9GOATS BLACK OUT、ラストライヴとなった2/9赤坂BLITZワンマンを全曲収録した2枚組DVD「SILENCE」を発売

ツイート

生と死を見据えた壮麗な世界観と、地底の闇も天上の光も自在に描き出すズバ抜けた表現力により、リスナーのみならず同業のミュージシャンからも絶大な支持を得ていた9GOATS BLACK OUTが、約5年間の活動に幕を下ろして4ヶ月。ラストライヴとなった2月9日の赤坂BLITZワンマンを全曲収めた2枚組DVD「SILENCE」が5月29日に発売された。

思い返せば、それは何から何まで“異例”のライヴだった。明確なテーマを定め、それに沿ってスリムなセットリストを組むことが多かった彼らが、この日は二度のアンコールを含めて約3時間半という長尺のステージを展開。初音源の1曲目「sink」での緊張感張りつめた幕開けから、最新アルバムの最終曲「8秒」での涙と光あふれる締めくくりまで。MCも最低限に、全35曲という曲数を間断なく畳み掛ける様は、自らの活動の軌跡を可能な限り深く、濃密に、訪れた人々の心に刻もうとしているかのようだった。

また、ステージの後方には巨大スクリーンが設置され、様々なアニメーション映像やミュージックビデオ、蠢くメンバーのシルエットを映し出すという仕掛けも、これまでには見られなかったもの。加えて中盤の「Heaven」では、スモークが覆うステージの上でミラーボールが回り、会えない人への想いをスケール感たっぷりに演出。「red shoes」で不穏に燃える篝火も、色とりどりの凝ったライティングも、赤坂BLITZというバンド史上最大の会場規模ゆえに実現できたことではあるだろうが、同時に彼らの物語性高く、ドラマティックな楽曲の世界を膨らませ、魅力を最大限に引き出していた。

集大成にふさわしい環境とメニューを用意して、ステージに立ったメンバーの佇まいと心意気には、もちろん1ミリの隙も見えなかった。キャリアを重ねるにしたがって強固になったバンドサウンドは、静謐と激情の間に横たわる感情のグラデーションを緻密に描き出し、観る者の心のツボをグイグイと押しまくる。全てのコンセプトの発信者であり、地を這うような低音から妖しいファルセットまで、恐るべき振り幅で声色を使い分けながら、扇情的な視線と仕草でもフロアの目を奪うボーカル・ryo。渾身のエモーションをすべて音に託さんと、動きと表情に感情をさらけ出し、熱くギターをかき鳴らすuta。対照的に黙々とボトムを支え、時折微笑みを浮かべながらも、強い意志を瞳に宿してベースの弦をつま弾くhati。さらに、コーラスや煽り曲「headache」でのダンスでも大活躍するマニピュレーターのakaya、真摯にバンドを支えてきたドラム・takumiとサポート陣の助力も受け、哀しみも、不安も、怒りも、嘲りも、孤独も、諦めも、渇望も。感傷的な想いを走馬灯のように映しながら、最後に温かな慈愛を胸に残すのは、本編終盤のMCでryo自身が述べていたように“生きてゆくことと、死に行くこと。その両方を大きなテーマとしてやってきた”からなのだろう。9GOATS BLACK OUTのライブでは、こういったMCも重要な要素の一つであり、もちろんDVDにも、そのほとんどが収録されている。

また、ライヴDVDと同時にベストアルバム『ARCHIVES』も発売された。これまでにリリースされたアルバム2枚、ミニアルバム2枚、シングル4枚の中からライヴ定番曲、綴ってきた物語の中で重要な柱となる楽曲等、16曲を時系列順で収めた上に、結成時からライヴでお馴染みの「float」はライヴアレンジで新緑&その他の楽曲もすべてリマスタリング。まさしく9GOATS BLACK OUTが歩んだ5年間の“記録(=ARCHIEVES)”であり、内から外へと開かれていったバンドの進化をなぞりながら、痛みと優しさを伴った独特の世界を堪能できる作品となっている。加えて、17曲目にはラストライヴのエンドロールでも流れた未発表曲「Nuit Blanche de L'aurore」を収録。“白夜のオーロラ”を意味するタイトルの通り、冬景色に差し込む光を想起させるような幻想的なナンバーを、どう紐解いてゆくかは貴方次第だ。

