【インタビュー】いきものがかり、アルバム『I』を語り尽くす<後編> 「歌謡曲の重みを形にすることは、自分にとっても意味のあることだった」

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■熟練の人たちを受け止め得るだけのメロディが作れたんだと思いたい──水野
■とにかくアルバムの曲たちがどれもキャラの強いものばかり──吉岡

──わかるような気がします。さて、水野さんからも1曲。

水野:では「恋愛小説」について。歌謡曲に対する強い憧れというのが自分にはあるんですけど、それが全面に出たのがこれで。こういう曲をいつかやりたいねというのは、ずっと言い続けてきたことでもあって。この曲自体はもう4~5年前に作ったものなんですよ。で、いつか出せるタイミングがあったらいいね、みたいなことを言っていて、それがやっと今回実現したんです。ただ、歌謡曲とはいっても演歌とかに近いものではなくて、80年代後半~90年代アタマぐらいの、ちょっとバブル期みたいな(笑)。

──ちょっと都会的に洗練された、シティ・ポップスと呼ばれた類いのものですね?

水野:そうですね。村下孝蔵さんだとか、稲垣潤一さんだとか。ああいった方々の楽曲への憧れが強く出てると思います。この曲について自分でも素晴らしいなと思うのは、演奏陣なんですよ。とにかく素晴らしい演奏なんです。だからこそパロディにならずに済んでいるというか、“なんちゃって”に終わってないというか。そうならないことを重視したかったんですね。それはもう、演奏陣のおかげだと思ってるんです。この曲をこういう形で完成できて、こうやってアルバムに入れられるようになったこと自体にも感慨めいたものがあって。

──“なんちゃって”で終わってしまうか否か。それは、演奏面でのさじ加減などにもかかってくるということですか?

水野:そうですね。僕らにはまだまだ、細かいところまでよくわかってるとは言えないですけど、やっぱりギターひとつをとっても……たとえばこの曲の場合、2人の方に、ダビングではなくて“せーの”で同時に録ってもらってるんですね。そこで現れてくるグルーヴとかっていうのも、その人たちじゃないと生まれ得ないものなので。僕らとか、もっと下の世代とかの拙い演奏力でそれをやってしまおうとすると、その次元まで達さないというか、ただの真似で終わってしまうところがある。なんか、そういったところの駆け引きの次元が違うんですよね。淡々としたドラムのようでいて、ちゃんとドラム自体が歌ってたり。そういうのはやっぱり熟練の人たちの力だな、と。しかもちゃんとそういったものを活かせる曲だったんだということを誇りに思えていて。そういうものを受け止め得るだけのメロディが作れたんだと思いたいんですよ、僕としては。

──ええ。実際、だからこそ熟練のプレイヤーたちからも引き出されたものがたくさんあったんだと思います。しかし改めて思いますけど、歌謡曲ってどこか悲しいんですよね。

水野:そうですね。明るい曲調だとしても、妙にせつないというか。

吉岡:歌謡曲を目指して2人が曲を作ってくるというは前々からあったので、求められてるテイストについてはハッキリしていたわけですけど、やっぱり自分自身がそこにちょっと追いつかない部分とかもあって。それこそ他の曲に比べたら、もっと大人の雰囲気を求められる部分もある。だから、それこそ山口百恵さんとかの昔のレコードを聴いて研究したところとかもあったんです。語尾の響きの儚さとか、すごいんですよね。しかも儚いのに、強さもあるんですよ。もちろんそれをすぐに自分のものにできるはずもないんですけど、そういった歌謡曲の重みというか、それらしきものを形にするということは、自分にとってもすごく意味のあることだったので。そこをなんとか成立させられるように、と思いながら歌いましたね。そういった語尾の響きひとつをとっても……深いな、というか。言葉で言うともう“深い”としか言いようがないんですけど。

──それぐらい工夫しがいのある曲だった、ということですよね。

吉岡:ええ。やっぱり突き詰め始めると果てしないところがあって。

──歌謡曲というのは時代によってはいちばん軽視されていたもの。しかし皆さんの場合はそこに“重み”や“深み”を感じているというのも興味深いところで。

山下:要するにリスペクトしてるんですよね。結構まわりには、そういうものをダサいもの、ノスタルジックなものとしてしか見てない人たちも少なくなかったんだけども、うちの3人はいつも「意外と良くね?」という感覚で(笑)。たぶんホントはみんな好きなんだよな、と思うんです。で、そういうものをなんとか自分たちで作れないかなという気持ちでやってきて。そのニュアンスがこの曲にはいちばん強く出てると思いますね。

──そういう意味では歌謡曲は大人にしか作れないものでもあるはずだし、皆さんが常々口にしてきた“今現在なりの歌謡曲”というものが完成に至りつつあるようにも思います。同時にこのアルバムの随所に“大人だからこそ気付かされる部分”というのがたくさん含まれているのも感じさせられました。そしてこのアルバムを引っさげて、9月1日からは次なるツアーも控えているわけですが、ライヴに求める理想みたいなものも当然より高くなってくるはずですよね?

