ヤマハの男性3人組VOCALOID「ZOLA PROJECT」発売記念イベント開催、浅倉大介&森雪之丞によるデビュー曲を披露

ツイート
ヤマハは、6月20日に「VOCALOID3 Library ZOLA PROJECT」の発売記念イベントを開催した。ゲストとして浅倉大介氏、森雪之丞氏が登場、両氏制作のデモ曲が披露された。

「VOCALOID3 Library ZOLA PROJECT」は、3本の男声歌声ライブラリを同梱したVOCALOID3対応製品。VOCALOID製品で初めてとなる、歌声の主が異なる複数の歌声ライブラリを同梱した製品としても注目を集めている。イベント当日はパッケージの出荷日であり、まさにユーザーの手元に届けられる直前。ニコ生での生中継も行われ、熱のこもったステージとなった。

■「VOCALOIDは新しい楽器」「作品を安易にDISらないで」

最初に登場したのはVOCALOIDの開発者であり、VOCALOIDプロジェクトのリーダーである剣持秀樹氏。VOCALOID発表以来10周年にあたり、パートナー企業やユーザー、リスナーらに感謝を述べたあと、「VOCALOIDとは何か?」ということについてあらためて触れた。「VOCALOIDで曲を作る行為は演奏行為そのもの」「リアルタイムの演奏行為ではなくオフラインでの演奏行為なんじゃないか」とし、「VOCALOIDは音楽を入力する人がすべてをコントロールできる、歌声ですらコントロールできるという意味において、これは楽器だと考えている」「しかも新しい楽器」とコメント。そして、「VOCALOIDの歌声ライブラリの差は音色の差なんじゃないか?」とし、「ZOLAはいままでのVOCALOIDにはない新しい音色」と紹介した。

「歴史を振り返ると、新しい楽器が生み出されたあとには必ず新しい音楽が出てきている。古くはバイオリンもそうだしピアノも、そしてエレキもシンセも。そして、VOCALOIDという新しい楽器によって新しい音楽が次々と生み出されている」「どうかみなさん、この新しい楽器の中の新しい音色を使って、また新しい音楽を作り出していっていただければ」としたあと、最後に一言、と続けた。「VOCALOIDを使って数多くのボカロPのみなさまが心血を注いで楽曲を作って投稿している。どうぞ、そういう作品を安易にDISらないでください。ただし、これは批判をするなという意味ではありません。愛情を持って批判してください。この時代を生きているみなさんには、この時代の文化を育てていくという責任があると思います。VOCALOIDという文化がこれから育っていくかどうかということは、みなさんがどれだけ愛情を持って批判できるかどうかということにかかっていると思います」。

■3人分でお買い得 グループ曲用に新プラグインも収録

続いて、ZOLA PROJECTのプロデューサー瀬戸優樹氏をはじめとした企画・開発・マーケティングチームの面々による商品紹介。まず、読み方については「ぞらプロジェクト」であると説明したあと、パッケージにガイドブックと使い方を説明するムービーが収録されているので初心者でも気軽に楽しめる点をアピール。また、これまでのライブラリと異なり、ソロはもちろんグループで歌うことを目的に作られたことが強調され、「1本の中に3人分の声が入ってる。そういう意味でもすごくお買い得」「3つを同時に歌わせた時にさらに本領を発揮する」とした。また、制作時の苦労では、収録時に声主への何度も駄目だしが行われたというエピソードも披露された。

機能面で注目したいのが、簡単にグループの曲を作ることができる新しいJob Pluginの追加だ。Job Pluginは、たとえば「入力した音符を全部一括してスタッカートにしたい」という決まったルールに従ってシーケンスに編集を加える機能。今回ZOLA PROJECTには「ZOLA Unison」というプラグインが追加されている。これはコーラスやユニゾンパートを作るのに効果的なもので、発音タイミングや音程のパラメータにばらつきを与えてくれる。Solo/Unison/Chorusの3タイプが用意され、同じフレーズを複数人に歌わせる場合にそれぞれ違った表情が簡単に付けられるようになっている。ZOLA専用ではなく、ほかのライブラリでの利用が可能なのもうれしいところだ。


