【ライヴレポート】デイヴ復帰で役者がそろったヴァン・ヘイレン、エディも完全復活で超絶テクを惜しみなく披露

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デイヴ・リー・ロス復帰後初となるヴァン・ヘイレンのジャパン・ツアーが、日本を熱狂させている。エディの体調やデイヴのコンディションなど、ファンを不安にさせる材料も少なくなかった今回のツアーだが、蓋を開けてみれば何の問題もなかった。エネルギッシュでダイナミック、スケールの大きなパフォーマンスで、完全復活したヴァン・ヘイレンの姿を日本のファンに見せてくれた。その2夜目となる6月21日、東京ドームでの模様をお届けする。

ヴァン・ヘイレンは活動歴は長いし、もちろん日本でも昔から変わらず絶大な人気がある。それなのになぜか来日公演は数えるほどしか行なっていない。しかもデイヴ・リー・ロスがヴォーカルを務めるヴァン・ヘイレンの来日というと、1978年のデビュー直後と2ndアルバム『伝説の爆撃機』リリース後の1979年の2回だけ。だから、オリジナルの2枚看板がフロントにそろったヴァン・ヘイレンとしては、今回は実に34年ぶりの来日となる。

みんなが待ち望んだライヴは不意打ちで始まった。まだ明るい場内に突然ドラムの音が鳴り響き、次の瞬間客席の照明が落とされて、演奏がスタート。ザクザクに歪んだエディの“ブラウン・サウンド”が奏でる「Unchained」のイントロに、もちろん場内は瞬時に総立ちで大歓声。力強くノリのよいプレイに、巨大な東京ドームはあっという間に一体感に包まれた。

誰もが気になっていたのが、このところ大病が続いたエディの体調だろう。しかし見たところ問題はまったくない。若いころのようにステージを縦横無尽に駆け回ったりはしないけれど、プレイは力強く、もちろんエディならではのワザもキレキレ。色々な曲にちりばめられたハーモニクスやアームにタッピング、スイッチング奏法などの大ワザ小ワザ、とんでもない超絶技巧フレーズをいとも簡単そうに、しかも満面の笑みでさらりとやってのける。やっぱりエディ、さすがである。見ていてワクワクするし、本当に楽しくなってくる。

そしてもう一人のフロントマン、デイヴのパフォーマンスも超一級品だった。こちらも以前のようなハイジャンプこそ見られなかったが、随所でハイキックを繰り出すし、腰や足をセクシーにくねらせながら軽やかなステップで歩き回り、あちこちのオーディエンスや、ステージ後方と左右に設けられたスクリーンにステージを映し出すためのカメラにもアピールしまくる。マイクスタンドを持てば、チアリーダーのバトンのごとく高速回転。そんなロックスター然とした振る舞いを見せたかと思うと、ちゃめっけたっぷりに日本語で叫んでみせるのもデイヴらしい。初っ端から“ドコデ、ニホンゴヲ、オボエタノデスカァ!”とやったかと思えば、“ナニヲカンガエテ、イタンダ?”とか“イシノ、ウエニモ、サンネン!”と次々に怪しい日本語を発して笑いも誘う。

何度も衣装を変え、そのたびに派手なジャケットにテカテカ光るシャツを着ていたデイヴだが、動作はいちいちサマになっていてカッコいい。ヴォーカルに関しても文句のつけようのない歌いっぷり。1曲目からびっくりしたのは、ものすごく声が出ている! ということ。デイブのヴォーカルにはあまり高い声のイメージはないのだが、ハイトーンも驚くほどパワフルに伸びていて、歌でも動きでも抜群のエンターテイナーぶりだった。

2012年に『ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース』がリリースされたばかりなのだが、今回この最新作からプレイされたのは3曲だけで、ほとんどが『炎の導火線』から『1984』までの初期のナンバー。つまりはデイヴが在籍していたときのナンバーだけなのだが、不満に思った人はいなかっただろう。サミー・ヘイガーの曲を無理して歌うデイヴなんて想像できないし、オーディエンスのほとんどはエディとデイヴの共演を見たくて来ているのだ。だからこのセットリストは本当に盛り上がる。イントロが流れるたびに、演奏が聴こえなくなるほどの大歓声の熱狂だ。

