【ライヴレポート】THE BACK HORN、ファンと共に作り上げた濃密な時間@日本武道館

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ステージと客席という距離を超えて、生命の鼓動がじかに伝わってくる真摯なロック。1月6日(日)、THE BACK HORNは約3年半ぶりとなる2度目の日本武道館のステージに立った。

◆THE BACK HORN@日本武道館~拡大画像~

9枚目の最新オリジナルアルバム『リヴスコール』を携えて2012年9月からスタートした<「KYO-MEIツアー」~リヴスコール~>は4ヶ月以上にも及んだ。2001年にシングル「サニー」でデビューを果たして以来、ライヴと作品を軸にひたむきで実直な姿勢で全国各地に音楽を届け続けてきた彼ら。曲のイントロを演奏するたびに大歓声が上がった2008年の初武道館は、その実力で勝ちとったステージだった。

開演時間の18時。機材以外、何も置いていないシンプルなステージ。やがて客電が落ち、拍手と歓声の中、スクリーンに心電図のようにも見える白い複数の線が映し出され、その線がさまざまな方向に伸びていく。やがて木々や動物たちが描き出され、1枚の絵が完成に近づく中、ほの暗いステージにメンバーが登場し、“ウォーッ”というどよめきが。

オープニングはアルバム『リヴスコール』の1曲目「トロイメライ」。心を震わせる歌と音に言いようのない感動が武道館を包んでいく。続いて演奏された「シリウス」も圧巻だった。ダイナミズムと繊細さを兼ね備えたメリハリのある表現。“立ち尽くすあなたの為 今何ができるのだろうと歌う山田の声が胸を刺す。菅波(G)、岡峰(B)、松田(Dr)の鳴らす音の1つ1つに魂が宿っているのをひりひりと感じる。「声」では、菅波が上手で煽り、山田も岡峰も伝えたい想いを全身で表現している。まるで生きている証を刻むように奏でられる曲たち。

「こんばんは。THE BACK HORNです」

松田がドラムから立ち上がって、まずは新年の挨拶。「『リヴスコール』というタイトルには生きている実感を味わいたいという想いも込められています。今日はみなさんと一緒に濃密な時間を作っていきたいと思います」

THE BACK HORNのマニアックでコアな世界がバクハツする「墓石フィーバー」、生き物のようにうねるグルーヴに血が騒ぐ「グレイゾーン」、劇場版「機動戦士ガンダム00」の主題歌に起用された「閉ざされた世界」では、絶望の淵で“運命を切り拓け”と山田が叫ぶ。

「いつものドアを」で始まった中盤は、じっくり聴かせるセクション。青い光に包まれるステージで歌われるのは、近くにいる大事な人の存在に気づかずに全てを失った男の歌。THE BACK HORNの音楽は人間のどうしようもない部分、愚かな性をも浮き彫りにする。無力だったり、カッコ悪かったり。それらも全部すっぽり包みこんだ上で、生命を輝かせてみせる。

イントロで歓声と溜め息がもれた名曲「美しい名前」は切なくて、まるでショートムービーを見ているかのような説得力があった。山田の歌も演奏も確実に深みを増している。

2度目の武道館に立つ感想が飛び出したMCでは、岡峰が「緊張感がありますね。(心臓が)バクバクいってる」と言うと菅波が「俺なんか、さっき脇の下がつったからね」とみんなを笑わせ、リーダーの松田は東日本大震災の後に制作したアルバムのことに再び触れ、「俺たちの音楽がちょっとでも支えになればという願いをこめて作った」と想いを語った。

鎖につながれた犬に視点を当てることで、自由の意味に迫っていく「自由」、ファンクのビートを取り入れ、間奏でジャムセッションのごとくメンバーのかけあいで盛り上がった「星降る夜のビート」とライヴは早くも後半戦。代表曲の1つ「コバルトブルー」や、「戦う君よ」など胸の奥が熱くなる曲がたて続けに演奏され、客席もメンバーの名前をくちぐちに叫び、武道館は完全なる解放モードへ。

「本当に嬉しいです。みんなと頻繁に会うことはできないけれど、俺たちはいつでもステージの上にいるから。いいことばっかじゃないけど、またワーッとやりに来てくれよ。俺らもみんなから力をもらってます」

そんな山田のMCもじわっとさせ、本編最後は震災直後にチャリティシングルとして配信され、のちにアルバムに収録された愛あふれる「世界中に花束を」。スクリーンにはメンバーと一緒に歌うみんなの姿が映し出された。

4人がステージを去った直後から大アンコール。音楽の力を信じている彼らだからこそ生まれた曲「ミュージック」、男気がみなぎる「刃」、「サイレン」など計4曲が披露された。

なお、武道館はファイナル公演ではなく、THE BACK HORNは東北沿岸部(宮古、大船渡、石巻)の3箇所のライヴハウスでツアーを締めくくる。2月6日には今回のツアーのライヴ音源を収録したCDが、3月27日には武道館公演のもようを収めたライヴDVDが発売される。今年も彼らの素晴らしい音楽は鳴り止むことがないだろう。

取材・文●山本弘子
撮影:ほりたよしか

◆THE BACK HORN オフィシャルサイト
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