【インタビュー】葵-168-、「秘すれば花」に込めたジャパネスク様式

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葵-168-というプロジェクトのもと活動中の葵。彼が、レコード会社をワーナーミュージックジャパンへと移籍。第一弾作として、7月10日(水)に移籍第一弾シングル「秘すれば花」を4タイプ(初回盤A・初回盤B・初回盤C・通常盤)でリリースする。「秘すれば花」は、故・井上大輔さんが残した楽曲に和艶なテイストを加味したナンバー。葵の中でも新境地を開いたこの楽曲に対する想いを、じっくりと伺った。

◆葵-168-画像

■いろんな方と出来ることが
■ソロとしてのプラスの部分

――前作から約1年ほどの期間を空けながら、また新たな地で作品をリリースすることになりました。その間にも葵さんは、ワンマンやイベント活動、LIVE DVDのリリースなど精力的な活動を行い続けてきましたよね。

葵:移籍からリリースまで、結果的に約1年間ほどファンの人たちを待たせてしまったんですけど。活動していく中ライブ活動を止めたくはなかったので、それを続けながら。もちろん、ミュージシャンとして形に残して伝えてゆくことが大事だと思っているからこそ、今回新しい作品を届けることが出来て嬉しいなというのが、今の素直な気持ちです。

――葵-168-としての基盤を作るうえでも、この1年間の日々は、とても大切なものにもなっていませんでした?

葵:葵-168-はバンドという形態を取ってはいますけど、僕のソロ・プロジェクトでもあるように、決してメンバーも固定されていません。だからこそ、いろんな方と演れる楽しさがある。とはいえ、まずは葵-168-という存在を形作るためにと、ここまでの間、ワンマンや主催イベントなどを行いながらベーシックとなる部分を築きあげてきました。

――葵-168-へは、La'cryma Christi.のLEVINさんや元KagrraのNAOKIさんから、Lc5のReo君やAki君などの若手まで、多彩な人たちが参加してきました。

葵:いろんな方と共演出来ることが、僕は、ソロ活動をしていくうえでのプラスの部分だと思っていて。しかも、自分よりも上や下の世代の方々と演ることが、すごくいい刺激や勉強になっていく。世代的にも、僕が上世代と下世代とを繋ぐジョイント的な役割を果たせるからこそ、そこを活かしながら、これからもいろんな人たちと演っていくつもりです。

■女性の心情のなかに
■何度も裏切られ傷ついてきたことを記した

――最新シングル「秘すれば花」、この歌の作曲を手がけたのが故・井上大輔さんです。

葵:今回の出会いは、僕にとっても一つの嬉しいチャレンジになりました。井上大輔さんは、昭和の時代、歌謡曲を中心にたくさんの名曲を産み出してきた方。僕自身も、じつは昭和の歌謡曲がすごく好きなんです。今回、井上大輔さんの未発表曲を歌えるチャンスをいただけたことが、挑戦してゆくきっかけになったんですけど。僕自身、メロディーを一番重要視してゆく人。井上さんの楽曲は、どこの部分を切り取ってもメロディーの存在感がとても強いんですね。だからこそ手がけようと思ったわけだけど。同時に、「どういう風に仕上げれば良いのか」プレッシャーも感じていました。それと、普段はヴィジュアル系という枠の中で活動していることもあって、そのスタイルが好きな子たちに、この曲がどんな風に捉えられるのか?!そこでの葛藤もありましたが。何よりも自分が好きな曲調だったのと、完成した楽曲が自信作だからこそ、この歌のリリースを決めました。

――原曲の時点から和耽美な要素は強かったのでしょうか?

▲初回限定盤A
▲初回限定盤B
▲初回限定盤C
▲通常盤
葵:原曲はもっと艶やかな歌謡曲寄りでした。葵-168-として表現していく以上、そこはバンド・サウンドにという想いもあれば。ワーナーミュージックジャパンさんとタッグを組むこともあって、海外へ発信していける機会も生まれるんじゃないかと思い、雅びやかさとロックを融合させたジャパネスクな様式を活かしました。海外でのライブ経験は僕自身何度かあるのですが、海外にも和なメロディーや音色をすごく愛してくれている方々がたくさんいてそれを体感してきたからこそ、その良さを出したい想いもありました。