▲同一旋律を複数の歌声ライブラリで歌わせる際にきれいに聞こえるようにするJob Plugin「ZOLA Unison」。タイミングやピッチベンド、ベロシティなどのパラメーターに自動的にばらつきを与える。
このほか、VOCALOID製品を触ったことがないという人向けに全国の楽器店に設けられたコーナー、Steinberg Labで実際に製品を触って試せること、ボカロPセミナーが各地で随時行われていること、プロが技を披露するニコ生番組「ボカキューハイスクール」(隔週火曜19時)が放送されていることなどが紹介された。

また、初心者を含むクリエイターの支援策として、VOICE MATERIALとILLUSTRATION MATERIALが無償配信されることもあわせて紹介。VOICE MATERIALはZOLAの3人のセリフを各129種、計387ボイスを提供するもの。ILLUSTRATION MATERIALとしては、パッケージを手がけた天野喜孝氏のイラストのほか、4人の絵師によるイラストが提供される。さらに7月20日より楽曲コンテスト&イラストコンテスト「ZOLA発売記念コンテスト」がニコニコ動画&ニコニコ静画で開催されることも予告された(詳細は7月20日発表)。


▲ZOLA発売に合わせ、自由に使えるセリフの音声ファイルやイラストデータも公開(写真左)。7月にはコンテストも開催される(写真右)。

■公式デモ曲制作は浅倉大介&森雪之丞の初コラボ

ZOLAのデビュー曲として紹介された公式デモ曲「BORDERLESS」のMVが上映されたあと、いよいよ登場したのが作曲の浅倉大介、作詞の森雪之丞の両氏。森氏は「このプロジェクトに参加できたことはとても光栄」「夢と現実を行ったり来たりするっていうのは表現者の特権だと思ってたんですけど、その自由がみんなにも与えられた、みんなのものになったっていう、とってもすばらしい革命的な歴史の始まりじゃないかと思います」とコメント。浅倉氏は「今すっごい緊張してたんですよ。なんでかっていうと、デビューシングルじゃないですか、これ、ZOLA3人の」「人間だったらね、『気合入れてがんばれよ』とか言って後ろでハハハって見てればいいんですけど、そういう状態でもなくみんな聞き耳立てて『どんな表現なんだろ?』みたいな感じで」と発言。「いかがでしたか?」とニコ生視聴者に問いかけ、「よかった」「すばらしい」と返ってきた反応に安心した様子。


▲天野喜孝氏が手がけたイラストを使用したMV。ZOLA PROJECTの公式サイトで見ることができる。
VOCALOIDは知っていたが曲を書いたのは初めてという浅倉氏は、「人間が歌っても気持ちよく聞こえる曲というところではぜんぜん変わらないので、そこはもう普通に自分流で作りましたけど」「KYOとYUUとWILの声がすごい豊かなんですね。なんで、3人ユニットをいかにかっこよく歌い分けで見せられるかな、みたいなところでは僕はすごい楽しんでやらせてもらいました」とも。VOCALOIDならでは曲の作り方については「ミックスの段階ではいろいろ苦労しましたけどね。人間みたいな勝手にビートで強弱がついたりとか、そういう部分がないんで、そのへんは自分の中の技を使ったりとか、ピッチの変え方を少しチューニング高めにとって明るめに聞こえるようにしたりとかそういうことはしましたけど。実際、曲に関してはぜんぜん。どっちかっていうと雪之丞さんがずいぶんS心があるトライを、言葉で選んでるな」とコメント。対する森氏は、「ちっちゃな『つ』、促音とか『ん』が入ってる発音とかそういうものをいっぱい入れてるんですね。それは浅倉さんが書かれたメロディがシンコペーションとかアンティシペーションとか、とにかくビートの流れ、強さをすごく強調したものだったので、さて、ZOLAくんたちがそれにどれだけ対応できるかということで、ちょっとSではないですけども、実験心で軽い個人的な調教はさせていただきました」と返した。


