【ライブレポート】元ギター小僧たちを感涙させた、<LIVE IN TOKYO CROSSOVER NIGHT>

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国内のCROSSOVER/フュージョン系のアーティストが集結したイベント<LIVE IN TOKYO CROSSOVER NIGHT>が、12月29日(土)に東京国際フォーラム・ホールAで開催された。

◆<LIVE IN TOKYO CROSSOVER NIGHT>画像

▲カシオペア3rd
▲PARACHUTE
▲渡辺香津美 ART FUSION
▲鈴木 茂
▲ナニワエキスプレス
▲高中正義 SUPER BAND
トップに登場したのはキーボードに大高清美を迎えた新生、カシオペア3rd。前半3曲は初期の代表曲を、4曲目には新生カシオペアでの新曲「ARROW OF TIME」を披露。ラストナンバーの「ASAYAKE」では、イントロの野呂一生のギター・カッティングが響くと、開演後まだ40分しか経ってないのに、次々に立つ人が表れ早くも場内はヒート・アップ。この熱い洗礼にメンバーも応え、予定されてなかったアンコール曲「ときめき(Tokimeki)」が急遽披露された。

2組目は9年振りの再結成となる音楽職人集団のパラシュート。カシオペア3rdの勢いあるパフォーマンスと打って変わって、こちらはボーカル・ナンバー中心のゆったりとした演奏。上質なウエスト・コースト系の爽やかなAORサウンドを聴いているようで、会場を和ませる。MCでは「何よりも、9年振りに自分たちの曲を聴けるメンバー自身が誰よりも嬉しい!」とコメントした通り、全員がリラックスして楽しそうに演奏してるのが印象に残った。

3組目に登場したのは渡辺香津美 ART FUSION。挨拶代わりにとジョン・コルトレーンの「Impressions」を1曲目に演奏した後は、渡辺香津美、ベースのヤネク・グウィズダーラ、ドラムのオラシオ”エル・ネグロ”エルナンデスの3人の火を吹くようなセッションの応酬が続く。まるで格闘技を見てるようで、実にスリリングなパフォーマンス。圧巻はラストに演ったYMOの「Rydeen」。マニアックな音楽ファンなら思い出すのが、渡辺香津美も参加した1979年の第1回YMOワールドツアー。30年の時を経て幻の名演が目の前で見られるとあって、場内は大興奮。前半はオリジナルのメロディ・ラインに沿って静かに始まったが、後半は各プレイヤーのインプロビゼーションの嵐。特にヤネク・グウィズダーラの弾く5弦ベースは、時には歌うように、時には唸るようにと変化自在で、もはやリズム楽器の域を超えていた。まさに息もつかせぬ濃厚な40分のパフォーマンスだった。

4組目は鈴木 茂。1978年にリリースされた幻のフュージョン・コンピ『NEW YORK』に収められた「KENNEDY AIRPORT」を1曲目に演奏しマニアなファンをくすぐる。中盤はLAで録音の名盤『鈴木 茂 BAND WAGON』(1975)収録曲を3曲、はっぴいえんど時代の「花いちもんめ」など、初期の代表曲を次々に披露。MCでは「第1回の開催以来、このイベントに参加出来るのは僕にとって特別の想いがあります。お琴の音色の季節が近づいてますが、今日はギターの音をたっぷり楽しんでいって下さい」とイベント参加の喜びをコメントした。

5組目にはナニワエキスプレスの登場。デビュー35周年を迎え、この日はキーボード&サックス奏者の青柳誠も復帰して5人揃ってのフルメンバーでの参加予定だったが、ドラムの東原力哉が体調不良で欠席に。急遽、サポートで参加したのは15歳の天才少年ドラマーの平陸君。40歳以上も年齢が離れた大先輩を向こうに、物怖じせず堂々としたスティックさばきで会場の喝采を大いに浴びた。

トリは高中正義。トレードマークでもあるブルーのYAMAHA SGを引っさげ1曲目から大ヒット曲「BLUE LAGOON」を演奏すると、集まった元ギター小僧たちは大騒ぎ。黙々と代表曲を弾き続ける姿は孤高のギタリスト然としているが、MCではトーキング・モジュレーターを使って可愛い女性の声でトークと、意表を突く。ここまで5組のアーティストが出演し、そろそろお客さんも疲れているだろうと、こんなお茶目な演出で会場を和ませる。そんな女性ボイスのままで「高校の時によく聴いてた曲やります!」と大真面目に紹介し演奏したのは、キング・クリムゾンの「21世紀のスキッツォイド・マン」!

