【ライブレポート】ドラマ同様に爆笑オンパレード。<あまちゃん サウンドトラック レコ発LIVE>

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連続テレビ小説『あまちゃん』オリジナル・サウンドトラックのリリースを記念した<あまちゃん サウンドトラック レコ発LIVE>が7月2日、東京・渋谷のパルコ劇場にて開催された。

◆<あまちゃん サウンドトラック レコ発LIVE>画像

ドラマの音楽を担当している大友良英率いるあまちゃんスペシャル・ビッグバンドが、サントラ盤にも収録されている楽曲の数々を解説付きで披露するこのライブイベントは、定員の10倍近いプレオーダー応募が殺到するなど大人気ぶり。そして当日、ウーロン茶ロックの一杯でもほしいくらいの日差しの中、430人が会場に詰めかけた。

ライブのオープニングは、といえば、もちろん「あまちゃんのオープニングテーマ」。これからのライブには、どんな楽しいことが待っているのか。跳ねたスカのリズムが、『あまちゃん』が始まる時と同じ感覚、期待感を高めていく。早くも身体を揺らしてリズムをとっている観客の姿も。

会場は最初から大喝采。そんなオーディエンスの盛り上がりに応えるかのように、大友のトークも軽快だ。

「長いバージョンと短いバージョンがあって、今やったのは長いバージョン、月曜日に流れるものです。なんで月曜日が長いかといったら、スタッフの名前が(テロップとして)流れるからなんですけど、先日、(『あまちゃん』)東京編になった月曜日に『いつもと違う音楽が流れた!』って話題になりまして(笑)。変わってないですよ。月曜日だっただけで。それ以外(の曜日)が、もうちょっと短いバージョンだっただけです。」

「今日、『あまちゃん』知らないで来ている人っていますか? 大丈夫ですか。知っているという大前提で話しますけど、NHKで毎朝やっているドラマです。」

「次にやる「行動マーチ」は、第1回で初めて春子さんとアキが北三陸に来た時に、大吉が運転した軽自動車で久慈から袖ヶ浜に行く空撮のシーン覚えています? ……空撮っていっても、あのシーン、ラジコンで撮っているらしいんですけど。そのシーンで使われた曲です。」

劇伴を担当しているからこその裏話を織り交ぜ、時にちょっと脇道にそれながら、時に次に演奏する譜面を探しながらの大友のトーク。観客も初めて知る『あまちゃん』の舞台裏や作曲者として曲に込められた想い、いかにアキのことを大好きか、そして、小泉今日子と美保純がスナックをやってたら、10万円払っても飲みに行くという強い決意などなど、トークはトークで大爆笑が次々に起こる。

三陸のスナックでメンフィスを感じたことから生まれた「琥珀色のブルース」では、リードギターを大友自ら演奏(アルバムでは長見順がプレイ)。繊細かつ大胆なチョーキングとともに泣きのフレーズを奏でる大友の姿は、カウンター席の片隅で琥珀を磨く勉さんのようですら(?)ある。

オープニング・テーマとともにダウンロードでも人気の「じぇじぇじぇ」について、大友は、「いいのかな……?」と一言。「試聴ってできるじゃないですか。この曲、1分くらいしかないのに、試聴で45秒できるんですよ。で、試聴した人は「続きが聴きたい」って思って買うと思うんですけど、残り15秒なんですよ。」と話すと、会場中は手を叩き、声を上げて爆笑する(ちなみに正確には55秒しかない曲)。さらに「(曲自体)使われるとは思ってなかったです。朝ドラの仕事初めてだったので、どこまで許されるんだろうと試しながらやって、『これ絶対使われないけど、こういう曲やりたい』っていう曲なんです。これだけ前フリしてますけど、本当にしょうもない曲です。聴けばわかりますけど、『じぇ!』って言っているだけです。俺、作曲家人生何十年もやってますけど、到達点、みたいな(笑)。」とのこと。ちなみにこの曲、物語の序盤にアキが泳ぐの嫌がって、お風呂場に隠れたシーンで使われた。

