【インタビュー】音楽の醍醐味を伝える<MPN SUMMER CAMP>を椎名和夫×松武秀樹×山本恭司が語る

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■錚々たるメンバーが名前を連ねる
■ゲストクリニックの講師陣

――その他のゲストクリニックの講師陣もスゴいメンバーです。学ぶところが多そうですね。


▲椎名和夫
椎名:それぞれの楽器を追求してきた人たちですからね。まあ、学んでほしくないところもいっぱいありますけど(笑)。広規(伊藤広規:b)と大二(岡井大二:dr)はこれまで色々なところで一緒にやってきてるんです。ドラムとベースは“グルーヴ”につきるんですが、それをどう提示していくか、ですね。体内のクロックとかパルスを、合わせるというより提示するという考え方を、彼らはきっとうまく教えてくれると思います。佐々木久美さんはいろんな人と組んでバッキングヴォーカルの仕事をされている方で、僕も山下達郎ツアーでご一緒しました。アンサンブルの構成、その維持についてプロフェッショナルなので、そういうことを伝えてくれると思います。

――恭司さんはアマチュア時代スクールに通っていて、教わる側だったこともあるんですよね?


▲山本恭二
山本:理論も色々学びましたけど、当時はそんなのどうでもいいって思ってましたね。それでもちゃんと自分の引き出しには入っていて、行き詰った時にそれがいいヒントになったりする。学ぶことは近道を知ることになりますよね。僕が40年以上もトライ&エラーを繰り返しながら身につけてきたことを教えてあげれば、若い人の近道になると思います。僕だって、たとえばハーモニックスなんか全然わからなかったけど、マウンテンのレコードのライナーで成毛滋さんがちょっと書いてくれてたことがヒントになった。実際にその音が出せたときは感動ですよね。そういう、“目からウロコ”というか、ひとつでもわかると一気に世界が広がるような、そんなヒントを僕はたくさん出せると思います。

椎名:僕らが若いころは情報がなかったから、自己流で耳コピーから初めるのがほとんどでしたよね。

山本:レコードとかカセットだったし、テープ伸びちゃうくらい聴いた(笑)。

椎名:ですよね。ピッキングのやり方だって、ある日なにかで自分と違うのを見て、なんでああやって弾けるんだろうって感動したりして、そういう蓄積で学んでいったわけで。

山本:雑誌のグラビアでギタリストがギターを持ってるのを見て、何か意味があるんじゃないか、ってその通り押さえてみたり、ホントに手探り。雑誌だってコードが書いてあるくらいで、リードなんてまったく情報がなかった。

椎名:そもそもの話に戻りますが、最初はどんなところから楽器を練習していったんですか?

山本:僕はテン・イヤーズ・アフターの「LOVE LIKE A MAN」のリフ、“タタタタン、タタタタタタン”ってそれだけなんですけど、もちろんチョーキングも知らなかったし、人差し指一本で。それも最初は姉が持っていたマンドリン、そのあとガットギターで色々やってるうちに、こっちの指も使ったら楽になるぞ、とか、同じ音がこっちの弦にもある、とか、手探りでしたね。

椎名:実は僕もマンドリンからなんですよ。ギターを買いたかったけど手が届かなくて、まずフラットマンドリンを買ってコードを覚え始めた。

松武:僕はトランペットからでしたけど、電気が好きだったのでもっぱらラジオとか作ったりしてたんだけど、1970年の万博でシンセサイザーを初めて聴きましたね。なんかバッハとかやってる人がいるぞ、と衝撃を受けて。そういう出会いがなければ音楽をやってなかったかも。

――では松武さんは音楽への興味ではなくて、電気的な興味からシンセサイザーに入っていった?


▲松武秀樹
松武:そうです。僕、鍵盤はまるで弾けませんでしたから。

椎名:僕らはソフトから、松武さんはハードからっていう入口ですよね。

松武:そうですね。僕は音楽理論なんてなにもわかってなかったから、トランペットとトロンボーンとサックスで練習をしたときに、みんなでドの音を出したら、みんな違う音で(笑)。管楽器ってみんなキーが違いますからね。それから譜面を持ってきて、管ごとに音域が違うことがわかって、そこからアンサンブルを知ってという。

山本:僕は、松武さんとはYMOより前に一緒に仕事してたんですよ。そのとき、“永久音階の機械を作ったんだ”って聴かせてくれた(笑)。何オクターブも永久に下がっていくように聴こえるっていう。

