【インタビュー】K、641日間の兵役を経てミニアルバム『641』が完成「人として得たものや感じたことが音楽へ直接的に繋がった」

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ドラマ『H2~君といた日々』主題歌として発売前から注目を集めた「over…」で2005年、J-POPシーンに華々しくデビューしたシンガーソングライターのK。ゴスペルやブラックミュージックから洗礼を受けたというソウルフィーリングをポップサウンドに昇華させた音楽性、そしてピアノ弾き語りによる柔らかな歌声が、幅広い音楽ファンを魅了してきた。そんな彼が、母国韓国で兵役に就くために音楽活動を休止するというニュースが駆け巡ったのが2010年のことだ。同年末にベストアルバム『K BEST』をリリース、日本武道館にて兵役前のラストライブを大成功に収めて、Kは2年間の沈黙期間へと入った。その役目を無事に終え、この春、Kがまた日本の音楽シーンに帰ってきた。過酷にして未知なる体験を経たからこそ書ける言葉、そして鳴らせる音がミニアルバム『641』には濃密に詰まっている。『641』への熱いこだわりや、貴重な経験から芽生えた新たな想いについて、仰天/爆笑エピソードも交えつつ、たっぷりと話してくれた。

◆K 画像

■あの頃は日本の音楽シーンやアーティストから取り残されているような気がしていた
■みんな、それぞれの場所で641日間を闘っているんだなと

──お帰りなさい。兵役、本当にお疲れさまでした!

K:ありがとうございます。日本に戻ったのは2012年10月25日でしたが、またひとり暮らしできると思うと、もう嬉しくて! 軍隊では多いときは40人、最小でも10人が同じ部屋だったので、1台しかない小さいテレビを見るのも取り合い。誰かのいびきで目覚めない日はない(苦笑)。ひとり暮らしに戻って気持ちもほがらかになった気がします(笑)。

──兵役という貴重な経験からミニアルバム『641』が生まれたとか。

K:タイトル曲の「641」は入隊して1年が経ち、残り10ヶ月という頃に歌詞を書き始めました。あの頃は、日本の音楽シーンや知り合いのアーティストから取り残されているような、周りのみんなに追い越されている気がしていたから、仮タイトルは『マラソン』だったんです。

──兵役中も音楽のことが頭にあったわけですね?

K:ただ、隊ってきちんと任務を遂行することが大事で、アーティストにとって重要な個性を発揮しちゃいけなかったりして。感情が動いたときに音にしてきたこれまでの経験とは真逆で、気持ちを吐き出してもいけない。そんな環境に戸惑って、入隊当初は除隊できる日をただただ指折り数えてましたね。

──音楽シーンの移り変わりは激しいですから、制作が行えない環境に焦燥感を覚えるのも無理はないですよね。

K:だけど、途中からハッと気付いたというか。入隊前は、音楽シーンで1位になることを目標に、誰かの背中を見たくないって気持ちで懸命に走ってきたけど、軍隊では仲間を助けなければ、自分が危険なときに助けてもらえない。そうやって仲間と一緒に、今居る場所で精一杯動き続けることにもきっと意味があるし、ときには大事なんじゃないかなって思ったんですよね。

──それは大きな変化ですね?

K:そう。それにね、除隊して一歩外に出たら“すべてがスペシャルになるんだ”って思い描いていたはずなのに、実際にその日が来ても、何も変わらなかった(笑)。ゴールしたような気持ちでいたけど、そこからがスタートで。641日は軍隊に居たからすごく特別な日々なんだって思っていたけど、他の人もそれぞれの場所で641日間を闘っているんだなと。だから今回はこの約2年間に感じたり考えたりしたいろいろなこと、そして今このタイミングで、“641”というタイトルでしか出せないものを形にしたいと思いました。

──タイトル曲である「641」に、アイリッシュな雰囲気を持たせたのはなぜですか?

K:さっきも言ったように、ときにはただ動き続けることが大事ってことが言いたかったので、それを音で表現するにはどうしたらいいかなって考えたんです。とりあえず前に進むってことが旅に似ているなって。人生も目標を決めたって想い通りには進みませんよね。そういうことも含めて、旅を感じられる音を入れたいと思っていろいろ検索していたんです。

──だから、ジャケット写真に旅行カバンが写っているわけですね?

K:そうなんです! で、旅を感じられる音を探す中でアイリッシュな音に引っかかりを感じた。もともと「リバーダンス」(アイリッシュダンスと民族的音楽を融合した舞台)の音楽が好きだったこともあるんでしょうね。たまたま知り合いがアルバムを持っていたので貸してもらったら、クレジットにティン・ホイッスル(アイリッシュ音楽に使用される縦笛)と書かれていて。調べてみると、結構身近で演奏されてることが分かったんですよ。せっかくだから、自分で演奏してみようかなとも思ったんですが、チューニングが難しいので、それは諦めて(苦笑)、プロの方に演奏していただきましたが、異国の音で旅感、郷愁みたいなものは出せたかなと思います。

◆インタビュー(2)へ
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