の厳しさや様々な壁にぶつかりながら、“夢”を描いて走り続けてきたSPYAIR。その彼らの結成以来の7年間の結晶が、その風景には確かにあった。

それぞれの道を歩いても、離れないMy Friend──。メンバーがステージを去っても、ファンは「My Friend」を合唱する。そして、その手には、有志のファンが開演前に配った紙花が掲げられている。アリーナ、1階席、2階席、会場全体に鮮やかな黄色い色彩が広がる武道館へ、メンバーは感謝を込めたアンコール「I want a place」「サムライハート(Some Like It Hot!!)」、そして「SINGING」を贈る。最初から最後まで、メンバーとファンがひとつになった“SINGING”──歌声に包まれた、SPYAIR初の日本武道館ワンマンライヴ。そのエンディングは、この日を最後にバンドを脱退するENZEL☆との別れでもある。

「明日からSPYAIRは4人になるけれども、SPYAIRが終わりなわけじゃないです。俺は4人のことをすげぇ尊敬してたし、すげぇカッコいいヤツらだと思ってるし、すげぇ小っちゃい力だけどずっと応援してたんですよ。4人になったからって、おめぇらの気持ちは変わんないよな!」(ENZEL☆)。大好きなファン一人ひとりの思いを心に刻んで、ENZEL☆は、脱退表明ともに宣言していた“世界一周”の旅へ出る。それは、武道館ワンマンをするまでになったSPYAIRに負けないように、自分も次のステップへ上がるための新たな旅の幕開けだ。魂を込めて作品を生み出し、ライヴのステージに立つメンバー。それをサポートするスタッフ。そして、歌声と歓声でさらにそれをサポートするファン。SPYAIRを作っている全ての関係は、これからも変わらない。SPYAIRも、ENZEL☆も、それぞれの舞台でステップアップを目指して歩き続ける。

そして、最後にステージに一人で残ったENZEL☆には内緒で、メンバー4人が歩み寄る。「人生なんて勝ち負けじゃねぇと思うから。今後、俺らはこっち(ステージ)が楽しいと思うからやるわけで、こいつはまた新しい楽しさを見つけに世界に行くからさ。ていうことで、俺らからのプレゼント……。行ってらっしゃい!」(IKE)。これから始まる新たな旅のために大きなバックパックをプレゼントされ、ENZEL☆の顔は涙でくしゃくしゃだ。「ENZEL☆のこと、よろしくお願いします。そして、俺ら4人、止まりません。みんなと一緒にできることを探します。楽しいことを今後も考え続けて、大きく言うと……。一緒に人生を歩いていきたいと思ってます。今日はどうもありがとうございました!」(IKE)。この武道館という記念すべき空間を作ったみんなの人生に、そして、これからそれぞれの道を進んでいく“一人ひとりのSPYAIR”の人生よ、幸多かれ!

取材・文●道明友利

◆2013年第1弾シングルリリース決定!
2013年3月13日 ReleaseNew Single「サクラミツツキ」
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◆SPYAIR オフィシャルサイト
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