松武:ああ、あったあった(笑)。でもそういう、音楽の入り口になったきっかけみたいなことも、今回のサマーキャンプで話してみたいなと思いますね。どうしてもシンセって鍵盤がついてくるんだけど、あんなの楽器っていうより単なる電圧コントローラ、スイッチだから(笑)。そう考えればそんなに難しくないでしょう。でもギターってアンプによっても音が違うし、エフェクターも色々あって、もちろん弾く技術でも違う。その中からある音を選び出す、自分の音を作るっていうのは難しいと思うんだけど。

山本:これはクリニックでも言おうと思ってることなんですが、結局のところ出す音の80%は右手と左手でやることで決まっちゃうんです。僕なら、ある程度歪んでいるものなら、それがテレキャスだろうがセミアコだろうが、どんなアンプでも僕の音にできちゃう。だから楽器やアンプって、自分のイメージする音をどれだけストレスなく出せるかっていうところで選ぶんですね。それはみんな違うから、友達のものを使ったりして色々試しながら近づいていけばいいと思います。

――では、今回のサマーキャンプでとくに伝えたいことってどんなことですか?

松武:僕はアナログの時代からやってきて失敗の連続でした。今のデジタル・シンセは記憶できるけど、昔はいい音ができても残せなかったし、同じ音を作るのも大変。いい音ができたらノートに書いてましたよ。

山本:初期のドラクエみたいですね。呪文をメモしなきゃいけないっていう(笑)。

松武:そのノートを見たって同じ音にならない。でもそういう失敗がいい音を作るための源になってると思うんです。そういうことをぜひ知って帰ってもらいたい。そして、一度いい音ができたからってそれを100回も200回も使うんじゃなくて、一回使ったら消しちゃえと(笑)。そのくらいの気持ちでやってもらいたいですね。

椎名:じゃあ松武さんの捨てた音色を僕がもらいます(笑)。

山本:僕は、プロの仕事ってシンプルに人をハッピーにすることだと思ってるんです。ライヴのお客さんでも、スクールに来る生徒でも、ハッピーになって帰ってもらいたい。基本的にはそれだけですね。

椎名:それ、すごく大事ですよね。今回プロフェッショナルの音に直にふれてもらえば、きっと演奏の楽しさも改めてわかってもらえると思います。

山本:今は教則DVDとか動画サイトとか色々ありますけど、目の前の至近距離で出された音を味わうことって、得られる情報が半端なくデカいですよね。

松武:そうそう、それも大事ですよ。とにかく魅力ある職業である、ということは言いたいですね。

椎名:僕ら50年もやってますけど後悔してません、みたいな(笑)。

松武:それを伝えられたらOKかもしれないですね。


――では最後に、間近に迫ったサマーキャンプに向けて、読者にメッセージをお願いします。

椎名:僕は61歳になりますが、ミュージシャンを志してから今日まで、ピッキングの方法、ハーモニクスの出し方、すべて一つ一つ好奇心の塊でした。そういう発見とか感動の積み重ねが人生を作ってるようにも思うんです。今回のサマーキャンプがそんなきっかけになってくれればうれしいです。

松武:今の世の中で鳴ってる音のほとんどがシンセ、というような状況になってますが、今回僕は、シンセサイザーの本当の姿はこういうものです、というのをお見せしたい、お聴かせしたいと思っています。

山本:アートって、音楽も含めてすべて感情表現だと思うんです。ギターでも右手の位置、左手のビブラート、押さえ方の強さだけでもこれだけ表現方法があるんだというのを知ってもらいたい。そこに特殊奏法を組み合わせるとまた何倍にも広がる。ギターというとみんな想像する音があると思うけど、それとは違うような、こんな音も出せる、こんな表現もできるっていうところも伝えたいと思っています。

<MPN SUMMER CAMP>
主催:公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会
開催日程
8月1日:学生 Special Day ゲスト・佐々木久美(Vo.&Key.)
8月5日:マスターコース ゲスト・今 剛(Gt.)
8月6日:マスターコース8月7日:マスターコース ゲスト・伊藤広規(Ba.)・岡井大二(Dr.)
8月3日:ゲストクリニック Key.&Syn. クリニック 松武秀樹・氏家克典(Key.&Syn.)
8月7日:ゲストクリニック Ba.&Dr. クリニック 伊藤広規(Ba.)・岡井大二(Dr.)
8月20日:ゲストクリニック Gt. クリニック 山本恭司(Gt.)
8月22日:ゲストクリニック Gt. クリニック 今 剛(Gt.)

開催場所:芸能花伝舎(http://www.geidankyo.or.jp/12kaden/)
東京都新宿区西新宿6-12-30

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