【新アルバム詳細レビュー】GLAY、初セルフ・プロデュースの11thアルバム『JUSTICE』

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2012年7月、大阪・長居スタジアムで開催された<GLAY STADIUM LIVE 2012 THE SUITE ROOM in OSAKA NAGAI STADIUM>は、2日間で10万人を動員するスペシャルなものだったが、そのアンコール、彼らはさらに会場のファンをあっと驚かせた。2012年から、2014年のデビュー20周年記念へ向けた予定を公開したのだ。“7 BIG SURPRISES”と題されたこの発表は、(1)2012年12月5日(水) 46th&47thシングル「JUSTICE [from] GUILTY」「運命論」2枚同時リリース!、(2)2013年1月23日(水) 11th&12thアルバム『JUSTICE』『GUILTY』2枚同時リリース!、(3)2013年2月全国25万人動員「GLAY ARENA TOUR 2013 "JUSTICE & GUILTY」開催!、(4)2013年「GLAY ASIA TOUR 2013 "JUSTICE & GUILTY"」開催!、5月25日(土)香港:アジアワールドエキスポアリーナ、6月1日(土) ソウル:オリンピック・ジムナスティック・スタジアム、6月15日(土) バンコク:インパクト・アリーナ、7月6日(土) 台北:南港展覧館、(5)2013年7月27日(土)&28日(日) 函館・緑の島野外特設ステージにて、ライブ開催!、(6)デビュー20周年ドーム公演開催!、(7)2014年 GLAY EXPO開催! 開催地は東北!、というビッグニュースだった。

◆GLAY、11thアルバム『JUSTICE』~拡大画像~

「僕たちはこれからもずっと、約束を守るバンドとして活動していきます」と、この日のステージ上で宣言したGLAYが果たす2つ目の約束。それが2年3ヶ月ぶりとなるオリジナルアルバムの2枚同時リリースだ。これまで10枚のオリジナルアルバムをメジャーリリースしてきた彼らだが、2枚同時発表は自身初となる。タイトルは『JUSTICE』と『GUILTY』。2012年夏に発表されたHISASHIのシグネイチャーギターの名前が“Justice”であり、それとはカラーリング反転バージョンの制作中ギターが“Guilty”――アルバムはその2つの名称を基にしたものだった。“正義”と“罪”という相反する両極にして、表裏一体の二面性をうかがわせるタイトルだ。

◆『JUSTICE』

12thアルバム『GUILTY』はこれまで通り、共同プロデューサーに佐久間正英氏を迎えて制作されたものだが、11thアルバム『JUSTICE』は、1994年のデビュー以来、初のセルフ・プロデュースとなる。しかしこれは、20周年を迎えるGLAYがメンバー自身の手による純度の高いアルバムを制作した、というシンプルな理由のみによるものではない。プロデュースおよび楽曲アレンジをメンバーだけで行なったことはもとより、エンジニア&ミックスに小西康司氏を迎えたことが、『JUSTICE』というアルバムの制作に大きく作用したようだ。

小西氏はレコーディング/ミキシング・エンジニアとして、RCサクセション、THE STALIN、THE MAD CAPSULE MARKETS 、RIZE、AA=など、日本ロックシーンをリードするサウンドを作り出してきた。HISASHIとTERUによるrally(BUCK-TICK20周年記念トリビュート・アルバム参加プロジェクトにて「悪の華」をカバー)でエンジニアを担当、HISASHIを中心としたプロジェクトACE OF SPADESで再び合流した小西氏は、シングル「JUSTICE [from] GUILTY」のエンジニアを手掛けることとなった。当初は同シングルを含む数曲のみの予定だったが、メンバー自身がそのサウンドに新たな可能性を感じたことをきっかけとして、アルバム『JUSTICE』制作にまで発展したという。楽曲自体はたくさんあったとはいえ、アルバム1枚ぶんをレコーディングすることになったことからも、GLAYと小西氏の相性の良さや信頼度は推して知るべしといったところだろう。

そのサウンドは生々しいバンド感に溢れている。ラウドとデジタルの絶妙なサウンド処理、ダイナミックなサウンドに不可欠な分離感、そして音抜けは素晴らしく、まさに現在のGLAYが求める質感がそこにあったようだ。そうして完成したアルバム『JUSTICE』は、結果、バンドの新たなサウンドを引き出すことに成功している。