山下:やっぱりアリーナ規模の会場でやるようになってから、いろんな演出とかも取り入れるようになってきて。新鮮な驚きと、喜びと、楽しみと……そういったものを届けられればな、と思ってますけどね。最近、なんとなくこのツアーの内容についても話に出てくるようになってきて、とにかくワクワクできるようなことができればいいな、と。

吉岡:去年もツアーはやってたんですけど、なんか気分的にはひさしぶりな感じがあって。アルバムに入ってる曲をできるだけたくさんやるツアーになると思うので、このアルバムの良さを共有できたらな、というのもあるし。とにかくアルバムの曲たちがどれもキャラの強いものばかりなので、それがより生々しく伝わるといいなと思ってます。歌詞にも何度も出てくるように、みんなで“笑顔”になれたらなと思いますし(笑)、一緒に思いっきり楽しめるようなライヴにしたいと思います。

水野:……2人にほとんど言われちゃいましたけど(笑)、何回もツアーをやってきて、どうしてもこっちとしては“知ってもらえてる前提”でそこに臨んでしまうようなところが出てきてしまいがちなんですね。だけど、やっぱりこれが初めてというお客さんもたくさんいらっしゃるだろうし、こっちにとっては20何本のツアーのうちのひとつでも、お客さんにとってはその日限りのものかもしれない。すごく当然のことなんですけど、そういうところにちゃんと向き合えるようでありたいですね。初めて観に来てくださった方たちにも楽しめるようなものにしていきたいし。あとはもう『I』というアルバム・タイトルですから、1人ひとりに参加してもらって、1人ひとりに楽しんでもらえるようなものにすること。そういうツアーにできればいいなと思ってます。

取材・文◎増田勇一



6th Album『I』(読み方:アイ)
2013年7月24日(水)発売
【初回生産限定盤[CD+DVD】ESCL 4089-90 ¥3,500(税込)
◇初回生産限定盤6大特典
(1)「イッキーモンキーのiラジオ」収録DVD
※メンバーとアルバム制作に関わったサウンドプロデューサーによるアルバム解説撮り下ろし映像
(2)スペシャル12面パノラマフォトシート
(3)いきものカード036
(4)スペシャル三方背BOX
(5)3面デジパックCD+DVDケース
(6)いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2013 ~ I ~ チケット特別抽選先行案内
【初回仕様限定盤[CD]】ESCL-4091 ¥3,059(税込) 
◇初回仕様限定盤特典
(1)いきものカード036
(2)いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2013 ~ I ~ チケット特別抽選先行案内
1.「笑顔」 作詞・作曲:水野良樹 編曲:亀田誠治
2.「1 2 3 ~恋がはじまる~」 作詞・作曲:水野良樹 編曲:本間昭光
3.「ぱぱぱ~や」 作詞・作曲:水野良樹 編曲:本間昭光
4.「恋跡」(読み方:コイアト) 作詞・作曲:山下穂尊 編曲:田中ユウスケ、近藤隆史
5.「ハルウタ」 作詞・作曲:山下穂尊 編曲:江口 亮 弦編曲:江口 亮、村山達哉
6.「マイサンシャインストーリー」 作詞・作曲:山下穂尊 編曲:島田昌典
7.「なんで」 作詞・作曲:水野良樹 編曲:亀田誠治
8.「あしたのそら」 作詞・作曲:山下穂尊 編曲:本間昭光
9.「風乞うて花揺れる」 作詞・作曲:山下穂尊 編曲:蔦谷好位置
10.「MONSTAR」 作詞・作曲:水野良樹 編曲:鈴木Daichi秀行
11.「恋愛小説」 作詞・作曲:水野良樹 編曲:亀田誠治
12.「東京」 作詞・作曲:吉岡聖恵 編曲:蔦谷好位置
13.「風が吹いている」 作詞・作曲:水野良樹 編曲:亀田誠治
14.「ぬくもり」 作詞・作曲:山下穂尊 編曲:島田昌典

<いきものがかりライブツアー2013>
09月01日(日) 福井サンドーム
09月10日(火) 横浜アリーナ
09月11日(水) 横浜アリーナ
09月15日(日) 仙台セキスイハイムスーパーアリーナ
09月16日(月・祝) 仙台セキスイハイムスーパーアリーナ
09月28日(土) 大阪城ホール
09月29日(日) 大阪城ホール
10月05日(土) マリンメッセ福岡
10月06日(日) マリンメッセ福岡
10月12日(土) 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
10月13日(日) 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
10月19日(土) 愛媛県武道館
10月20日(日) 愛媛県武道館
10月26日(土) 広島グリーンアリーナ
10月27日(日) 広島グリーンアリーナ
11月09日(土) 神戸ワールド記念ホール
11月10日(日) 神戸ワールド記念ホール
11月16日(土) 静岡エコパアリーナ
11月17日(日) 静岡エコパアリーナ
11月22日(金) 日本武道館
11月23日(土・祝) 日本武道館
11月27日(水) 日本ガイシホール
11月28日(木) 日本ガイシホール
12月07日(土) 三重サンアリーナ
12月08日(日) 三重サンアリーナ
全席指定 前売¥6,800
ファミリーシート 前売¥6,800
※ファミリーシートとは、小さなお子様連れのご家族やライブを着席してご覧になりたいという方の為にご用意させて頂く着席指定の座席です。

◆チケット詳細&購入ページ
◆いきものがかり オフィシャルサイト

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