【インタビュー】SKY-HI、中学時代の友人からのメールが生んだメジャーデビュー曲「愛ブルーム」

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■ 中学時代の友人からの奇跡的なメールが生んだ「愛ブルーム」

── じゃあ。作品の話に入っていきましょう。メジャーデビューシングル「愛ブルーム/RULE」……SKY-HI、考えたな。上手いな、って思いましたよ。

SKY-HI:あははは。

── 「愛ブルーム」は、聴いたらわかるようにディスコサウンド。『FLOATIN' LAB』とか今まで発表してきたSKY-HIの音とは全然違うじゃないですか。ポップ寄りで。

SKY-HI:そうですね。

── メジャーデビューシングルにこの曲を入れる、それまではあえて出さないでおく……っていうのは、当然、戦略だったんですよね?

SKY-HI:や、なかったです(即答)。

── あ、違うんだ。

SKY-HI:うん。えっと、メジャーデビューシングルは最初「RULE」で行く予定で。単曲で。社内もそれで動いてて。で、「RULE」の3日前くらいに、街で「RULE」がかかるのを想像して……あ、でも「RULE」作る時からそれはずっと考えてたんですよ。その、メジャーデビューってことは、より多くの人の耳とか目に触れる機会だから、なんか……ヴァースが増えるぶん、サビを……情報量を少なくして、とか。ドラマチックに、とか、ピッチ感はコードに絡むように、とか。いろいろ考えながら作ったんですけど、いざ、レコーディング直前にこう…(目を閉じる)…街中で「RULE」かかっているのをこう、想像したら「届かないな」って思ったんですよね。

── 届かない?

SKY-HI:今は情報過多な世の中だから、一瞬で聴く聴かない、一瞬で買う買わないって動くと思うんですけど、その中にあって、SKY-HIの「RULE」を聴いてもらうには、一回、足を止めてもらわないと、どうにもこうにも届かないんですよね。何も知らない人の耳に入って、心まで一瞬で届く到達速度ではないな、と。もちろん、今までのSKY-HIを応援してくれている人は、「RULE」を聴いて「ヤバい!」とか「カッコいい!」とか言ってもらえると思うんですけど、そこだけに届けるんだったら、メジャーでやる必要ないなって思って。今までやってきたことをちょっと広げる感じというか、それだと限界も見えてるし。それでもやり続けていったら、また長いスパンかけて少しずつ広げていくっていうのは可能だなとは思うんですけど……。うん。それは、最善策で最短の距離ではないなぁ、と。

── うん。

SKY-HI:あ、そのさっきの話、少し戻ると、5年間って時間はかかったけど、“メジャーデビューまでは最善策で最短の距離を来れてる”って自分では思っていて。うーんと、長い短いは人によって感じるものが違うと思うんですけど、4年に1回のオリンピックよりも長いわけだから。

── そうですね。

SKY-HI:で、そういう時に“ポピュラリティを得る”ってことをあらためて考えて。それはポップってことなんですけど、ポップっていうのは楽曲が爽やかだったり弾けるものがイコールじゃないっていうのは昔から思っていて。ジェイ・Zは本当にポップだな、ポピュラリティを得ることをやっているなぁって思うし。ジャスティン・ティンバーレイクも非常にポップだなぁ、と。ポピュラリティを得ることを自分で生み出して、使って、勝ち得てる。日本に目を移しても、サザンオールスターズだったり、桑田さんだったり、「すげえポップだな!」って思うし。どんな振れ幅で行ったときも、常にポピュラリティをちゃんと得るように、そこ意識してやってる。それサザンでもそうだし、ミスチルでもそうだし、SEKAI NO OWARIもそうだし、Zeebraだってやっぱりそうだし。すげーポップだなって思うんですよね。だからポピュラリティを勝ち得たと思うし、世の中の人がZeebraって言ったらわかるとか、KREVAって言ったらわかるのは、そういうポップがそれぞれの形であったからだと思うし。

── 確かに。

SKY-HI:だからあの、ポップスっていうジャンルが音楽的にあるから混同されがちだけど、ポップであるってことと、ポップスを作るってことは全然、別問題の話で。それはずっと思ってて。あらためて「RULE」レコーディング直前に、自分の中のポピュラリティを勝ち得る武器を多分さらっていったぽくて。

── ほほぅ。

SKY-HI:で、なんか、そのタイミングで……これ、あんまりあの、長くなっちゃうから他の所で話してないんですけど、直前に、ほんと奇跡的なタイミングで中学時代の友人からメールがきて。そのメールの内容ってのが、まだメジャーデビューの話とかしてないのに、なんか「SKY-HIでメジャーデビューとかしないの?」って内容で。「俺は普段、夢を見ないんだけど、たまに見た夢は正夢になる。で、お前の夢を見たからメールする」って。

── な、なんかすごい話に。

SKY-HI:それが、すごい爽やかで華やかだったと。そんな楽曲を歌ってて、それが世の中にどんどん広がっていって、「お前がめちゃくちゃ忙しくなる絵が見えたから、メジャーデビューする時は爽やかなやつでお願いします。」って普通にきて。「RULE」のレコーディング直前によくこんなもん送ってくんなぁ! って(笑)。なんも知らないからだと思うんだけど。

