【ライブレポート】メンバーの心が一つに結束。√5の始まりは今?

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1stアルバム『ROOT FIVE』を持って、1月~2月にかけて行われた全国ファン・ミーティング・ツアー<√5 -ROOT FIVE- TOUR 2013 Fan Meeting Side ~ボク時々、パネル~>。その勢いを手に、3月よりスタートした全国ツアー<√5 -ROOT FIVE- TOUR 2013 Band Live Side>。その最終公演が、4月14日(日)に渋谷公会堂で開催になった。

◆√5画像

「ネットからリアルへ」。今では、極々ありふれた言葉だ。同じく、「ニコ動から飛び出した」という表現も、数多くの表現者たちへ付けられた代名詞となっている。√5に対して、いまさらそんなフレーズは使いたくはない。それよりも大切なのは、デビューから1年強で、リアルに、ここまで全国的な支持を得てきた理由だ。

これまでも数多くの表現者たちが、「ネットからリアルへ」と謡いながら、思ったほどの成果をあげられずに低迷してきた。じゃあ、なぜ√5は渋谷公会堂をフルハウスにするほどの人気を得るまでに成長してきたのか?答えは至極簡単だ。「リアルで求められるべき人たちが、ネットにいた」。ただ、それだけのことである。大勢の人たちが√5を求めたのには、「LIVEであるべき存在感」を、彼ら自身が、その生きざま(LIVE)から放ち続けているからに他ならない。

ライブの冒頭を飾った「ボク時々、勇者」に記された、「思い通りにいかなくて、何度も人生をコンティニューしようとあがいてゆく僕の、心の葛藤」。明るく開放的な楽曲にも関わらず、とてもネガティブな心の闇を綴ったこの歌のよう。√5の歌には、人生のレールから踏み外しそうになりながらも、ときには踏み外しつつも、なんとか絶望という奈落に落ちず、心の綱渡りをしている人たちの気持ちを投影した内容が多い。それらの歌を、同じ仲間意識を持って、リアルに…LIVEに届けてくれるのが√5のメンバーたち。それを実感しているからこそ、大勢の人たちが、ネットやルームという自身だけの空間を飛び越え、想いを共有したくて、リアルな環境へと足を運んでゆく。

この日の会場を埋めつくした人たちの9割以上は女性だろうか。しかも、10代や20代前半の人たちを多く目にしていた。彼女らもまた、リアルな自分に輝きを与えたい人たち。

同じ心の痛みを、夢を持って吐き出してくれる存在(√5)に触れ、「今の自分でもいいんだ」「今の自分のままに生きて(LIVEして)てもいいんだ」という想いを確かめ、そして感じたい。そんな人たちの心のアンテナが、√5の音楽や、5人の生きざまに触発され、その電波がどんどん拡散。広く伝播していったことが、今の状況を作り上げている。

以前のツアーでは、まだ√5としての曲数が少なかったことから、個々の楽曲も数多く取り入れたステージを行っていたが。今回は、1stアルバム『ROOT FIVE』を手にしてのライブということもあって、5人で歌い踊るステージングが主軸になっていた。

特徴的だったのが、メンバー全員が一体化したダンス・パフォーマンスを見せるのではなく、ダンス・パフォーマンス時、メンバーの蛇足のみ椅子に座り、他のメンバー4人が一体化した踊りを見せていたこと。もともと協調性の希薄な、個性重視のメンバーたち。それぞれに自身の生きざまを貫く。その"らしさ"が、そんなところにも現れていたし。それもまた「√5らしい」と納得してしまえるところも、彼らの魅力と言えようか。

ステージ前半部には、メンバーの自己紹介を兼ねた、個々の個性を歌った「ROOT FIVE」。アタック感の強いリズム曲「Break It Out!」。マイク・スタンドを用いたダンスも魅力的だった「Blowback」のよう、会場を一体化してゆくアップビートな楽曲を軸に構成。シングルとしても発売された、哀愁さや、5人の色気を持った声の魅力を味わえた「三日月姫」と「Love Doctor」では、大勢のファンたちが、揺れる感情のままに響き渡る声色に酔いしれていた。

