【月刊BARKS つんく♂ロングインタビュー vol.4】「いまの自分は子供たちともう1回人生を歩んでいってる感覚」

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▲ つんく♂オフィシャルファンクラブ「つんく天然音泉」のイベント時の握手会の模様
結成25周年を迎えているシャ乱Qのフロントマンであり、モーニング娘。やBerryz工房、℃-uteらが所属するハロー!プロジェクトのプロデューサー。同時に、総合エンターテインメントを手がけるTNXの社長であり、家庭に戻れば3児の父。

◆つんく♂ 撮りおろし画像

多彩な顔を持つ、つんく♂へのロングインタビュー。最終回(第4回)は、家庭のこと、そしてこれからのつんく♂について。

  ◆  ◆  ◆

── 今回はプライベートなつんく♂さんのお話を伺っていきたいと思うんですが。現在、つんく♂さんはお忙しいなか、家庭では絶賛子育中でもあって。

つんく♂:今日も家で飼ってるカマキリのお世話してきましたからね(笑)

── そのようにお子さんが生まれて以降、日常生活もガラッと変わったと思うんですが。お子さんたちを通して、子供たちの音楽に対するリアルな反応を見て思わずハッとするような瞬間って……。

つんく♂:ありますね。それは。たとえば、ライヴのMCで「少し長いけどファンも喜んでるからこのまま行こう」と思ってるものだと、うちの子供らは、やっぱり飽きてるんですよ。友達に連れられて初めてライヴを観てるお客さんが会場にいたとしたら、初めて観る人はやっぱり「ここ長過ぎるな」って思ってるところなんですよね。きっと。子供を見てるとリアルにそれがわかるから(MCの長さを)削ったりするし。曲もそうなんですよ。今後、ハロー!プロジェクトは、クールビューティーに、ファッショナブルにいきたいと思ってるんですけど、それも、どこか一線を越えてしまうと一般の人々の興味を失うんですよ。ミュージシャンたちが「俺らの音楽はわかってくれる人だけがわかればいいんだよ」っていってるような方向にいってしまう。そっちにはいったらダメだな、というのはあるんです。

── なるほど。

つんく♂:常に一般の人が「お、この曲、いい曲だね」って思うもの、その中にいたほうがいい。アルバム作ったとき、1~2曲ならそこからはみ出すマニアックな曲があってもいいとは思うんですけど。そこの判断の軸は、まだ子供は小さいんで、子どもらの反応を見ておけば何となく「あ、この曲はちょっといきすぎたかな」とか「これはちょうど」とか、わかりますからね。

── えっ、わからないんじゃなくてわかるんですか?

つんく♂:5歳の子供でもカッコいい、カッコ悪いはちゃんとわかるんですよ!

── ほぉ~。

つんく♂:大人から見て、「子供が好きそうだな」って思う曲、これには反応しないんですよ。逆に「この曲はわからんやろー」って曲でも、ぶわーっと踊ってるんです。で、「ああ、そういうことか。俺らもそうだったもんな」って思うんです。自分たちが子供の頃、幼児番組で童謡がかかってもそんなに興奮しなかったじゃないですか?

── ええ、ええ。

つんく♂:大人が聴いてたキャンディーズのほうがよっぽど刺激的だった。僕らが幼稚園のときにフィンガー5の「恋のダイヤル6700」が流行ったけど、あの<リンリンリリン~>に興奮してた訳ですよね。だから、こっちが(子供に)寄せる、合わせにいったらダメなんです。ハロー!プロジェクトにいる10歳の子供たちでさえ、自分がどんな格好をしたいかがちゃんとあるんで。こっちはこっちで自分がカッコいいって思うものを投げていかないとダメなんですよね。

── そのカッコいい音楽をリズムで体感していくことに関して、つんく♂さんはすごくこだわりをもってらっしゃる方だと思うんですね。それはハロー!プロジェクトのメンバーのリズムのとりかたのトレーニング、さらにはそういうリズム感を養おうと「リズム天国」というゲームソフトまで企画・プロデュースしているところにも表れていて。そういうつんく♂さんだからこその、リズム感を養うためのお子さんの育て方とかあったりするんでしょうか。

つんく♂:リズム=体感なんで、10ヵ月になる前から子供をだっこするときは音楽をかけて、音楽のリズムにのって抱っこしてあげるというのをやってますよ(笑)。だから、うちの子たちはこれがリズムなんだ、というのは体感でわかってると思います。

── はー。すごいですね!