『JUSTICE』はJIRO作曲による「WHO KILLED MY DIVA」で幕を開ける。この軽妙なロックナンバーは古きロックンロールのテイストを感じさせる作風で、オープニングから虚をつかれたリスナーも少なくないはずだ。HISASHIとTAKUROが絡み合うルーズなギターワークや、抑揚の効いたリズムアプローチが新しいGLAYの始まりを雄弁に物語るようだ。続く「ROUTE 5 BAYSHORE LINE(album ver.)」は、先行リリースされたシングル「運命論」収録曲のアルバムバージョン。よりテンションの高いサウンドメイクやBPMを上げたビート感、そしてシンプルでストレートなバンドアンサンブルがライヴ感を増幅させて、楽曲をパワフルなものにしている。シングル収録曲と聴き比べてみると、このアルバムの持つサウンド的なテーマが浮かび上がるようで実に興味深い。

また、すでにシングルリリースされている「JUSTICE [FROM] GUILTY(album ver.)」「運命論」に加えて、「傷だらけの太陽」には、凛として時雨のドラマーであるピエール中野が参加。一聴してそれと分かる鋭くスリリングなドラムプレイは彼ならではのものだ。GLAYと気鋭ドラマーが同等の立ち位置でせめぎ合うエネルギッシュなサウンドは心地よく、バンドのイメージを一歩も二歩も押し広げるようですらある。さらに収録全10曲は、メンバー4人それぞれが作曲したナンバーを収録していることもあって曲調はさまざま。個性際立つバラエティーに富んだ楽曲群も『JUSTICE』の魅力だと言えるだろう。

バンドスタイルを中心に貫かれたアルバムは、そのぶん、いつも以上に各プレイヤーの姿が見える仕上がり。それでいてそれぞれの楽曲が持つ世界感は、単にフィジカル溢れるサウンドに落ち着いているのみではない。メンバー個々のアイデンティティが交錯して、サウンドにはテンションの高い表現が充満している。『JUSTICE』というアルバムは、メンバーの息づかいを重ねて生み出されるグルーヴを収録した作品と言えるかもしれない。

音楽をどう消化してみせていくかは、バンドの方法論によってさまざまだ。今のGLAYは高みを希求し、そのためにはこれまでの集大成=『GUILTY』も、新機軸=『JUSTICE』も、一気にみせてしまう潔さ、もっと言えば、ためらいなく先へ突き進む覚悟があるような気がしてならない。そして、それらが自らに新たな刺激をもたらすことを自覚しているのだろう。

サウンド的にもアレンジ的にも方法論の異なる2枚のアルバムだが、TAKUROがこれまで磨き上げてきた言葉、そしてメロディがここには存在する。突き刺さるような言葉の向こう側にも、ポジティブな意志が透けてみえる。もちろんTERUのボーカルは、そのまま揺るぎないGLAYスタイルとして息づいている。そして、この2枚のアルバムはGLAYがミュージシャンとして、一番出したかった音を素直にカタチにした結果の2枚であることに疑いの余地はない。このアルバムを掲げて、彼らは3つ目の約束となる25万人規模のアリーナツアー<GLAY ARENA TOUR 2013 “JUSTICE & GUILTY”>を開催する。2枚のアルバムに収録された音源が初めて生身をさらす場所となるライヴが、今から楽しみでならない。

うたパスでは1月29日から2月6日の8日間、2枚のアルバム『JUSTICE』『GUILTY』から20曲に加え、厳選した10曲を加えた合計30曲を、チャンネル名「新作リリース記念! GLAYスペシャル」として期間限定で提供している。ツアーの初日となる2月23日の大阪城ホール公演まで、これらの楽曲を聴きながらステージを想像するのもいいだろう。いままでAndroidのみ対応だったものがiPhoneとiPadにも対応になっている。

11thアルバム『JUSTICE』
2013年1月23日発売
CD DVD \3,500(税込) PCCN-00005
CD ONLY \2,500(税込) PCCN-00006
1.WHO KILLED MY DIVA
2.ROUTE 5 BAYSHORE LINE(album ver.)
3.PARADISE LOST
4.LOVE IMPOSSIBLE
5.真昼の月の静けさに(映画「草原の椅子」主題歌)
6.gestalt
7.JUSTICE[FROM] GUILTY(album ver.)
8.傷だらけの太陽
9.運命論 (日本テレビ系「スッキリ!!」1月テーマソング) (うたパス×au Exclusive Live 企画テーマソング)
10.SMILE
DVD
RX-72 -JUSTICE EDITION-
・HISASHI &茂木淳一による「RX-72」(MUSIC ON! TV)のスペシャルプログラム「JUSTICE編」
・メンバー別にレコーディングエピソードや対談にて『JUSTICE』を徹底解剖
・2012.12.10 Zepp DiverCity公演より「Route 5 Bayshore Line」「Time for Christmas」「運命論」
「JUSTICE [from] GUILTY」を収録
・HISASHI&茂木淳一によるJUSTICE&GUILTY TALK
※2月から行われる全国アリーナツアーのチケット先行予約封入

◆GLAY×うたパス特集サイト
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