【ライブレポート】MO'SOME TONEBENDERの百々、凛として時雨の345、L'Arc~en~Cielのyukihiroによるgeek sleep sheepが初ワンマンを開催、約1時間20分全14曲を詳細レポ

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geek sleep sheepが3月26日、東京・渋谷CLUB QUATTROで初のワンマンライヴ<confusion bedroom>を開催した。注目のトリオによる約1時間20分の模様をレポートしよう。

◆geek sleep sheep画像

L'Arc~en~Cielのドラマーyukihiro、凛として時雨のヴォーカル&ベース345、MO'SOME TONEBENDERのヴォーカル&ギター百々からなるトリオバンドが、geek sleep sheepだ。3人が初めて同じステージに姿を現したのは、2012年8月に開催されたacid android主催オールナイトイベント<acid android in an alcove vol.5>でのこと。完全シークレットによるショートライヴは、My Bloody ValentineやThe Smashing Pumpkinsのカヴァーも演奏されたものの、数曲のオリジナルナンバーがバンドの持つポテンシャルの高さを証明するものとなっていた。

それから約3ヶ月後の大阪・梅田クラブクアトロは、geek sleep sheepというバンド名を公表しての本格始動ライヴであり、続いて出演した年末のイベント<DECEMBER'S CHILDREN>は、二回目の正式ライヴにして武道館という大舞台で彼らの存在を満員の観衆に広く知らしめるものとなった。そして迎えた初ワンマン。L'Arc~en~Ciel、凛として時雨、MO'SOME TONEBENDERなど、それぞれのTシャツ姿のファンも見受けられる渋谷クラブクアトロの空気は、期待に膨らむオーディエンスのざわめきが象徴するように熱い。

定刻を少し過ぎた頃、暗転した場内にニーナ・シモンの「Feeling Good」が響き渡る。ステージ背後のスクリーンには、ライヴタイトルである<confusion bedroom>の文字や日付場所が映し出され、それらがメンバー名に切り替わると、まずは345がステージに姿を現した。ピアノで静かな和音を奏でる345、というオープニングにいきなり驚かされたが、続いて登場した百々がそこに幻想的なギターを乗せ、最後にyukihiroがリズムをかぶせる。物語の序章を感じさせる始まりが粋だ。しかし、ベースを肩に掛けた345がyukihiroとアイコンタクトをとると、そこから楽曲を一気に轟音世界へ加速させる。なんというラウドさ。キックの定位は低く、それに絡むベースが重くウネる。サイケデリックに浮遊するギターは会場をトリップさせるように心地好い。このインストナンバー1曲だけで、バンドの破格な力量がうかがい知れるというものだ。疾走する8ビートが爽快な「イマジネーション」、男女ツインヴォーカルの対比と融合が絶妙な「ラストシーン」と、これまでのライヴでも披露されたことのあるナンバーを立て続けに演奏したところで、この日、一発目のMCは百々から。

「初めまして。二度目まして。三度目ましての方もいらっしゃるかもしれませんが、geek sleep sheepでございます。今日は初めて聴くという方もたくさんいらっしゃると思うので、楽しんで帰っていただければ」

彼らにとって三回目の本格ライヴにして初ワンマンとなるこの日のステージは、音源リリースのない状態で行われたもの。セットリストには“new song”のタイトルが並び、その合間を縫うように3曲のカヴァーが演奏された。ひとつは百々曰く、「オリジナルを中心に今日は演るんですけど、まぁみなさん僕らの曲を知らないと思うので。1曲、この日のために誰もが知っているナンバーを」と披露されたニルヴァーナの「Smells like teen spirit」であり、それ以外の2曲は梅田クラブクアトロ公演でもカヴァーしたストロベリー・スウィッチブレイドの「Since Yesterday」とマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの「When You Sleep」だった。この選曲からも彼らの音楽性の一端を感じ取ることができるだろう。語弊を恐れずいえば、オルタナティヴやニューウェイヴ、UK/USインディーの匂いを嗅ぎ取れるはずだ。しかし、中盤に披露された「ジーザス」や「GOHAN」のように、キャッチーな要素をたっぷり含んだギターリフを基軸に変拍子が進行していく楽曲や、どこまでも突き抜けるポップ感と“猫ニャンニャンニャン 犬ワンワンワン”というこの上なくキャッチーな歌詞を持つ「SANPO」などは、ジャンルの概念を木っ端微塵に吹き飛ばしていくようで痛快でもある。

ステージ上は実にシンプル。背後のスクリーン以外の飾りがないなか、メンバーは互いの呼吸を感じながらプレイに集中していることが見て取れる。時に微笑みを交わしながらの息の合わせ方にはバンドを楽しむ余裕すら感じられた。また、345によるアルペジオ奏法やコード弾きなどのギター的なアプローチはサウンドをより厚いものにしていたが、この際、プレイの細部に触れてもしかたがない。会場が熱く奮えたのは、3人が3人で出し得るはずのない膨大なエネルギーまでも放出していたからだ。ただ一点だけ、あえて記しておきたいのがyukihiroのドラムセット。彼のドラムといえば、2バスにロートタム、左右から高く突き出したチャイナシンバルといった要塞型セットを思い浮かべるところだろうが、このバンドで使用しているセットは、1バス1タム2フロアの至ってシンプルなもの。これだけでもyukihiroの異なるスタイルを感じることができるだろう。

また、白く長いパジャマ姿が定番となっていたgeek sleep sheepだが、この日のステージは違った。yukihiroは白いTシャツ、百々は黒いジャケット、345は黒のチュニックという出で立ち。<confusion bedroom>に、もはやパジャマの存在はない。フロアからの「パジャマは?」の問い掛けに対して、「パジャマはどっかいっちゃった」(345)、「使いすぎてヨダレとかがいっぱい着いちゃって、これから新しいやつでいこうかなと」(百々)と答えていたのが印象的だった。

「geek sleep sheepをこれからもよろしくお願いします。いい曲をたくさん作って、頑張りたいと思っております」

百々がそう告げて演奏された最後の曲は、345のヴォーカルをメインに、百々のコーラスがサビで交錯するメロウなミディアムナンバーだった。淡々とした8ビートに乗せた2人の澄んだ歌声が優しく、こうしたナンバーにこそgeek sleep sheepの持つ美しい側面が描き出されるようで、実に多彩なサウンドを一夜にして味わうことができた。

約1時間20分、全14曲のワンマンライヴはこれにて終了。しかし、メンバーがステージを去ったあと、この日最後に演奏されたナンバーが音源として会場に流れた。スクリーンには“I hope your dream is the same as mine.”というサビの歌詞が映し出され、客席はその美しきメロディに身体を委ねている。geek sleep sheepは現在のところ、今後の予定が発表されていない。ただ、この日演奏した全14曲中の11曲が彼らのオリジナルナンバーであり、すでにスタジオレコーディングされている曲があることも予想される。これほど聴き手の創造力を掻き立てるバンドの音源に、早く触れてみたいと感じさせられる夜だった。

取材・文:梶原靖夫(BARKS編集部)
撮影:岡田貴之/石川浩章

◆geek sleep sheepオフィシャルサイト
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