【インタビュー】高橋優、『BREAK MY SILENCE』リリース「自分だけが“沈黙を破る”だけでは終わらないアルバムにしたい」

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■もっとみなさんと近い距離でボールを投げあえたらいいなと思っているので
■一番やりたいことをやっていくための狼煙(のろし)だと思ってます

──今まで語らなかったことを語った曲というと、秋田弁で歌った曲も、そうですよね。

高橋:「泣ぐ子はいねが」ですね。この曲を書いてる時は、楽しかったです。言葉遊びですから(笑)。メッセージも少しはあるんですけど、「泣ぐ子はいねが」という言葉にすべて集約されているので。なまはげ、ご存知ですか?

──知ってます。「泣ぐ子はいねが」が、なまはげの言葉だということは。

高橋:秋田の“超神ネイガー”って、知ってます?

──それは知らない(笑)。

高橋:けっこう流行ってるんです、秋田の中では。ツイッターもやってますから(笑)。秋田では、馬鹿野郎のことをホジナシっていう言うんですけど、ネイガーの敵がホジナシ怪人で、顔に“ホ”って書いてあるんですけど、それはともかく(笑)。ナマハゲの“泣ぐ子はいねが”は、“泣いてる場合じゃねぇぞ”って言ってるんですよ。“弱弱しく泣いてる子供は、オレがさらっていっちゃうぞ”って言ってるんですよ。

──ああ、はい。

高橋:メソメソ泣いて、お父さんお母さんに迷惑かけるなよと。そういうところから始まったという説もあります。この間文献を読んだんですけど、なまはげは江戸時代からずっとやっていて、今は絶滅の危機に瀕してる。中に入る人が減っちゃったんですよ。これは本当の話で。

──中の人とか言っちゃダメ(笑)。でも、そうなんだ。

高橋:あの「泣ぐ子はいねが」という言葉に、僕はすべてが集約されてると思うんですよ。“笑って強く生きろよ”という意味にも聞こえるから、それをタイトルにして連呼しようと。今の時代は、“泣く子”が多いと思うんですよ。震災もそうだし、原発もそうだし、いろんな問題が実は解決していなくて、それに対して苦しんでる人たちがいるはずなんですよ。秋田も秋田で、たくさんの問題を抱えてる。高齢化率1位、脳卒中で死ぬ人1位、自殺率1位とか、いろいろあるんですよ。秋田が取り上げられる時って、だいたい暗いニュースなんですよ。それは良くないと思うので、自分なりに秋田を活気づけたいし、自分も含めて、“泣いてる場合じゃないぞ”と。

──この曲では、お父さんお母さんのことも、思いっきり歌っちゃってますが。

高橋:そう。道の駅でソフトクリームを巻いてるおふくろと、バスの運転手しながら民謡をうたうおやじ(笑)。

──これは事実?

高橋:そうです。でもこれはけっこう、明るみになってるんで。ライヴのMCでもしゃべったし、ブログでも書いてるんで。“どこで”というところまでは言ってないですけど。

──あとはですね、「スペアキー」が気になってしょうがないんですよ。別れの歌だけど、これ、全然救いがないですよね。

高橋:ないですね。

──出て行け早く、とか。正直、歌ってて何が楽しいんだろう?と。

高橋:いや、これ、歌ってると楽しいですよ。ぜひこれ、カラオケで歌ってみてくださいよ。入るかどうかわからないけど(笑)。すごいスッキリしますから、歌ったら。まあでも、愛する人がいる時に、こういう歌を歌われたら困ると思いますけど(笑)。愛する人がいない時は、すごくいいですよ。

──どうとらえたらいいのか、最初はよくわかんなかったんですよね。あまりにも投げっぱなしだったので。

高橋:今回のアルバムのテーマとして、余白をいっぱい作りたかったんです。今までは、曲の中で全部説明しなきゃいけないと思ってたんですよ。文字を詰めて、間奏にまで言葉を入れちゃう勢いでやってたと思うんですけど、今は、それをあんまりやりたくないんですよ。歌って、聴く人がそれをどう受け取るか、そこまであって初めて音楽だと思うんですよ。たとえば童謡とか、最後まで説明しない歌が多いじゃないですか。何を思ってこの歌を書いたんだろうな?という余白を、少し残しておくことは、すごい大事だと思ったんですよね。今回のアルバムは一貫して、それをやったと思ってます。

──ああ、なるほど。全体として。

高橋:「涙の温度」とかも、これはどこの歌なのか、何の歌なのか、明確にしてないんですよ。それはすごく意図的ですね。「泣ぐ子はいねが」だって、ただ「泣ぐ子はいねが」って言ってるだけだし、それを受け止め方として、“秋田応援ソングですね”と言ってもらうことが多いんですけど、だったら「スペアキー」も、“別の意味の愛の歌なんですね”って、受け止める人もいるかもしれない。それはすごく必要なことだと思ったんですよね。余白を作るということが。