30年以上も前の曲に混じって最新作のナンバーをプレイしても、まったく浮いた感じがないし、逆に以前の曲に古さを感じないのもスゴい。並のバンドならとてもこうはいかない。これもデイヴ復活のおかげだろう。すべての曲がブルース基調でちょっとルーズ、とにかく楽しいロックンロールという統一感でまとまっている。それでいて、キメやブレイクなどここぞというところでは、アイ・コンタクトもとらずに恐ろしいほどの切れ味でビシッと決める。盛り上がって当然のライヴ・パフォーマンスなのである。

アレックスとウルフギャングも、決して地味ではないのだが、フロント二人がこうも派手だと少し埋もれ気味。とはいえ、アレックスがラテングルーヴに乗ってスピーディなプレイを見せたドラムソロもあったし、ウルフギャングはどの曲でもコーラスで大活躍していた。さらに「You Really Got Me」では途中からジャムセッションに突入し、エディとウルフギャングの掛け合いから高速フレーズやタッピングの親子競演も披露。親譲りであろうテクニックもしっかり見せつけた。


ライヴは終盤までほぼノンストップ。MCらしいMCも皆無のまま20曲を飛ばしたが、「Beautiful Girls」を終えたところでステージは暗転。「外人任侠伝~東京事変」と題されたショートフィルムが上映された。なぜか銭湯で花札賭博に興じる元大関の小錦のところへヒットマンのデイヴがやってくるという、昭和の香り漂う任侠映画のパロディだ。ここでも“ツキニカワッテ、オシオキヨ!”とデイヴのヘンテコな日本語が炸裂する。

この日はヴァン・ヘイレン側からの希望で、一般客にもカメラ、ビデオ撮影が許可されていたため、ステージが始まったときには無数のデジカメやスマートフォンが頭上に掲げられていたが、2曲目以降は徐々にその数が減っていった。演奏からはものすごいパワーが感じられたし、見た目にも楽しいステージだったから、とても落ち着いて撮影している場合ではなくなったのだろう。再び多くのカメラが掲げられたのは、終盤のエディのソロのときだった。ドラムへと上がる階段に腰をおろしたエディは、1stアルバムで世界に衝撃を与えた「Eruption」のライトハンドやボリューム奏法など、トレードマークの超絶テクをたっぷりと披露してくれた。

客席からも大合唱が起こった「Ain't Talkin' 'Bout Love」で本編はいったん終了。しかしメンバーがここで引っ込むことはなく、ステージが暗転するとすぐにアンコールの「Jump」がスタート。デイヴが大きなチェッカーフラッグを振り回し、紙吹雪が舞うという派手な演出で盛り上がる中、23曲をほぼノンストップでプレイしたこの日のライヴは大団円を迎えた。すべての曲目が終了すると、4人がそろう前に、まずエディとデイヴの二人が手を取り合って客席にあいさつ。昔からのファンにとっては、これもこの日のハイライトの一つだったかもしれない。

撮影●土居政則

ヴァン・ヘイレン来日公演セットリスト
2013年6月21日@東京ドーム
1.Unchained
2.Runnin' With The Devil
3.She's The Woman
4.I'm The One
5.Tattoo
6.Everybody Wants Some!!
7.Somebody Get Me A Doctor
8.China Town
9.Hear About It Later
10.Pretty Woman
 ドラムソロ
11.You Really Got Me
12.Dance The Night Away
13.I'll Wait
14.And The Cradle Will Rock…
15.Hot For Teacher
16.Women In Love…
17.Romeo Delight
18.Mean Street
19.Beautiful Girls
20.Ice Cream Man
21.Panama
 ギターソロ
22.Ain't Talkin' 'Bout Love
23.Jump
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