つんく♂:いまの中学生でも「リズムとってみ?」っていうと、全然とれてないんです。リズムを感じて動けて、ダンスができても、実際にリズムはとれてんのかっていうと、とれてないんです。うちの子は上の子は男の子と女の子の双子で、男の子のほうはリズム感はあまりよくないですけど、女の子のほうはリズムには強いですね。

── こうして、赤ちゃんの頃からリズム体感抱っこをしていけば、リズムがとれる人間に育っていくと。

つんく♂:と思いますけどね。これがこの曲のタイム感なんだというのは曲によって違いますから。抱っこしながらそれを体感させていけば、「この曲はこうやってお父さん揺れてたな」って記憶が体に入ってると思うんですけどね。

── なるほど。それから、つんく♂さんの意外な顔が見られる番組として民放の地上波の連ドラを斬っていくトークバラエティー『THE ドラマカンファレンス』というのがあると思うんですが。あれ、大好きなんですよ(笑)。

つんく♂:はいはいはいはい。あれは観てもらっては困るな~(笑)

── つんく♂さんは“国内ドラマ応援隊長”という肩書きであの番組に出演されていますけど。つんく♂さん、ドラマお好きなんですか?

つんく♂:シャ乱Qの「いいわけ」という曲を『Age.35 恋しくて』というドラマの主題歌に使ってもらったとき、「シャ乱Qでやっとドラマ主題歌がとれた!」と。それでドラマを録って観るようになって。当時、月9で『ロングバケーション』をやってたので「それも録っといて」って。その頃、週に4本ぐらいドラマを録画して、ツアーの合間に観るようになった。そこが始まりですね。

── つんく♂さんのドラマ人生がそこからスタートした訳ですね(笑)。

つんく♂:それで、自分たちが主題歌やってたドラマが終わった後も、他にはどんなドラマやってるんだろうとか、そこにはどんな曲が使われてるのかと思うようになってから、ドラマを意識的にチェックするようになったんです。主題歌はこういう曲が使われてて、そのタイトルバックはこういう風で、ドラマはいきなりここから始まるんだとか、このドラマは挿入歌のほうがいいなとか思いながら観るようになっていったんです。

── プロデューサー目線でのリサーチですよね。

つんく♂:はじめは市場調査的な感覚でした。でも、途中からドラマも楽しくて観るようになっていったんです。モーニング娘。が始まってからいろんな人と出会うようになるじゃないですか? そこでは役者さんとかプロデューサーさんとも出会うわけですから、会ったときに「ドラマ観てますよ!」っていうと、反応が全然違うんです(笑)。そこからコミュニケーションも生まれるしね。でも、ドラマを週に何本も観ているってこと自体は、あまり口にはしなかったところなんですよ。知ってる人からは「ドラマ詳しいんだから」と、いろいろ仕事のオファーはあったんですけど、そこを仕事にするとしんどいなと思って。ドラマはあくまでも趣味。自分がやれる範囲でこの番組もやってます。

── ちなみに、つんく♂さんがこれまで観たドラマで、コレは凄いと思ったドラマは何だったんですか?

つんく♂:三上博史さんがまだ5番手ぐらいで出ていた頃のドラマで『華やかな誤算』というのがあったんですよ。これに出ていた三上さんがあまりにもカッコよくて“役者もいいな”と思ったんですけど(一同爆笑)。ま、好きなドラマはいっぱいありますよ。最近だと『間違われちゃった男』。あれは面白かった。

── ドラマ以外につんく♂さんがいま没頭しているもの、趣味は何かありますか?

つんく♂:いまはないですね。子育てぐらいですね。

── 分かりました。ではここからはまた音楽のお話を伺っていこうと思うのですが。ハロー!プロジェクトとしてつんく♂さん自身、世界進出はいまどのように考えてらっしゃるんでしょうか。

つんく♂:そうですね。いまハロー!プロジェクトでは、YouTubeに英語の歌詞を載せてみたりというのも始めてみたり、この1~2年、握手会で世界にも行ってますけど、まだ様子を見ている段階ですね。無理はしないほうがいいと思うんで。過去を振り返って見ると、だいたいアイドルは世界に行った時点でダメになってますから。

── でもハロー!プロジェクトのようなエンタテインメントは本当に日本オリジナルのもので、海外ではいまも誰も真似できていないじゃないですか。だから、どんどん世界でハロー!プロジェクトのニーズが高まっているのも事実で。

つんく♂:そういう意味では、海外に住んでいる日本のJ-POP好きの人たちは熱狂してくれてるんですけど、それ以外の人たち。一般的な人たちがそこまで僕らに興味を持ってくれてるのかっていうとまだ“?”だと思うんですよね。でも、K-POPはポピュラーなんですよ。どの国のどんな人が見ても“カッコいい”んです。

── ああ、確かに。それに較べると、J-POPはもっと癖があるものだということですか?

つんく♂:日本の音楽でいうとアイドルやアニソン、ビジュアル系バンドなんかも俯瞰的に見るとヨーロッパやアメリカでリアクションのあるものは現地のマニアに受けてるんだと思うんです。「KAWAII」という言葉とかもどっかマニアックなんですよね。きっと。アメリカ、ヨーロッパの大衆にはまだ響いてないんだと思います。

── じゃあもっとわかりやすくて日本のカラーを持ったJ-POPアーティストが出てこないと、J-POPは世界の一般層までは届かないということですか?

つんく♂:でもね、そういうものが日本でウケるかっていう問題もあるんです。たぶん、ウケないんですよ。国内では。
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