解散を発表した2012年7月からラストライブまでの半年間、アルバム『CALLING』の制作&リリースを含め、3人は終焉への準備を誠実に積み重ねてきた。それは“9GOATS BLACK OUT”という物語を最後の1ページまで、納得のいく形で描き切りたいというアーティストとしての彼らの矜持であり、同時にファンに対する感謝の現れでもあったろう。ラストライヴのアンコールでは、「Sleeping Beauty」でハートのカードが舞う一幕も。それは彼らにとって、不安の中で愛を歌う曲に“ファンの中で歌う”喜びが重なった瞬間だった。

人間が死ぬとき、最後に活動を終えるのは聴覚であるというところから名付けられた、この日のライヴタイトル“Silence”。そして序盤に演奏された「red shoes」の終わり、ryoはこの日だけのリリックを、こんなふうに付け加えている。

“君がいた名残を知るものが消えればそこが静寂(Silence)”

言い換えるなら、名残を知るものが存在するかぎり、彼らは生き続けるということだ。事実、本編ラストの「願い」で“忘れないで”と歌った彼の真に迫る様は、今でも忘れることができない。

とはいえ、映像には涙を隠せないメンバー&オーディエンスの姿や声も克明に映し出されているため、観るたび胸が詰まり、辛い想いが蘇ってしまうという人もいるだろう。だが、その悲しみを否定する必要はない。すべての物事に終わりは必然であって、何より愛しさも悲しさも、泣けるほどに強い存在に出会えたなら、それは素晴らしく幸福なことなのだ。

銀テープが飛び、満場のオーディエンスが英詞を合唱するラストナンバー「8秒」の演奏が止まると、涙と共にフロアにあふれたのは“ありがとう!”の声。そして最後のMCで、ryoはこう告げた。

「一緒に生きてこれてよかったです。同じものを見て、さまざまな感情を共有してやってこれたことが何よりの誇りです」

“解散”という痛みも、その感情の一つに違いない。“何よりもその音と声がもたらす作品、音楽が、いかに人の心を強く打つことが出来るか”という結成来のテーマを、彼らは見事に全うした。完結した物語もページをめくればいつでも読み返せるように、このラストアイテムたちが9GOATS BLACK OUTを愛したすべての人々にとって、出逢えた喜びを確認できる手放せない宝物となることを願ってやまない。

取材・文●清水素子

DVD『Silence』
DVD2枚組 / 全35曲+α収録
8Pブックレット+特殊デジパック仕様(album:TANATOS,CALLINGと同様のパッケージとなります)
価格 9,580円 税込 ・ 商品番号 NINE-012
発売日2013年05月29日 (公式通販でのみ購入可能)
9GOATS BLACK MART ( http://9goats.shop-pro.jp )
パッケージ別販売および、Blu-ray DISCでの販売予定はございません。
Disc1:
SE
1. sink
2. 夜想
3. red shoes
4. BABEL
5. you
6. BLANK BLACK
7. Lestat
8. Canaria
9. 憂鬱と孤独
10. missing
11. raw
12. 揺り籠
13. Heaven
 "lithium"
14. 追憶は罪
15. Shut up "G"
16. Table of the Mortal Sins
17. ROMEO
18. SALOME
19. Asche
20. any
21. rip current
22. 願い
Disc2:
23. Den lille Havfrue
24. Tanatos
25. Panta rhei
26. Sleeping Beauty
27. HARMS
28. Who's the MAD
29. dye an unease
30. 690min
31. float
32. 軽蔑
33. headache
34. 甘美な死骸
35. 8秒

Best Album『ARCHIVES』
2013年5月29日リリース
価格:3,150円(TAX IN) , 商品番号:NINE-011
取り扱い:CD SHOP各店舗 (流通_ONGディストリビューション)
9GOATS BLACK MART ( http://9goats.shop-pro.jp )
※店頭、通販で仕様、内容に変更ありません

◆9GOATS BLACK MART
◆9GOATS BLACK OUTオフィシャルサイト
この記事をツイート

この記事の関連情報