──はい。

高橋:音楽でも、映画でも、本でも、ブログでも、いろんなことに共通して言えるのが、“だから何?”っていう質問はタブーだということだと思うんですよ。そりゃ、本当は、“だから何?”っていう質問に、すぐに答えられたらいいとは思いますよ。でも、たとえばツイッターで、“渋谷なう”って書いて、それに誰かが反応して、反応しあうことで、意味が生まれていくことだと思うんですね。僕は、ツイッターが始まった当時、ずっと思ってたんです。“これ、だから何なの?”って。

──あははは。僕は今でもそう思ってますけど(笑)。

高橋:つぶやいて、だから何?って思ってたんですけど、考え方を変えたんですよ。いろんな媒体において、“だから何?”と言っちゃうと、全部終わっちゃう。相撲で誰かが勝って、誰かが負けた。だから何? オリンピックで誰かが金メダルをとった。だから何? と言ったら、それで終わりなんですよ。でもそこで、“あの相撲取りはずっと負けてたけどようやく勝ったんだ”とか、“あのオリンピック選手はこういう苦労をして頑張ってきたんだ”とか、誰かが反応することで、意味というのは、人と人との相乗効果で生まれてくる。歴史の中で、今も続いている時間の中で、光って見えてくるものだと思うんですね。だから「スペアキー」も、この曲だけ聴かれたら、確かに“だから何?”って言われるのかもしれないけど、僕はその先に何か面白いものが待っていると思うんですよね。

──なるほど。

高橋:僕はいろんな曲を作っていく中で、この曲が必要だと思った。そしてまた、この先に「スペアキー」の続編ができるかもしれないし、まったく逆のラブソングができるかもしれない。そういう中でやっていくと、絶対に必要なものになっていくと思うんですね。

──ラスト曲「涙の温度」もそうですね。とてもあったかくて救われる曲だけど、特に何か明確なテーマを言っているわけではない。つまり、余白があると。

高橋:一行目の、“涙の温度は体の温度”で、おしまいなんですよ。だから何?って言われたら。でも、その質問がないから、芸術とか、スポーツとか、文化的なものは、成り立ってると思うんですよ。それで人をあたたかい気持ちにさせたり、感動したり、そういうものにつながるじゃないですか? 僕は今、そこにすごく興味がありますね。

──これがどういうアルバムなのか、ディテールを知れば知るほど、わかった気がします。とにかく自分を全部見せることから、すべてを始めようというものなんだなと。

高橋:このアルバムは、自分だけが“沈黙を破る”だけでは、終わらないアルバムにしたいんですよ。これを聴いて、何かしらのリアクションが返ってくるのを待っている状態ですね。刺激しあう関係でいたいんですよ、曲を聴いてくれる方々とは。連鎖反応というか、キャッチボールというか、それを僕はこれからもどんどんやっていきたいし、もっとみなさんと近い距離でボールを投げあえたらいいなと思っているので。曲ができたらすぐに聴いてほしいし、その時一番やりたいことをやっていくための、狼煙(のろし)だと思ってます。この『BREAK MY SILENCE』は。

取材・文◎宮本英夫



3rdフルアルバム『BREAK MY SILENCE』
2013年7月10日発売
【初回限定盤(2CD)】WPCL-11519 ¥3,570(税込)
【通常盤(CD)】WPCL-11521 ¥3,150(税込)
1 ジェネレーションY
2 (Where's)THE SILENT MAJORITY?
 ※テレビ東京系ドラマ24「みんな!エスパーだよ!」オープニングテーマ
3 陽はまた昇る
 ※映画「桐島、部活やめるってよ」主題歌
4 人見知りベイベー
5 空気
6 CANDY
7 スペアキー
8 蝉
9 泣ぐ子はいねが
10 同じ空の下
 ※NHK総合「仕事ハッケン伝」テーマソング
11 涙の温度
<特典CD『ボツ曲大全集①』>
1 傍観悲観者
2 足フェチ
3 ブランク
4 テレビを見ながら
*初回プレス盤(初回限定盤・通常盤共通)のみ:封入特典あり

<高橋優2013全国ホールツアー【BREAK OUR SILENCE】>
7月27日(土) 福岡 福岡国際会議場メインホール 17:30 / 18:00
8月11日(日) 秋田 秋田市文化会館 17:00 / 17:30
8月17日(土) 東京 渋谷公会堂 17:30 / 18:00
8月18日(日) 東京 渋谷公会堂 17:00 / 17:30
8月24日(土) 大阪 オリックス劇場 17:00 / 18:00
8月25日(日) 大阪 オリックス劇場 16:30 / 17:30
8月30日(金) 北海道 札幌市教育文化会館 大ホール 18:15 / 19:00
9月21日(土) 宮城 仙台市民会館 17:30 / 18:00
9月23日(月・祝) 福島 いわきアリオス中劇場 17:00 / 17:30
9月27日(金) 広島 広島アステールプラザ大ホール 18:30 / 19:00
9月29日(日) 愛知 愛知県芸術劇場大ホール 16:30 / 17:30
一般発売日:2013年6月15日AM 10:00
¥5,250 (税込)
※4歳以上チケット必要/3歳以下のお子様はご入場頂けません。

◆チケット詳細&購入ページ
◆高橋優 オフィシャルサイト
◆高橋優 オフィシャルFacebook

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