── あははは。

SKY-HI:で、別に普段だったら、まぁ、それこそ一笑に付す、みたいなメールだったかもしれないんですけど、その時に、それまで考えていたことの糸がピーンとつながって。「あ、そうだ!」って。ポップスとポピュラリティが結びつかないって考えがあったからこそ、意図的にやってなかったけど、なんか、俺の中のポピュラリティを勝ち得る武器はそこらへんにもっとヒント落ちてそうだなぁ、って思って。あと、最近USのディスコブームとかで新しいディスコ(Nu Disco)もそうだし、昔の曲とか聴いたりして、そういうモードになってたっていうのが一個と、あと中学時代の友人からメールがきた時に、中学時代のスターたちがこう、パーッと浮かんできて。自分が中学時代にすごい憧れてたスターがバーっと出てきて。洋楽・邦楽問わず。そことこう、肩を並べなくてはいけないなぁと思った時に、どういうやり方で俺はそこにいけるのかなぁ、ていうのを考えたら、「愛ブルーム」のイメージが漠然とふっと出てきて。「書けそう……書けるわ!」って。それで、急遽、スタッフさんに連絡して、あの「ごめんなさい。あの、両A面にさせてください。」って。「ポップサイド、明るいやつをもう一個作るから、そっちを推し曲にさせてほしい。ビートも歌詞もメロディーもないんだけど、これから作るから、そっちを推し曲にさせてほしい。」って話をして。まぁまぁ、意味分かんないって感じだったんですけど、でもなんか話をしたらイメージを共有してくれて。

── ひええええ。でも怖っ。

SKY-HI:ねぇ(笑)。すごいギャンブルなことだと思うんですけど、でも博打に乗っかってくれて。それで「愛ブルーム」制作に取り掛かって、地獄のような2週間くらいを過ごし。それがAAAのツアー中だったってのは、もう思い出すだけで、思い出すだけで、思い出すだけで7回吐ける、みたいな。もう作るって言っちゃったから、作らなきゃいけないけど、焦って作るもんでもないし。でも焦って作んないと時間ないし。心身ともにものすごいプレッシャーでしたけど、でも「愛ブルーム」できた時は、すごい、解脱したみたいな爽快感でした。

── なんと、そういう経緯があっての「愛ブルーム」だったんですね。正直なところ、ポップなSKY-HIは、メジャーデビューに照準を合わせた戦略だとばかり思ってました。

SKY-HI:違います。神の啓示です。あっはっはっは。ビックリでしたね。

── 中学時代の友達に感謝ですよね。

SKY-HI:いや、ほんといいタイミングでメールくれたなって。1週間……3日遅くてもダメだったかも。あのタイミングがほんと最後だった。ほんとその、メールくる直前まで、ずっと一緒にやってるスタッフとかにもほぼ、毎日話をしながら、なんか方法はないか、なんか手段はないかって。「RULE」もサビはもうちょっとその、<lala... lala...>って言ってるところも言葉はめてみて、それ違うんじゃないか、とか、一文字減らすとか、そういう細かいところをやりながら。でもどんなに直しても、そのなんか、完全に、なんだろ、完全にどこまでも迷いがなくなったか……というと、それはそうではないって状況が、多分、2、3ヶ月ずっと続いて。「RULE」はそのくらいかけて作ってたから。……やー、でも、なかった発想ですよね。「違う曲を作る」ってのは(笑)。

── リリース予定とかズレたりしなかったんですか?

SKY-HI:あ、でも、ほかにもいろんな理由があって、7月31日から8月7日にはなったんですけど。でもそれ以上ずらすつもりはなかったし。ほんとなんか、危ないな、いつか失敗するんじゃないかなって思うんですけど、できるっていう自信があったから、ここまでに書けるって自信があったから、できたって感じですね。

── いや、「RULE」を聴いてて、SKY-HIってやっぱラップ上手いなってのはすごいわかるんですよ。ただ、この「愛ブルーム」が出てきたことで、シングルとしてバランスがすごくよくなりましたよね。たとえばAAAからの人たちは「愛ブルーム」で手にとって、「RULE」でSKY-HIの奥深さを知るだろうし、ヒップホップ好きなヘッズたちはその逆だろうし。だから戦略だと思ってたのに、実は違ったとは。

SKY-HI:個人的には、「愛ブルーム」のほうがはるかに難しいことをやってると思うから、あの、それ別に聴いてる人にあんまりわかってもらう必要はないんですけど、個人的にはそうなんですよね。だし、「愛ブルーム」が、そういう、なんか、それも別に誤解されても嫌な気持ちはしないんですけど、「愛ブルーム」側がAAAファンに向けてるわけでも、「RULE」側がヒップホップファンに向けてるって思われることが多くて、それはそれでそんなに嫌な気持ちはしないんですけど、そんな意図はないというか。イチアーティストとして、受け手をもっと広く捉えて、ポピュラリティをより得るための「愛ブルーム」と、根っこを強くするための「RULE」って感じですね。

── いい、デビューシングルですよ。

SKY-HI:今までの人生で培った振れ幅であると思います。うん。
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