中盤では、ソロ・コーナーが登場。オリエンタルなロックナンバー「芽蜩モラトリアム」をけったろが歌えば、koma'nは、ボカロ曲「サリシノハラ」をハートフルに歌いあげていた。蛇足が男の色気満載のもとバラード「追憶」を届ければ、ぽこたは開放的な「タカラモノ」を爽やかに歌いあげ、みーちゃんは、攻めな勢いを満載。エナジーあふれた「Moody Girl」をロックなモードで歌いあげてと、それぞれのカラーをしっかりと描き出していた。

√5の特徴としてあるのが、ボカロ曲をカバーしてゆくスタイル。彼らの出自が「ニコ動の"歌ってみた"」だけに、ルーツとなるその姿勢を崩さずに提示してゆくところも、「らしさ」と言えようか。この日も、本編終盤で「Mr.Music」や「地球最後の告白を」とボカロ曲のカバーを通し、会場中に一体化したパーティ・ムードを描きあげていた。

じつは√5の楽曲、どれも人気ボカロPたちが手がけている。逆に捉えれば、ボカロPたちの感情を一番生々しく伝えていける人たちが、√5の5人とも言えるわけだが…。

本編最後とアンコール冒頭では、それぞれの感情の揺れが見えてくるバラード「いとしいひと」「桜ノ雨」を歌ってくれた√5のメンバーたち。

今や、ボカロ界での神曲とも言えよう「千本桜」では、満員の観客たちとコール&レスポンスを通した盛り上がりを作りあげた。最後の「MERRY GO ROUND」では、ステージ/客席がひとつとなり、タオルを振りまわしながら、熱狂と興奮の宴を作り、ライブは、満面の笑顔と高揚した嬉しい叫び声に包まれながら幕を閉じていった。

この日のライブの中、5人が共通して口にしていた想いがある。それが「ようやく√5として活動していく意味が、今回のツアーを通し実感できた」ということだ。

「1月から始まったファン・ミーティングツアーのときから、より深くお互いの親交を深め。3月からのライブツアーを通して、√5として演ってゆく意味を実感できました」──koma'n

「俺たち5人としての活動の意味が、みなさんの笑顔を観てて実感できました。まだまだ前へ進んでいきます」──けったろ

「最初は遠慮があって、まとまりのなかった5人が、1年ちょっとで、こんなにも想いを共有していける5人になれた。でも、僕らが一丸となれたのも、みんなのおかげなんです」──ぽこた

そんな言葉を聴くたびに、ようやくこのツアーを通し、本当の意味で√5として始まったんだなという想いも実感させられた。

彼らがリアルな世界でLIVEしている意味。みずからの笑顔を導く対象として、√5が存在している意義。

「互いの心が求め合ったうえで」と、その理由を綺麗にまとめるのは簡単なこと。でもそれ以上に、√5のメンバーそれぞれが、全国各地で「生きる意味」を探していた人たちが同じ波長でシンクロしあったことが、今現在の、√5を取り巻く仲間たちが増殖し続けているリアルに繋がったと言えよう。

5月6日(月・祝)には、<√5 -ROOT FIVE- TOUR 2013 NET FINAL~ Powered by JOYSOUND>と題し、ニコファーレにて、ニコニコ生放送を通した、正真正銘のツアー・ファイナル公演も行われる。さらに、6月21日には、NHKホールでのコンサートも決定した。

√5のLIVEを求める人たちは、今も凄まじい勢いで増え続けている。心に闇を抱えた人たちがいる限り、彼らの歌を、明日へ踏み出す糧にしていく人たちは、今後も増え続けていくことだろう。もちろん、彼ら自身も、その闇を胸の内に抱き続ける限りは…。

TEXT:長澤智典
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