――「秘すれば花」の歌詞は、女性目線で記されています。

葵:ソロになって以降、僕は言葉へリアリティーさを求めてゆく意識を強く抱いていたことから、ズッと男性目線で歌詞を書き続けてきました。でも女性視点で歌ったほうが、歌詞の内容面で艶やかにもなれば、女性の気持ちを男性が唄うことで異なる魅力をその言葉たちが発揮していくんですよね。なので、今回は女性目線で「秘すれば花」の歌詞を書いたわけなんです。

――「秘すれば花」には、女性が心に強く秘めた想いを記しました。

葵:これは僕の勝手な思い込みなんですけど。女性のほうが、男性以上に秘密にしていることが多い気がするんです。昔からいたとはいえ、今のほうが遥かに、まわりの目や耳を気にして、自分の意見を言えない人が多いと僕は感じるんですよ。「秘すれば花」の歌詞の中心は、女性の心情なんですけど。箇所箇所に、男性とやり取りしていく様を描写しながら、自分が何度も男性に裏切られ、傷ついてきたことを記しました。彼女は、自分の内面を全面に出しちゃうと相手に嫌われると思っている。だから、次第に浅い付き合いを求めようとしていくし、自分の本心をさらけ出すと「あなたにとっては地獄のような恋になるよ」とも言ってしまう。でも女性は、このままじゃいけないと、ためらいや葛藤も覚えてゆく…。この歌詞はいろんな風に解釈が出来ので、あとは聞き手の方々へ自由に解釈していただければいいかなと思っています。

――言葉も美しそうに見えて、じつは痛い表現が多いのも特徴的だと感じました。

葵:生々しくて汚い言葉のほうが、意外と心に届く気もするんですね。それ以前にメロディーの存在感がとにかく強い楽曲だからこそ、強めの表現を乗せていかないと言葉自体が浮いてしまう。それもあって、表現をストレートに記した面もありました。

■C/Wに入れた多彩な表情
■そこへ込めた強い想いとは

――C/Wには、ライブでもお馴染みの「蜃気楼」を収録しました。

葵:この「蜃気楼」は、僕が兎黒役で出演させていただいた、ゴールデンボンバーの喜矢武(豊)君主演の映画『死ガ二人ヲワカツマデ… 第一章「色ノナイ青」』の挿入歌用に作った楽曲の一つでした。映画では別の曲が使われたんですけど、映画のシーンやシチュエーションを意識した歌詞を書いてるように、あの映画を観ていただいたうえで聞くと、より歌に記した気持ちへ入り込んでいけると思います。それに楽曲自体が"夏"を舞台にしているよう、このシーズンにピッタリと思い、C/W曲として選びました。

――「初回盤B」には、ライブで活きるハードエッジ・ナンバー「BURN」を収録しています。この歌詞では、思いきり本音の感情をさらけ出しました。

葵:とてもメタルチックな、まさにライブで炸裂するに相応しい楽曲なんですけど。もともとリリースする予定もなければ、もし形にするとしても、歌詞を変えるつもりでいたように、その当時の僕の心模様を思いきり吐き出した言葉を詰め込んだ歌なんです。ブログやtwitterをやっている方って、今は多いと思うんですけど。「この言葉を書くことで、傷つく人も出てしまうんじゃないか」「もしかしたら偽善ぶってしまう表現になる?」と、つい書く言葉をためらってしまうことがみんなあると思うんです。本当なら、何も気にせず書けばいいんだろうけど。そういうことを気にしちゃっている自分の葛藤をぶつけたのが、この「BURN」の歌詞なんです。本来ミュージシャンとは、「自分の心の叫びを歌にしていく」もの。葛藤やためらう気持ちを素直に燃やせ(BURN)たらということで書きました。ライブでは、すごく勢いを持って攻めていける楽曲にもなりそうです。

――「初回盤A」には「requiem」を収録。この楽曲、幻想的な始まりから、いきなり荒々しく転調したりと、1曲の中へいろんな表情を詰め込んだ歌になっていません?

