【インタビュー】小林太郎、自分自身の言葉と向き合い、それが自然に音楽として還元されていった初シングル「鼓動」

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メジャー1stフルアルバム『tremolo』をリリースして半年。小林太郎が初のシングル「鼓動」をリリースする。これまで、もがきながら音楽と向かい合い続けていた小林太郎だが、『tremolo』で一つの答えと手応えをつかみ取った。そこから一歩踏み出し、新たなる課題に立ち向かったのが今作だ。音楽=自分というところに気づき、より自由に音楽を楽しむ小林太郎の姿が見えるシングルだ。

■もっと「言葉」っていうものを
■自分のものにしなきゃいけないんじゃないかと思った

――シングルは初めてですね。気分は違いますか?

小林太郎(以下、小林):アルバムなら10曲あれば10曲で、自分のいろんな音楽性や気持ちを出せるので、自分自身をわかってもらいやすいと思うんです。でもシングルって1~2曲の中で、自分の全部ではなくて、大事なものをわかってもらう作業なのかなぁと。曲がたくさん完成してからどの曲にするのか選ぶのと、どの曲を完成させてもシングルになるっていうのとも違うじゃないですか。そこも踏まえながら、今までと違う向き合い方ができたと思います。

――どんな風に違っていました?


▲『鼓動<初回限定盤>』
小林:今までなら「音」と向き合いたい、「音」とぶつかりたい……って、「音」が主体だったんです。頭の中に流れるイメージを表現する。アルバム『tremolo』は、それが最低限できたかなっていう手応えがあったんですね。このシングルは『tremolo』の次の作品なんですが、もう「音」とは向き合ったから、今度は曲を構成する大事な要素である「言葉」っていうものをもっと自分のものにしなきゃいけないんじゃないかなと思い始めたんです。

――『tremolo』の時に、「ようやく頭の中にあるものを形にする術を見つけた」っていう話もしてましたものね。「鼓動」はそこから一歩進もうとしているんですね。

小林:全部できたわけではないんだけど、もう「音」はいいやって自分で思えたし、最低限なら自分の思い通りになるって思えたからこそ、今度はあまり向き合って来なかった「言葉」っていう自分の内面世界と向き合ってみたくなったんです。今までも自分の内面がストレートに現れているものはあると思うんですが、曲を書くときに、「なんとなくできました」じゃなくて、これを言いたい、これを書きたいってテーマが明確にあって、どういう言葉を選ぼうかっていう作り方はしたことなかったんですよ。自然に出て来たことに対して、「あぁ、俺ってこんなこと思ってるんだ」っていう感じで。

――以前、「作った後で意味が出来てくる」って話もしてましたね。

小林:そうなんですよ。「音」と向き合ったときに、自分のイメージを作るには、足してばかりじゃなく、引き算が大事だとか理解していったんです。言葉も同じなんだなって。自分の気持ちとか想いとか以外は全部いらない。良い言葉を選ぼうと思えばいくらでも選べると思うけど、良い言葉を選ぶのではなく、自分自身の言葉を歌詞にしなくちゃいけない。

――そう強く思うきっかけが何かあったんですか?

小林:ライヴですね。「じゃあ、この曲で何が言いたいの?」っていうところが、今までは音のことでいっぱいいっぱいでわからなかったんですが、『tremolo』ができてライヴをしてみたら、お客さんとすごく近くなれたんです。音だけでも自分のイメージ通りで作ったからこそ、その音だけでライヴで近くなれて、一緒に楽しめるようになった。そこで、自分に素直なもの、自分の中のものを出すっていうのは、音楽が自分にとって近くなることなんだなと思ったんです。音楽は他人ではなく自分自身になる。今までみたいに、自分と音が距離を置いて戦うのではなく、自分自身が音楽になることで、自分も、自分が作った音楽も、聴く人に近くなると思ったんです。自分とも仲良くできていない音楽が他人と仲良くできるはずがないので。

――なるほど。メジャーデビューの前まで、小林くんは、自分にとって音楽が何なのかってところで悩んでいたけど、この短期間で違う次元に行きましたね。


▲『鼓動<通常盤>』
小林:ははは。そうですね(笑)。

――以前は自分はあくまで媒介であるというスタンスだったけど、それをしたことで、自分=音楽になっていったわけですね。

小林:そうですね。以前はコントロールできなかったからこそ、自分と音楽との距離を置いてたんですよ。お客さんともそうだった。自然体であることには変わりないんだけど、どういう自然体かっていうと、「自分自身」っていう自然体。あまりうまくできないなら、「あまりうまくできませんでした」っていう曲を作らなきゃいけないんだなと。自分自身を捨てちゃいけないし、偽るとか飾るとか、そういうことをしてはいけない。自分自身になるということで、媒介としての自分が音楽に溶けていってる。聴く人の心に直接届くように近くなってく。そういうことが大事なんだなって。

――媒介として音楽を作っていたときも今も、実は音楽への向き合い方は一緒だって気づいてますか? 作為的ではなく素直に出して行くということには変わりないというか。

小林:そうなんですよ(笑)。前は音楽をやるってことに関して、ものすごい構えてたんです。でも今は、音楽をやっていない本を読む時間も、それに集中すれば音楽になるし、誰かと過ごした時間、ゲームした時間までも音楽と関係してるんだなって。前は、逆に、いろんなものが音楽に繋がるから勉強しなきゃいけないって頭で考えてやっていたんですよ。でもわざわざそうしなくても、自然と音楽に還元されていくんだなってことがわかったんですよ。

――なるほど。

小林:昔から自分が好きな音楽って、自分が作ったわけではないのに、「これって俺の曲だなぁ」って思えるような曲だったんですね。俺もそういう曲が作りたい。自分の音楽について、音源でもライヴでも「生々しいね」って褒め言葉で言われることが多いんですが、その「生々しい」って感じは、目の前に生き物がいるっていうものだと思うんですよ。刺激的なものが近くにあるから、嬉しいし楽しいし怖い。今、俺が「近づきたい」っていう思いは、俺の良さである生々しさを最大限に活用したいことなんだなって。ライヴでも曲でも。

――そういう意味で「鼓動」ではどんな挑戦をしましたか?

小林:ライヴっていう生々しさ以外で感じられる、精神的な生々しさ。俺の気持ちがここにあるよっていう近づき方が、少しできたんじゃないかな。

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