▲公式デモ曲「BERDERLESS」の作詞を手がけた森雪之丞氏。
初コラボに関しては、「いっしょにやれてほんとにうれしかった」「テンション上がりました」という浅倉氏に、「こちらこそ、このタイミングで浅倉さんといっしょにやれてうれしかった」「さっきからSとかいろんな発言が出てますけど、けっこうぐいぐい攻めてくる曲なんですよ。もうデモ・テープの段階から。もうそれにほんとに迎え撃つ気持ちでいいセッションができたと思います」と森氏。また、二人でのやりとりについて、「あまりばらしたくないんですけど」という森氏は「浅倉さんが『ZOLA』っていう言葉を入れてほしいって言ったんですよね。ZOLAって入る言葉って何があります? で、しょうがないから『空々しい』しかないなと思って。『空ZORAしいほど眩しくて』が入った時に、ソラ・ゾラってことは、濁音じゃないもので(始まって)濁音で終わるっていう言葉で、頭のピカ、ギラとか、そういうのが全部出てきた」「だから、すごい攻められたんですけど、攻め返した」と笑わせた。対する浅倉氏は「それを見事に歌い上げたZOLAのライブラリがすごいと思いました」「たぶん今聞いてくださった方も目をつぶって歌詞を見なくても言葉がくっきり聞こえてきてるっていうのに気づかれたんじゃないかなと思うんですけど。それを見事に歌い上げてくれた3人に拍手を送りたい」と続けた。


▲VOCALOID楽曲は初めてという浅倉大介氏。公式デモ曲の作曲を担当。
「いやあ、ほんとに今のボカロPの世代の人って、いろんなアイディアたくさん持ってるじゃないですか? おもしろいトライを、それがどうZOLAの3人でやっていくのかっていうのが」「あと、3人組って初めてなんですよね? なかなかそのへんの使い分けで、けっこうKYOくんの攻めだったり、YUUくんの上ハモだったり、WILくんの甘い声の、うまい差し引きで1つのエンタテインメントがね、みなさん、トライしてもらえたらいいですよね」(浅倉)。「今日はコーラスっていう形だから、1人ずつの声がなかなかわかりにくいけれど、ゆっくりソロも楽しんでいただけたら」(森)。

ユーザーへのアドバイスを求められた浅倉氏は「ボカロPの調教は、僕はもうぜんぜん駆け出しなんで。先輩方がたくさんいるんで(笑)。僕もがんばってプロの調教師を目指して(笑)」と笑わせたあと、「新しい、生歌とはまた違うアプローチでいろんなことがたくさんできる」「いろんなアイディアをどんどん形にしていって、音楽の新しい未来を作っていけたらいいなと思います」と回答。森氏は「ZOLAは僕らのものじゃないんですけど。僕らはあくまで夢と現実を行ったり来たり、そして、どういう旅をすればいいかっていう道先案内人ですから。だから、とりあえず、こういう1つのツアーがありますよっていうことを提示したわけで。まだ、僕らもね、違ったツアー、ジャングルで道に迷うとかそういうツアーもあるかもしれないんで。そんなことができたらいいなと思ってますけど」と続けた。また、次に作るとしたらやりたいことを聞かれた浅倉氏は「バラードとかも聞いてみたいですね、男性3人による。ハーモニーもキレイだからね」とコメント。

今後に期待することについては「女声のVOCALOIDはけっこうヒット曲たくさんありますけども、今度は女性目線で男声VOCALOIDを調教して出てくる曲とか。女性のボカロPが活躍してくれたらおもしろいなあなんて思いますよねえ」と浅倉氏。そして、最後は以下の発言で締められた。

「今回ZOLAのプロジェクトで、デビュー曲『BRDERLESS』を作らせていただいて、すごく僕的にもほんとに興奮して楽しくできました。また、機会があったらやってみたいし、ぜひみなさんがZOLAを使った作り出す作品を楽しみにしています」(浅倉)

「テクニックがあってできあがる世界っていうのもあると思うんですけど、そうじゃなくて、気持ちだったり遊び方だったり、センスで作っていく、そういう表現っていうのもあると思うんですね。この時代、いろいろ不自由なこともあるかもしれないけど、逆に僕らはこの時代だから得たものがある、っていうふうに思ってみんながいろんなことを表現したり遊んでくれたりしたら、素敵だな、と思います」(森)


◆VOCALOID3 Library ZOLA PROJECT
価格:オープン
発売中

◆VOCALOID3 Library ZOLA PROJECT
◆ヤマハ
◆BARKS 楽器チャンネル
この記事をツイート

この記事の関連情報