葵:「requiem」は、これまでのファンたちが聞いても驚いてしまう楽曲だと思います。僕の場合、ライブではバンド・スタイルを取っているとはいえ、あくまでもソロ・アーティストなので、「綺麗な楽曲を唄う、あまり尖った部分の少ない人」というイメージを抱く人たちが多いんですね。この夏の僕は、ライブ・イベントにも数多く参加することから、「最初にそういうイメージを抱かせながらも、思いきりその印象を嬉しく裏切る楽曲を提示したいな」と思って、この「requiem」を作りました。これを1曲目に持ってきたら、みんなビックリするんじゃないかな(笑)。

――ぜひ、そうしてください。

葵:イメージを一瞬で変えられたら。それが出来る曲たちを詰め込んだのが、このシングル作品なんです。バンドなら、ある程度カラーを統一しなきゃいけないところを、カメレオンのよう曲ごとに表情を変幻させていけるのが僕の強み。それを、今回のシングルには投影しています。それと「requiem」の歌詞では、僕なりの言葉遊びも行っています。それが、1990年代ヴィジュアルシーンでよく使われていた言葉を、あえて歌詞に用いること。「エデン」や「レクイエム」「カルマ」「ゆりかご」「方舟」などなど、最近あまりそういう表現が使われないからこそ、あえて試してみました。

■自分の伝えたい表現が
■ひとつの形を成していく

――「初回盤C」は、「秘すれば花」1曲のみの収録になりました。

葵:これは、ワンコイン(500円)での発売になります。この「秘すれば花」1曲のみでも、今回、僕の伝えたかった想いは十分伝わっていくことや、初めて触れる人にとってお試し的に手にしていただくには最適と思い、今回ワンコインCDも用意させていただきました。

――「通常盤」には、「秘すれば花」のother storyとして「10個の朗読」を収録しています。これも気になりました。

葵:まず、歌詞を書くように記した10編の物語を制作。それを一切BGMを入れることなく、リップノイズさえカットせず、僕のしゃべる声だけで収録しています。僕自身、役者や声優、ラジオ番組のパーソナリティなどを通し、音楽とは異なる表現もいろいろ勉強させていただいてます。そこで得た成果を形に出来ないか?!と思ったことが、朗読を収録する形に繋がりました。できれば、ヘッドホンやイヤホンで聞いて欲しいんです。きっと、僕が耳元で囁いてるくらい生々しい感じに聞こえてくると思いますよ。

――完成した「秘すれば花」、今の葵さんにとってどんな1枚になりましたか?

葵:今の自分の表現したいことを一番詰め込めたように、まさに名詞となる1枚になりました。だからこそ、この歌の名詞をたくさんの人たちに届け、僕のことを知ってもらえたらなと思っています。

――これからは、いろんなイベントへの出演も決まっていますからね。

葵:今回もバンド・スタイルでライブに挑みますが、楽曲/ライブ面でも一つの枠にはまることなく、いろんな表現や表情を描いていきたいと僕は思っています。だから次は、今回の作品とはまったく異なる曲調を描くかも知れないし。ライブだって、ダンサーを入れたりパーカッションを加えたりなど、編成さえガラッと変えてやっていく可能性だってある。それを出来る場が葵-168-だからこそ、これからもいろんな人と出会い、そこで新しい音楽をいろいろ作っていくつもりです。

――期待しています。では最後に、改めてひと言お願いします。

葵:今回「初回盤A/B/C/通常盤」と4Type出すのも、それぞれの作品に強いこだわりがあれば、その4作品をまとめあげることで、自分の伝えたい表現がひとつの形を成していくからなんです。たとえばジャケットだって、それぞれの写真のポージングや、そこへ映っているものにも、自分の伝えたいコンセプトを成すものが形になっています。ぜひ葵の今の想いを、この作品たちを通し感じていただけたら嬉しいです。

TEXT:長澤智典

<葵-168-主催イベント>
2013年9月8日(日) JaMJAM#3
@渋谷AX

<ワンマンライブツアー>
2013年12月7日(土)、12月8日(日) 
@大阪江坂MUSE
2013年12月20日(金)、12月21日(土)
@名古屋ell.FITSALL
2013年12月24日(火)
@東京渋谷O-EAST

「秘すれば花」
初回限定盤A WPCL-11441 1,260円(税込)
1.秘すれば花
2.蜃気楼
3.requiem ※初回盤Aのみ収録
初回限定盤B WPCL-11442 1,260円(税込)
1.秘すれば花
2.蜃気楼
3.BURN ※初回盤Bのみ収録
初回限定盤C WPCL-11444 500円(税込)
1.秘すれば花
通常盤 WPCL-11443 1,575円(税込)
1.秘すれば花
2.蜃気楼
3.貴方だけに語る10のストーリー(朗読)パート1「マジョリティ」「connivance」「メビウスと色鉛筆」「さよならカンナ」「チラリズム」
4:貴方だけに語る10のストーリー(朗読)パート2「ぱらのいあ」「大縄跳び」「孤独を愛しても」「遣らずの雨」「ことえり」

◆葵-168-オフィシャルサイト
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