「パルコ劇場が新宿 PIT INNみたいになってる」と自ら語ってしまうほどに、ある意味、とてもアットホームな雰囲気になっていくライブ(そしてそれは間違いなく大友のトークこそが要因だろう)。そんな中で、北三陸の壮大な海のヴィジョンを浮かび上がらせてくれたのが「海」。2012年9月11日にNHKの509スタジオに、今回参加しているミュージシャンたちを呼んで録ったデモ音源がそのまま採用されたというこの曲。フルートやサックス、トランペットにトロンボーンの音色が波の大きなうねりを彷彿とさせ、ブラスセッションから、音にならずにかすかに漏れる息がさざ波を感じさせる。そんな北三陸の海の情景に乗る、近藤達郎の哀愁を帯びたハーモニカ。ドラマで観た、寂しさや切なさの中でも希望を忘れないアキの表情。そんなシーンがいくつもフラッシュバックされていく。

ライブは後半に突入しても、印象的な演奏と、そして別の意味で印象的な大友のトークが続く。「アキちゃんは本当に猫背なんですよ。それが可愛くて。なんていうんでしょうね。はぁ。最初会った瞬間から、あの猫背にグッときてしまったんですよ。もちろん、ドラマの中ではお芝居しているんですけど、僕らがみてもまんまのようにしか見えなくて、もう、この娘のために応援したいなって思うくらいのモチベーションになってくるんですよ。それが能年玲奈さんの魅力なんだと思うんです。アキちゃんのテーマは10テイクどころじゃないくらい録音してします。で、今回はそのテイクではなく、このステージ用にあらためてやるテイクを披露したいと思います。」と、能年玲奈演じるヒロイン・天野アキへの想いのたけを語ってからの「アキのテーマ」は、まさしくそんな作曲者の想いがより伝わってきて会場をやさしい気持ちと感動で包み込む。

海女軍団へ送ったドタバタな「あまちゃんクレッツマー」(最初のタイトルは「アマゾネス軍団」)に続いて、強烈なインパクトを与えたのが、「地味で変で微妙」。大吉やアキの父親・正宗、副駅長の吉田などなど、劇中に出てくる頼りないけど憎めない男性陣へ送ったというこの曲は、その名のとおりジミ・ヘンドリックスの曲をモチーフに、もっとヘロヘロにした作品。「しょうもない曲」と大友本人は語っていたが、そして確かに紫のペラッペラのけむりが見えてきそうな気もしたが、とはいえ、この曲はこの曲でちゃんとドラマとその中に出てくる出演者への愛情がしっかりと感じられる。

その後も、サックスを吹いてもらおうと鈴木広志をスタジオに呼んだのに、鈴木が手に入れたばかりのリコーダーばかりを吹きたがるために生まれたという「あまちゃんのワルツ」や最初は祖父・忠兵衛をイメージし、海の男に似合う曲として作ったはずなのに、なぜか小泉今日子演じる春子に付く曲になってしまったという「灯台」などを披露した本編。

アンコールでは、『あまちゃん』の中でみんなの心の中に残る曲、忠兵衛の送別会で春子が歌った「潮騒のメモリー」が、客席のSachiko M(作曲)にも見守られながら披露される。春子の歌声こそないものの、目を閉じれば、そこはあの日のスナック梨明日。観客は、ドラマティックなメロディーラインに身を委ねるように横に揺れながら『あまちゃん』を彩る名曲に酔いしれた。

ちなみにこの曲は、サントラ盤には未収録。大友はこのことに触れて「これだけは言いたかったんですけど、『なんで出さないんだ』って僕のところにメール送ってくるの、やめてください(笑)。俺が決められることじゃないから。だから送ってこないでください、という願いを込めて、このメンバーでやります。」と、笑いを誘っていた。

アンコールラストは、再び「あまちゃんのオープニングテーマ」を披露して、ライブは無事に終了……と、思いきや、客電が点いても客席からは拍手が鳴り止まない。そして、一度は引っ込んだ大友良英&あまちゃんスペシャル・ビッグバンドが再度登場。想定外のWアンコールで「何をやろうか?」と、ステージ上で相談を始める。そして、(大友の譜面が見つからなかったこともあり)「“ジミヘン”を、なるべくショボくやろうか。間違ってもいい、ということで暗記で。めんどくさくなったら俺ぎゃーってやるからぎゃーってやめよう。」と、まさかの“覇気のない「地味で変で微妙」”を披露。そんなミュージシャンたちの遊び心が詰まったじぇじぇじぇ!なパフォーマンスに、大笑いと大歓声と大喝采のまま、ライブは幕を閉じた。

「どうもありがとうございます。続きは毎朝テレビで!」── 大友良英

text by ytsuji a.k.a.編集部(つ)
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