【インタビュー】いきものがかり、アルバム『I』を語り尽くす<前編> 「聴き手の方々にも“自分の曲”として聴いていただきたい」

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去る6月にリリースされた「123~恋がはじまる~」に続き、早くもニュー・シングル「笑顔」が登場。いきものがかりは今年も絶好調だ。そしてこの7月24日には待望のニュー・アルバム『I』(読み方:アイ) が発売を迎えることになる。質の高いポップ・ソングが詰まっているばかりではなく、このグループならではの価値観や多様性が詰まったこの作品について、メンバーたちにたっぷりと話を聞いた。今回は二回に分けて、そのロング・インタビューの一部始終をお届するとしよう。まず今回は、アルバムの全体像について。『I』という象徴的なタイトルが意味するのは、果たして何なのか? そして“いつも通りのことを続けていくこと”の大切さを感じながら作られたという前作アルバム、『NEWTRAL』と今作との違いはどんなところにあるのだろう?

◆いきものがかり 画像

■一定の場所に向かって淡々と歩いていったところで納得のいく作品に──山下
■枠みたいなものをみんなで共有できてる感覚があった──吉岡

──前作の『NEWTRAL』から1年5ヵ月。あのアルバムと今作とはどのような位置関係にあるんでしょうか?

水野:前作のときは、まさにそのタイトルのごとくニュートラルであることをすごく意識してたと思うんですね。逆説的に言うと、ニュートラルな状態になりきれていなかったからこそ、そういう発想になったという部分もあったはずで。それに比べると今回はより自然に曲が出てきたままの状態というか、本当に聴いていただけばおわかりの通り、各曲がいろんな方向を向いてるアルバムだと思うんです。あくまで楽曲主体に考えて、曲が良い状態で収められることを最優先しながら並べていった結果、こういう作品になったというか。そういう意味では、よりニュートラルな作品ということになるんじゃないか、と。

──つまり『NEWTRAL』は、“ニュートラルでありたい”という作品だった。

山下:そうですね。最近になってよくそんなことを思うんです。前回は震災後だったということもあって……言い方が難しいんですけど、“触っちゃいけない感”みたいなものがなんとなくあったと思うんです。そこを少なからず意識してしまってた。それに比べると、今回はいい意味で、より淡々とできてるんですよ。そんなに感情の起伏のない状態で制作できたというか。もちろん曲ごとの温度感とか音楽的な起伏というのはあるんですよ(笑)。ただ、正直なところ、前作のときは最初のうち、だいぶ自信がなかったというか、“大丈夫かな?”みたいな不安があって。当然、作っていくうちに“いいものができたな”という感触を得ていくことになったわけですけど、今回の場合はむしろ、一定の場所に向かって淡々と歩いていったところで納得のいく作品に辿り着きました、みたいな感じがあるんです。

──目指していた場所に到達できたという達成感よりも、自然にいいものを作ることができた満足感のほうが大きいということですね?

水野:うん。僕もそういう感覚が強いですね。そういう意味でも今作こそが、本当にニュートラルなアルバムということになるのかもしれない。

吉岡:前作との関係性みたいなことについてはうまく説明できないんですけど、今回は本当にフラットに楽曲を選ぶことができて。そういう意味ではどんどんニュートラルになれてきてるのかな、と思います。選曲のとき、いつもシングルで出してきた曲たちを軸にしながら考えていくんですね。もう時間的にだいぶ遠のいた感じの曲とかもあるわけですけど、それも含めて全部公平な目で見て。結局、デモ音源がCD-Rで5枚ぶんくらいあったんですけど、そこからメンバーとまわりのスタッフとで選んでいって。そこで基準になったのも単純に“この曲いいね”とか、“この曲をやるなら今だよね”みたいなことでしかなくて、なんかやっぱり淡々としていて。もちろん曲を絞り込む作業は一度では終わらなかったんですけど、すごく冷静にそれを何度か繰り返していって……。なんか具体的な取り決めがなくても“こういう方向性で”という枠みたいなものをみんなで共有できてる感覚があったし、意思疎通のあるなかで作業を進めていけたんです。

──アルバムの設計図があらかじめ決められていたわけではないのに、暗黙のうちに全員の意識が重なっていた、と?

水野:そういうことですね。

──しかし大変そうですね。それだけの量の音源からの楽曲総選挙というのは(笑)。

吉岡:それがまた面白いんですよ。各自がマルを付けていくんですけど、すごく票が集中する曲もあれば、全然被らないものとかもあって。そうやってバラケたものを組み合わせていくのもまた楽しくて。

山下:最終的にはそこで曲同士の相性とか、そういった部分が重要になってくるわけですけどね。なかには泣く泣く切られる曲もあり……(笑)。

水野:代表落ちする曲、というのが出てくるわけです(笑)。

山下:もちろん逆に、そこで浮上してくる古くからの曲とかもあるんです。このアルバムで言うと、まさに「東京」とかはその代表格みたいなもので。

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