凄まじいまでに炸裂するギターがステージを縦横無尽に跳び回り、ボコーダーを使ったボーカルまで披露する大奮闘。フュージョンの印象が強い高中だが、実はギタリストとしてのキャリアのスタートはサディスティック・ミカバンドだけにロック・ギターも違和感なし。この鳥肌がたつほどの圧倒的なかっこ良さには、フュージョン・イベントでの掟破りのプログレッシブ・ロックにも関わらずオーディエンスは最高潮に盛り上がる。続いて「TROPIC BIRD」「READY TO FLY」と畳みかけるようにヒット・ナンバーを演奏し圧巻の40分のステージを降りた。

この日会場に集まった観客4500人の9割は男性。その殆どが1980年代にフュージョンにどっぷり浸ったR40世代の元ギター小僧たち。転換時間には男子トイレに行列が出来るというあり得ない光景も。全6組、5時間30分にも及ぶ長丁場だが、スタンディングではなく全席指定席という環境に年末のお休み時期の開催は、この世代を多いに満足させたに違いない。若年世代向けのフェスとは真逆だが、こういうスタイルが2013年には増えていくだろう。7年振りの開催というこのイベント、2013年も是非開いてほしいものだ。

<LIVE IN TOKYO CROSSOVER NIGHT>2012年12月20日@東京国際フォーラム・ホールA
●カシオペア3rd(野呂一生/Guitar、鳴瀬喜博/Bass、大高清美/Keyboards) support Drums/神保彰
1.DOMINO LINE
2.TAKE ME
3.BLACK JOKE
4.ARROW OF TIME
5.SET SAIL
6.THE SKY
7.ASAYAKE
8.ときめき(Tokimeki)
●PARACHUTE(安藤芳彦/Keyboards、井上鑑/Keyboards、今剛/Guitar、斉藤ノヴ/Percussion、林立夫/Drums、マイク・ダン/Bass、松原正樹/Guitar)
1.Agatha
2.Switch-Blade Hero
3.If You're Looking For Love
4.Miura Wind 
5.Jasmine
6.Hercules
7.The Dealer
●渡辺香津美 ART FUSION(渡辺香津美/Guitar、Janek Gwizdala/Bass、Horacio"El Negro"Hernandez/Drums)
1.Impressions
2.Shang-Hi
3.Unicorn
4.Manhattan Flu Dance
5.Rydeen
●鈴木 茂(鈴木茂/Vocal・Guitar、田中章弘/Bass、Dr.KyOn/Keyboards、柴田俊文/Keyboards、坂田学/Drums)
1.KENNEDY AIRPORT
2.砂の女
3.花いちもんめ
4.スノーエキスプレス
5.100ワットの恋人
6.HOT BLOODED
7.夜更けにベルを押す時は
●ナニワエキスプレス(清水興/Bass、岩見和彦/Guitar、中村建治/Keyboards、青柳誠/Keybords・Sax)support Drums/平陸)
1.1.2.3
2.MANHATTAN EXPRESS
3.BETWEEN THE SKY AND THE GROUND
4.SPOT
5.メドレー:RED ZONE~KOYA SAMBA~CHARCOAL BREAK JASMIN~9th MOUNTAIN HIGH~BELIEVIN'
●高中正義 SUPER BAND(高中正義/Guitar、斉藤ノヴ/Purcussion、岡沢章/Bass、宮崎まさひろ/Drums、小島良喜/Keyboards、重実徹/Keyboards、稲葉なるひ/Guitar)
1.BLUE LAGOON
2.THUNDER STORM
3.GUITAR WONDER
4.SAUDADE
5.21世紀のスキッツォイド・マン
6.TROPIC BIRD/07.READY TO FLY

◆<LIVE IN TOKYO CROSSOVER NIGHT>オフィシャルサイト
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