【ライブレポート】悲しみは消えない。でも、変わらず愛していくと、心に誓えた夜。<Raphael 再演『天使の檜舞台 第二夜 黒中夢』>

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そして。
アンコールは「Dear」から始まった。ステージ後ろには華月の映像。YUKIは、後ろに流れる映像と同じように、あの頃と同じように、上手に居る華月と向き合って唄を届けたのだった。

みんな三十路になったと言うのに、華月だけは10代のまま。少しズルい。

しかし、きっと華月は、こう言うだろう。

“なんか、みんな上手くなってるのに、僕だけあのときのままってズルくない?”と───。

ぎこちなくアームを引き寄せる、初々しいギタープレイが愛おしかった「拝啓ナーバス」。このとき、華月が残したこの曲が、今回音源化されて本当に良かったと、3人に改めて感謝した。

「ビデオテープは、食べ物と同じで賞味期限みたいなもんがあるんだよ。だからね、当時のまま、そのままほおっておかれたら、今、ここに華月の映像はないの。でもね、ちゃんと1年ごとにダビングして、色褪せないように守ってきてくれた人がいたから、こうしてこの映像をここに持ってくることが出来たんだよ。本当に嬉しいよね。本当に、こうして力を貸してくれたスタッフにも、こうして集まってくれたみんなにも感謝します。本当にこの再演を決断して良かった。忘れなくていいんだよ。愛して。悲しみは消えないけど、でもね、勇気をもって振り返ってみれば楽しかった思い出の方が多かったの。メンバー4人で馬鹿騒ぎした楽しい思い出が蘇ってきたの。だからね、皆の不要な苦しみは全部回収しようと思ったの。もう苦しまなくていいからね。4人で一度もライヴで演奏出来なかった曲、やらせてよ」(YUKI)

そう言って、彼らは12年前の今日、11月1日にリリースされた「秋風の狂詩曲」を届けてくれたのだった。

「自分たちの曲ながら、いい曲多いんだよね、Raphaelって。古くなってない。ありきたりなコード進行でも、すごく耳に残るんだよね。当時はブーブー文句言いながら歌ってたけど(笑)、アイツは、本当にすごい天才だったんだなって思う。今、それを素直に認めて尊敬している。あの頃はね、そんな華月が羨ましかったんだ。だから、素直にすごいって言えなかった。それに、歌詞も書かせてくれなかったし(笑)。でも、一貫性を持たせるために、カラーがブレないために歌詞は全部自分が書かなくちゃいけないんだって、必死で頑張ってたんだよ、アイツ。本当に今になって思えば、認めてあげられるんだよね。あ、なんでこんなに上から目線な話し方なのかって言ったらね、同じ歳だったのに、気付けば、もうアイツよりも12歳もお兄さんになっちゃったから(笑)。当時は華月が求めてる高い声が出なくて必死に歌った。ツアーとかだと限界がきちゃって、喉に注射打ちながら頑張って歌った。認められたかったんだ。華月に。でも、あれから12年。随分と声色も変わったけど今なら、華月が求めてた高い声も平気で出せるんだよ。おのおの諦めずに経験を重ねてきて良かったよ。だから今がある。みんなもどうか、笑って帰ってね───。いくつ“ありがとう”を言っても足りないよ。本当にありがとう。すごくすごく素敵な2日間でした」(YUKI)

そんな言葉の後に届けられたのは「eternal wish~届かぬ君へ~」。Raphael初のオリジナル曲。この曲の作曲者はYUKI。

華月は、この曲をYUKIが初めて聴かせたとき、最高の笑顔を見せ、興奮気味に“すごいすごいすごい!”と、なんども“すごい”を連発し、大喜びして褒めてくれたと言う。そして、早くも翌日には歌詞を乗せて形にしてきてくれたのだ。

華月も同じ。YUKIを尊敬し、愛していたのだ。

そんな話を思い出しながら聴いたこの日の「eternal wish~届かぬ君へ~」は、いつも以上にまっすぐに心に響いた気がした。

そして。ライヴのフィナーレは、ゲストギタリストを呼び込み、「タッチ」と「夢より素敵な」で締めくくられたのだった。

上半身裸になって、楽しそうに「夢より素敵な」のギターを弾く華月。やせっぽっちな映像の中の華月は、客席の後ろの方のオーディエンスに、必死で手を振っていた。優しかった華月。

そんな華月に無意識のうちに話しかけていた。

  ◆  ◆

華月。ちゃんと見てた?
YUKI、YUKITO、HIROの想いと、君のことをこんなにも愛してくれている大勢のファンたちの想い、ちゃんと届いた?

今もなお、こんなにも愛されているということを、しっかりと胸に焼き付けてね───。

そして。改めて言わせてもらうよ。
Raphaelは、華月が言っていたとおり、やっぱり最高のバンドだね。

  ◆  ◆

「でしょ~っ!」目をキラキラさせて、自慢げにそう答えるのが眼に浮かぶ。そして、すべてのRaphaelにこう言うだろう。

“愛してくれてありがと~”と───。

「12年間、夢見ていたこの時間をありがとう。そして。Raphaelの音楽を、そして華月を愛してくれてありがとう。たくさんのリスクを背負って、ありったけの勇気を持って、思い切ってやって良かったよ。本当にありがとう。華月の言葉を借りて言うならば、“出逢いの奇跡”は存在すると言うこと。本当にそんな奇跡を感じました。ありがとう。本当にありがとう。また逢う日まで───」(YUKI)

そんなYUKIの言葉で2日間の再演は幕を閉じた。

ステージで硬く握手を交わし、熱く抱き合う3人。最後、YUKIは昔のようにマイクレスで“ありがとう”と叫び、両手を胸の前からまっすぐ前に伸ばし、その手を左右に大きく広げた。

2012年11月1日22時29分。
「eternal wish~届かぬ君へ~」が会場に流れる中、ライヴは終わった───。

12年という時を経て、YUKIとYUKITOとHIROと多くのファンたちと、そして、華月を産んでくれたご遺族に笑顔が戻ったことが、なによりも本当に嬉しかった。

悲しみは消えない。
でも、変わらず愛していくと、心に誓えた夜だった。


取材・文●武市尚子
写真●逸見隆明
◆VARKS
◆オフィシャル・サイト
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